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ビブリオバトル夏編@紀伊國屋書店

 オススメ本を紹介しあい、一番読みたい一冊を決めるビブリオバトル。今回は小飼弾さんに挑戦し、アツいトークになったのだが……結果は驚くべきもので、ちとしょんぼり。とはいえ、この反省を糧に自分のやり方を模索していこうかと。

20110821

 まず、小飼弾さん、わたしの挑戦を受けていただき、ありがとうございます。そして、「弾さん目当てに観覧者が詰めかけて混乱するかも」という主催者の心配を汲んで、「お忍び」モードで参戦されたことに感謝……ところが、本の紹介そっちのけで「本とは何か」のトークバトルになり、当然5分じゃ足りなくなり、凄くもったいないことに。

醜の歴史 かくいうわたしは、ウンベルト・エーコ「醜の歴史」をプッシュする。これは、対となる「美の歴史」と併せて読むと、興味深い事実が浮かんでくる。それは、「美は相対的なものだが、醜は必ずしもそうではない」こと。「美の歴史」は即ち美術史になる。つまり、美しいを決める文化的・歴史的なバックボーンを持つ。いっぽう「醜」は、(美と対応するような)相対性だけでなく、絶対的な醜さ―――「絶対醜」がある。

 それは、本能的に嫌悪感をもよおさせるようなもので、生命を守るための巧妙な仕組みなのかも……なんて主張を、「世界一醜い犬のコンテスト」でダントツ一位のサムとか(googleり注意!危険画像)、ゲーテ「ファウスト」のワルプルギスの夜の一幕を紹介した。

 他の参戦者のオススメ本は、池上永一「風車祭」(カジマヤー、と読むらしい)になる。ジェットコースターに乗っているような、めくるめくエンタメだという。紹介者のアツい想いがビシバシ伝わってくるプレゼンで、思わず読みたくなる。ただ、池上作品は「テンペスト」を読めーとオススメされているので、どちらを先にすべきか悩ましいところ。

 小飼さんオススメは、技術評論社の雑誌「Software Design 2011年9月号」。雑誌そのものの紹介ではなく、特集「トップエンジニアのお勧め本55」で紹介した記事を元にプレゼンするという、メタ構成となっている。iPad片手に「本は紙である必要はあるのか!?」と、挑発的な迫り方に、ヒヤヒヤ・タジタジさせられたけど、最もスリリングな「本語り」だった。

 また、「小僧の神様」をプッシュする方も。何ゆえ今さら志賀直哉?疑問を見透かすように、丁寧に説明する。教科書にも載るような有名文だが、現代は名文が書かれなくなっている時代だという。昔(教科書で読んでいた頃)は、志賀直哉と一体化して読む必要があったが、今はそうではなく、著者から自由に離れて読めるようになったという。ところどころ「引っかかり」「落差」を仕掛け、つるつるっと読ませない「名文」の好例なんだって。

 さらに、夏ぴったりの「みちのく怪談傑作選」が紹介される。これは前回のビブリオバトルで「人生で一番コワい本」として教えてもらったもの。怖いの大好物なので読んでしまったのだが、プレゼンが上手くて勉強になる。コワさをソソる、ゆっくり目のしゃべり+ビジュアルの相乗効果はマネしよう。あと、豆知識も得られて嬉しい→「怪談といえば夏なのは日本で、欧州では冬が怪談シーズン。なぜなら、11/2が死者の日だから(日本の盆にあたる)」

 この中で、ダントツだったのが……「小僧の神様」!なぜだー分からんーと頭抱えるわたしをヨソに、嫁さんが冷静に分析する。曰く―――

  1. 投票する人は、消去法で選んでいることに、いいかげん気づけ
  2. ジャンル分けもインタレストマッチもしてないから、ただ漫然とお勧めを並べても、読書欲を喚起させることは難しい
  3. 「それ良い」と積極的に手を上げる人よりも、「それ良い」と妥協している人のほうが、圧倒的に多い
  4. アンタのシュミは非常に偏っているから、アンタのプライドを満足させる本を紹介する限り、ウケることは、ぶっちゃけありえない
  5. 万人ウケするような本を選びなさい、一般ウケなら「お金」「健康」「成功」「異性」、でなきゃ映画やドラマとタイアップした流行りモノ
  6. わざわざ本屋にやってきてビブリオバトルの観客になる人なら、知的好奇心よりも、知的自尊心を満足させるような本を選べ
  7. 知的自尊心を満足させるような本とは、それ持ってる(読んでる)アタシってステキ!と思わせるようなもの
 よし分かった!プライド捨てて観客の知的自尊心をくすぐるような本を選ぶぞ―――といったん決心するのだが、それはそれで、ちと哀れだ(自分が)。どういう本が「ウケ」るかは知っているが、それはわたしの価値観とかなり異なっている。勝ちを狙うあまり、「わたしのオススメ」を捻るのは転倒しているからね。両者の折り合いのつくところを、(ブックトークの精進も含めて)模索していこう。

 主催の瀬部さん、ありがとうございます。飲み会もたいへん楽しく、タメになりました。アニメ「化物語」の副音声は必聴だとか、筒井康隆本人が朗読する「蟹甲癬」を聴いて震えろとか、物語を語るなら「ギャグマンガ日和」は外せないとか、文字どおり「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」状態。楽しさのあまり気づいたら家と逆方向の桜上水で終電を迎えることに。このトシになって記憶と時間を跳ばすほど飲むなんて……

 次は、独善避けつつバトルよりトークに力点を置いて、飲みすぎに注意しよう。


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コメント

当日拝見致しました。
終了後直ぐ帰宅したんですが、お会い出来ていたら
その後 お話を伺う機会もあったんですね。
直ぐ帰って失敗でしたね。

自分もお勧めしたい本があるのですがね・・・・

投稿: Air | 2011.08.24 23:09

>>Airさん

イベント終了後は、本屋オフ状態になります。参戦者や観覧者と一緒にぐるぐる巡るので、うっかりガッツリ買ってしまいそうになります。もしAirさんが強力プッシュしたら、寄り切られてしまってたかもしれませんw

投稿: Dain | 2011.08.26 01:11

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