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松丸本舗にて松岡正剛さんと小飼弾さんの対談を聞いてきた

松岡正剛の書棚 お二人とも、深く・濃く・柔らかく、驚きと閃きとトキメキ(?)に満ちた一時間だった。上田さん、お誘いいただき感謝しています。「松岡正剛の書棚」の電子書籍化にちなんだ会だったが、そこはサラリと流し、「本を読むとは何か」について若かりし昔話から大胆な未来予想図まで飛び出す。以下、自分メモよりふくらませてみよう。

 これは鋭い、と感心したのは、弾さんの「本とは締めたメディア」という一言。たとえばブログなら、いくらでも書き直しが利く。永遠に終わりがない。しかし「本」という形態だと、いったん編集し出版したら、バラせなくなる。他にも「殺したメディア」という表現をしていたが、言いえて妙。もちろん改訂や"自炊"により変更・細分化することは可能なのだが、知をパッケージ化したものが「本」である限り、バラバラにすることはできないからね。

 これについて、松岡さんが、「『本』の単位ではなく、もっとセグメント化された形の付き合いになるかも」と予想する。Googleの向こう側に『本』を置いて、必要に応じて断片を引っ張ってこればいい、という考え方だ。わたしにとっては、Tumblr なんかがそうだなぁ…… そして、本というものが「文字」という形に依拠している限り、たとえ電子書籍化がどんなに進んでも、「本-文字」というメディアへアクセスするオプションが増えただけの現象にすぎないという。それは紙というメディアだったり、声(読み上げ)だったり、誰かの批評なのかもしれない、そこに「画面」というインタフェースが増えるだけなのだと。じっさい、iPad を用いなくとも、ケータイの液晶やPCのディスプレイを通じて、「本-文字」に接するのが自然になる(すくなくともわたしは)。そして、松岡さんは「本」の本質を簡潔にこういいあてる。

  1. ダブルのページ(見開きの窓)
  2. パッケージ化
  3. ランダムアクセス
  4. 直近にインデックス(章節の小見出しや目次)

 さらに、弾さんの「本は電源がいらないメディア」という一言は、電子書籍に踊る人なら忘れてはならないだろう。

 古典の「使い方」も興味深い。松岡さんの、「自分の認知構造や解釈の感触を確認するために、古典が格好の相手となる」という主張は、その著書で知っているとはいえ、ナマで聞くと利くね。さらに弾さんの「自然科学において、古典が古典になっているのは、大転回がなされているから」という話は深かった。つまり、今の常識が「常識」でなかった時代に、その「常識」を発見したのが古典となるのだから。ニュートンのプリンキピアを読むのは、万有引力の法則が常識でなかった時代に戻るためなんだと。

 古典ネタをもう少し。松岡さんの「古典には、時代や場所が特定されないように書いてあるものがある」という一言にピンときた。たとえば、伊勢物語には「伊勢」が出てこないらしい。読み手が、自分の時代背景に応じて、置き換えて読むことが可能となっているというのだ。普遍性は入れ替え可能から来るのか。「源氏名なんて、まさにそうでしょ?」のユーモアには笑った。

 この話を聞いて思い出すのは、村上春樹の作品。どこかで聞きかじったのだが、翻訳された彼の作品を読んだ人は、「これはまさに、わたしの国の話だ」と思うそうな。ロシア人、アメリカ人、韓国人、みな「これは、現代のロシア/アメリカ/韓国を描いた小説だ」と読むらしい。これはまさに、入れ換え可能な普遍性をもっているといえるだろう。村上春樹が書くのはファンタジーにすぎないが、素材を現実に求めているから、その幻想性が隠蔽される。SFの別名を「サイエンス・ファンタジー」と呼ぶように、「リアル・ファンタジー」とでもいうべき。とっくに地域性を越えているから、あとは時代を経て読まれるなら、「古典」たる資格ありだろう。

 わたしの与太はさておき、弾さんのトドメに戻ろう。「松岡さんは打率3割というが、高すぎ。スタージョンの法則はSFに限らないから」という一言に笑った&激しく同意。ケナすのは得手ではないが、わたしの打率はスタージョンに従う。ただ、「ダメな6~7割にどうつきあってゆくかが、"3割"に影響する」というセリフには参った。松岡さんが一言で言い切っている→「ムダな必要」。そう、必要悪とかいうのではなく、そうしたムダを読んできたからこそ、"3割"の手ごたえが分かるんだよね……もっともわたしはもっと低いかと。

 なんでも同意、というわけでもない。松岡さんの「本はノートブックである」は同意したいのだが、できない。図書館派、しかもヘビーユーザーなのだから。ただ、「本は二度読め」とか、「書棚は頭の中を可視化する」とか、大きく頷く。弾さんの言うとおり、「読書の問題はいずれ、不動産の問題になる」は事実なのだから。

 最後に、ニュースをいくつか。松丸本舗の「○○さんの書棚」コーナーが増殖するらしい…これは楽しみ~。そして、今年の暮れあたりから、「かつて世界の誰もやったことのないレコメンデーション」を展開するとのこと。割目シテ待テというやつやね。

 そして、これは思わず踊ってしまうほど嬉しかった情報なのだが……「情報の歴史」の新しいのが出るらしい。わーい、ずーーーーーーーーーっと欲しかったんだ!「時代を結び、情報をつなぎ、歴史を編集する前代未聞の情報文化史大年表。世界と日本が一緒に読める」は真実ナリ。ナニソレ?という人は図書館へ、絶対欲しくなるスゴ本なり。ただし、amazonへ行ってはいけない。トンでもない値がついているから。

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コメント

興味深いですね。

松岡さんの本はいくつか読みました。

話を直接聞いたこともあります。

色んな分野のことが絡み合っているところが凄いですね。

まさに「知の編集」をしてる感じですね。

ありがとうございました。

投稿: 速読トレーニング 方法 | 2010.10.11 00:30

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