« 煉獄の日常「イワン・デニーソヴィチの一日」 | トップページ | 熱帯夜にふさわしい「欲望という名の電車」 »

amazonより書店、書店より図書館の方が優れているもの

 それは本へのアクセシビリティ。本を手にするハードルを低い順に並べると、次の通り。

  1. 図書館
  2. 書店
  3. amazon

 図書館がいちばん簡単だ。そこに実物があるし、興味があれば手にとって傍らの椅子に座って読めばいい。時間がなければ片端から借り出してしまえばいい。コストゼロで、「その本に集中する時間」が、純粋に投資となる。どんな本が読まれているかは、張り紙や図書館のウェブサイトで確認できる。そこで、流行りのベストセラーとは別に、長く読まれている隠れた名著を見つけるかもしれない。

 次は書店。「フリー戦略」なんてカコイイ用語があるみたいだが、あにはからんや、本屋は昔から実戦してきたよね、「立ち読み」で。小奇麗にパッキングして、試し読みも置かないような本屋は、その戦略を捨てているといえる。ただし、誘惑に気をつけなければならない。「レジに持っていくまで騙せたら勝ち」なんてやつだ。Popやレイアウト、パッケージや帯のキャッチーに騙されることしばしばで、元をとらねばと気負うと、お金のみならず時間のムダになる。

 最もハードルが高いのは、実はamazonなどのネットショップだったりする。なんせ「実物」がないうえに、画面上の"情報"だけで決めなければならない。おまけに手にとって見るためには、購入しなければならない。写真と違うとゴネてチェンジできる風俗店よりも、よっぽどチャレンジャーだ。沢山の本の"情報"があふれているにもかかわらず―――むしろ、だからこそ―――実際の本へのハードルが高くなっている。

 本の断片的な"情報"をすくいとって、「読んだ」ということにしたいのなら、ネットだけでいい。電子書籍という流行がこれを加速するのであれば、断片的な情報があたかも本の属性のように流通されるだろう。それで出版界が壊滅するかのような予言者がいるが、本当だろうか。断片ででしか消費されないような"情報"なら、なにも最初から本になるようなものではなかったということ。そういう本の「属性」を束ねて印刷して売りさばくような「本」が淘汰されるのは、むしろ喜ばしいことだろう(もっとも、そういう本は遅かれ早かれ消えるだろうが)。

 もちろんこれらはコインの表裏で、アクセシビリティの高さは、スピードとトレードオフになる。図書館で気軽に、新刊本が借りられるワケではない。さらに書店員などの読み巧者のアドバイスが沢山もらえるべくもない。

 そこで、わたしのやり方を提案。ネットで集めた"情報"を元に、図書館で借りるのだ。懐は痛まない上に、ネットの"情報"の確度を洗練させることができる。つまりこうだ、信頼できる"情報"を元に、わたし好みorわたしが知らないスゴ本が提示されたとき、図書館へ予約する。

   新刊・文芸 : 悪漢と密偵
   学術・教養 : 読書猿
   文学・批評 : epiの十年十冊
   本の流行 : ガブのホントは教えたくない売れる"本"の秘密

 「悪漢と密偵」は、うれしい。店頭にもamazonにも並んでいない本が、いつ出るか分かる。各出版社のサイトにも「新刊案内」といったものはあるが、その出版社に限定されている。それらを束ねたここは、まとめのまとめといえる。書名、著者、出版社、簡単な紹介文でアタリを取り、よさそうなものは片端から図書館へリクエストする。ほとんどの本は購入してくれ、なおかつ誰よりも早く手にできるだろう。それを読んだうえで(あるいは読まなかったうえで)、買う買わないを考えればいい。

 「読書猿」「epiの十年十冊」は、ありがたい。まさに、わたしが知らない(または知ってるけれど未読の)スゴ本を示してくれる。けれどもやはり、向き不向きがあるので、念のため図書館で借りる→試し読めばいい。くり返し読むなら、そこであらためてamazonへ赴くのだ。

 さらに、騙されぬ先の杖として「ガブのホントは教えたくない売れる"本"の秘密」が役立つ。出版社や編集者が、どんな売り方戦略をしているか、こと細かに教えてくれる。業界の手の内をさらしてくれる、ありがたい人ナリ。"情報"や"属性"の断片を切り売りしている本は、もちろん読むつもりはないが、「なぜ、その本が売れるのか?」には大いに興味がある。ベストセラーは、ふだん本なんか読まないような人がこぞって欲しがるからなんだ。図書館のベストセラー棚を数十年単位で眺めていると、時代や風俗の"うねり"のようなリズムを感じる。

 不特定多数とネットで出会い、よさげな候補と図書館でおつきあいして、決めた一冊を書店やamazonで買う。つまり、ネットは未来の窓で、書店は現在のスナップ、そして図書館を永続化された自分の書棚にするんだ。

|

« 煉獄の日常「イワン・デニーソヴィチの一日」 | トップページ | 熱帯夜にふさわしい「欲望という名の電車」 »

コメント

http://twitter.com/takemita/status/18457860805
だそうです

投稿: Twitter | 2010.07.14 16:28

>>Twitterさん

わざわざありがとうございます。自由なお金と時間が(いまよりも)たっぷりあった独身時代なら、わたしも同じ意見かもしれませんw

投稿: Dain | 2010.07.14 22:11

>書店員などの読み巧者のアドバイスが沢山もらえるべくもない。
本屋にしろ図書館にしろ、「本が好きだからこの仕事を選びました~」なんて言ってるのは大半がただの「文芸好き」だからなぁ。パソコンショップでOfficeもIllustlatorもわからないのにゲームソフトにだけ詳しいようなもん。
本当に「商品知識」が必要とされてるのは、実用書とか専門書のほうなんだけどなぁ…

投稿: koge | 2010.07.15 00:21

僕はコンテクストメニューからいつもの図書館の検索エンジンで蔵書の有無を調べられるようにしています。

投稿: ごとうp | 2010.07.15 23:24

>>kogeさん

なるほど、「本好き=文芸好き」は確かにそのとおりです。そして、本に携わるお仕事の入り口だったりもします。

>>ごとうpさん

わたしも一緒です。気になる本を見つけたら、真っ先に行きつけの図書館の蔵書を調べています。

投稿: Dain | 2010.07.16 08:05

こちらのブログや、読んでらっしゃるブログ、いつも刺激を受けてます。
改めて考えると私もいつの間にか、SNSの評判をきっかけに本を選んでますね~ SNSとか新聞の書評で気になった本を、とりあえずネット書店のウイッシュリストに入れておいて、1か月ぐらいしてもまだ興味があったら買ってます。
まあ、選ぶといっても読書量はさほど多くないし、分厚い本は本能的に避ける、という怠け者ですが…

投稿: twicoco2 | 2010.07.18 19:39

>>twicoco2さん

ありがとうございます、嬉しいです。
その「評判」も、かつてとは違っている気がします。ネットのおかげで、いわゆる「ベストセラー」や「売れ筋」ではなく、自分好みのコミュニティでの「評判」を知ることができます。つまり、こうした「コミュニティ」が選べるようになったのかもしれません。

投稿: Dain | 2010.07.19 08:52

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18285/48872102

この記事へのトラックバック一覧です: amazonより書店、書店より図書館の方が優れているもの:

« 煉獄の日常「イワン・デニーソヴィチの一日」 | トップページ | 熱帯夜にふさわしい「欲望という名の電車」 »