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酒と本があれば、人生何とかやっていける「本に遇う」

 とうとう出たので白状する。このブログの種本といっていいのがこれ。

本に遇う 雑誌「選択」の「本に遇う」というコラム十年分を一冊にしたもの。書き手は河谷史夫氏。朝日新聞の素粒子で有名かも。書評というよりも、ある本をとりあげ、その本にまつわる話を紡ぎだす手法だ。それは現場記者やってたときの生々しい記憶だったり、読み終えたばかりの興奮まじりの絶賛だったり、大嫌いな人物への強烈な面当てだったりする。具体的で尖った書き口が好きで、挙げられた本をつまんで読んではこのブログで紹介してきた。もちろん他チャネルもあるけれど、「流行の本」を除いた良本は、だいたいここから教わっている。

 ただし、著者に全面賛同というわけではない。その狭窄を哂ったり、専横な様にツッコミ入れながら読んでいる。読書の範囲はもちろん違う。マンガや古典、数理ものはほとんど入っておらず、ノンフィクション、エッセイ、昭和史、詩句集が、著者の土俵になる。その「わたしとのズレ」が絶妙に微妙で、同じ本を違う風に読みながら、「これは良い」と評価できる。その差異がまた面白い。似てるのに違うところが、土俵を拡張する糊代になるんだろうね。

 たとえば、「遅読のすすめ」を手放しで誉めちぎり、書き手である山村修の言を借りて立花隆を批判する件がある。必要なページだけつまみ食いして足れりとする読み方は、いわゆる資料読み。速読なんて読書じゃない「遅読のすすめ」で書いたとおり、わたしも同感だ。なのだが、絶賛する前に書き手のやっかみに鼻白んでしまう。速く読める人は、ゆっくり読むこともできる。速度は「選べる」のだ。にもかかわらず、遅読をもてはやすあまり速読が攻撃されると、辟易してしまうのだ。

 あるいは、柳原和子著「がん患者学」の紹介。ごまんとある「ガンの本」のうち、読むべきものは少ないが、この本は例外だという。「癌について知るべきことはほとんど全部この中に書かれている」と持ち上げるので、そうかと読み始めすぐにぶつかった。「長期生存した人たちのルポ」と銘打っているが、もう一つ、書き手のフィルタリングが見える。つまり、「現代医療 vs 代替医療」の構図が透け見え、現代科学の医療はアテにならぬというメッセージが響く。も少し医者を信頼し、自分の人生のことに集中したほうが良いのでは?と思ってしまう。

 このように反発もしつつ、つい読んでしまうのは、河谷氏の目利きが効いてるから。いい本を嗅ぎ当てる感覚は、わたしより遥か上。S.ハンターの「極大射程」も、藤沢周平「蝉しぐれ」も、山田風太郎「人間臨終図巻」も、ぜんぶここで知った。

 スゴ本の種本、隠れた狩場のガイドとなる一冊。

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