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チェ・ゲバラはトム・クルーズ似「モーターサイクル・ダイヤリーズ」

 バイクというよりも鉄馬、満身創痍の鉄騎との旅。

モーターサイクル・ダイヤリーズ スゴ本オフ@赤坂のアイリッシュパブでオススメされた一冊。「アラビアのロレンス」におけるモーターサイクルは、いわゆる「バイク」というよりもむしろ、騎士精神みたいだねといった流れで紹介される。チェ・ゲバラの旅日記だそうな。バイクは無縁だけど、自転車で旅したことはあるので惹かれる。さらに後日、松丸本舗にて、見つけてくださいといわんばかりで飛び込んできたので有無を言わさず買って帰る。

 前半はモーターサイクルで、後半は徒歩とヒッチハイクで南米を北上する。初めの頃は、行く手に何があるのか「わからない」ことに期待し、オートバイにまたがって、一キロまた一キロとむさぼるように北への逃避行を続ける。愉快な出来事ばかりではなく、貧困と欺瞞と搾取の現場を目にする。怪我や病で働けなくなった家族に向けるまなざしに、「まるでその人の面倒を見なければならない者たちに対する侮辱」であるかのような色を見つけたり、「共産主義」が一種の宗教のような熱狂をもって受け入れられていることを喝破する。

 つまり、「共産主義」は、そのドクトリンに因るよりもむしろ、「貧しい人にパンを」と言い換えた言葉なんだと。そして、ドクトリンへの信奉には、現実の飢えに対する抗議が満ちているというのだ。Tシャツのポップアートと化したゲバラが、今の世にどれだけ理解されているのだろうか。本書の後半に収録されている、演説「医師の任務について」では、旅で見聞した現実と、「自分の(個人的な)夢」との境から、自ら選んだ方向を主張する。「個人の目標=社会の効用」の幸福な(無邪気な?)結合を垣間見る。

パタゴニア・老いぼれグリンゴ 同じ南アメリカを旅しているのに、チャトウィンとなんと違っていることか。ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの後日談や、アラウカニアの王になろうとした白人の話など、歴史と虚構をモザイクのように組み合わせているのが、「パタゴニア」だ([レビュー:設計された旅「パタゴニア」])。ゲバラと比すると、チャトウィンにとって南アメリカは、北アメリカやヨーロッパの反射鏡のように見える。つまり、どのエピソードを採っても必ず歴史の「ひも」の末端は欧米のどこかにつながっている。奔放さ、饒舌さはチャトウィンのほうが一枚上手だが、現場にそのままかかわっているという点で、ゲバラの方が(荒削りだが)生々しい。

 ゲバラを脱神話化する上でも本書は貴重かも。タイトルにも書いたが、本書の中ほどに載っている写真を見る限り、ハタチのゲバラは、トム・クルーズにそっくりだ。人懐っこい笑顔と、檄文。今風なら、イケメン革命家といったとこか。案外、プロパガンダの成功はルックスも影響するのかもしれぬ。


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コメント

>プロパガンダの成功はルックスも影響するのかもしれぬ。
全く同感です。以前姉が「麻原彰晃の顔と声が尾崎豊だったらどんなに恐ろしいことになったか考えてごらんよ!」と言っていたのを思い出しました。

投稿: 狸林 | 2010.12.13 02:45

>>狸林さん

その喩えは怖すぎます。なぜならリアルに思い浮かぶから。
コマーシャリズムの教祖サマは、言葉どおり「アイドル」なのですね。

投稿: Dain | 2010.12.14 07:13

ゲバラキター!
ゲバラの見た目もかっこいいですが、若き日のカストロもかなりかっこいいです。(葉巻込みで)

私は職業柄正規軍じゃなくてゲリラだとおもってますのでゲバラやカストロには親近感があります。

あと私も松丸本舗をうろうろしているので、そのうちばったり会いそうですね。

投稿: nobu | 2010.12.14 10:00

>>nobuさん

銃を取る動機として「飢え」がありますが、「かっこよさ」もありですね。

小遣いと時間をヒネりだして、今年あと一回くらい、松丸めぐりをしたいです。
以下の本をゆっくり探すつもりです(両脇の並びに注意しながら)
  どくろ杯(金子光晴)
  ビラヴド(トニ・モリスン)
  千の顔をもつ英雄(ジョーゼフ・キャンベル)
  開高健のどれか
  石川淳の短篇どれか
  エリック・ホッファーのどれか


投稿: Dain | 2010.12.15 00:13

これは映画も良いですよ!これを観たのがきっかけで僕は南米へ行ってみました。

あと以前『文学の楽しみ』という本をおすすめしたのですが・・・もしかしたらDainさんは読む必要ないかもしれないなと思ったので、代わって太宰治の『お伽草紙』と川端康成『山の音』をおすすめします。それと池内了の『物理学と神』という新書がすこぶるおもしろいです。

投稿: 赤亀 | 2010.12.16 10:21

>>赤亀さん

ありがとうございます、「文学の楽しみ」はオススメ直後に借りました→カタくって放り出しました。折を見てリベンジしようと思ったのですが、折角なので再度借りるつもりです(ここが図書館の良いところw)。
「お伽草紙」と「山の音」は有名どこですね。読んだはずですが記憶の彼方なので、実家に帰ったときに積み本から発掘します。

投稿: Dain | 2010.12.17 01:44

「→カタくって放り出しました。」に噴きましたw

『物理学と神』は「千夜千冊」に取り上げられているみたいなので、そちらに目を通してから読むか否かお決めになるのでもいいかもしれませんね。

投稿: 赤亀 | 2010.12.17 11:18

>>赤亀さん

了解です、まずは手にとってみますね。「文学の楽しみ」はリトライします。

投稿: Dain | 2010.12.18 17:04

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