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すぐおいしい、すごくおいしい数学「aha! Gotcha ゆかいなパラドックス」

 マーチン・ガードナーの懐かしすぎる名著が復刊。

 Gotcha は俗語で、「わかった!」という意。思い返すと、わたしにとっての数学の原典は、この論理パズルだったなぁ。自己言及のパラドックスや、直感に反する確率、ホテル無限、雪片曲線の長さなど、今でも楽しませてくれるパズルは、ぜんぶ本書で「わかった!」もの。ただし、今でも悩まされるところをみると、本当に Gotcha! したかはアヤしい。

aha_gotcha_1aha_gotcha_2

 たとえば、ウソツキのパラドックス。
エピメニデスは、「クレタ人はみんなウソつきじゃ」と言ったので有名です。でも、エピメニデスはクレタ人でした。彼の言ったことは正しいでしょうか?
 これは有名なパラドックス。エピメニデスはクレタ人、つまりウソつきだから、「クレタ人はみんなウソつきじゃ」という彼のセリフは、ウソでなければならない。しかし、この発言がウソであるならば、クレタ人はホントつきになり、したがってエピメニデスもホントつき。だからこのセリフは正しくなってしまう―――というパラドックスが紹介されている。

 ところが、今回読み返してみて、この「ウソつきのパラドックス」の中にパラドックスがあることに気づいた。即ち「ウソつきのパラドックス」はパラドックスではないという矛盾を見つけたのだ。それは、「クレタ人は『みんな』ウソつきじゃ」という点。この『みんな』に着目すると、エピメニデスの『ウソ』はこう書ける。

   1. クレタ人は、全員ウソつきではない(つまり全員ホントつき)
   2. クレタ人は、全員が全員、ウソつきではない(ホントつきもいるよ)

 そして 1. と 2. によって、パラドックスが発生したりしなかったりするのだ。もしも 1. の意味であれば、全員ホントつき→エピメニデスもホントつき→彼の発言もホント→おや?(矛盾が生じる)、つまり最初に紹介したパラドックスだ。しかし、 2. であれば、エピメニデスがホントつきになり、矛盾が生じないのだ!さらに、 2. でかつエピメニデスがウソをついたとしても矛盾にならない(エピメニデスが言ったことが本当かどうか分からない)となる。中学生の自分が見過ごしていた「パラドックスのパラドックス」に気づけたので妙に嬉しい。

 また、「エレベーターのパラドックス」は似た話を聞いたことがある。最上階に近いフロアにオフィスを持つハイ氏は、エレベーターで下に行きたいとき、必ずといっていいほど上行きになるため、腹を立てている。一方、下のほうの階で働くロー氏は逆になる。最上階のレストランに行きたいときは必ずといっていいほど下行きのエレベーターとなり、これまたおかしいと感じている。なぜ?という話だ。

┌──┐
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│■■│
│■■│←ハイ氏は下に行きたいが、エレベーターが
│□□│  ■■にいる確率よりも□□にいる確率のほう高い
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│■■│←ロー氏は上に行きたいが、エレベーターが
│■■│  ■■にいる確率よりも□□にいる確率のほう高い
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5分でたのしむ数学50話 これは、「スーパーでレジの列に並ぶと、自分が並んだ列が遅くなる数学的証明」と似ている。直感に抗う確率というやつ。「5分でたのしむ数学50話」で出てきた話で、わたしのレビューはわかる瞬間が楽しい「5分でたのしむ数学50話」。カラクリはこうだ。

  1. たとえば、レジ1~4の列を考えてみる
  2. レジ係の能力はほぼ一緒だとする
  3. 待ってる人たちの買い物の量は偏りがないとする

 つまり、だいたい同じスピードでレジ列が処理されていると考えるのだ。こう仮定すると、「あなたが並んだ列(レジ3)が、他のレジ1、2、4よりも真っ先に進む可能性」は、1/4だろう。すなわち、このレジ列では、1/4の確率で、「早い」といえる。

   レジ1の列 ○○○○○
   レジ2の列 ○○○○○○
   レジ3の列 ○○○○○        ←●あなた
   レジ4の列 ○○○○○

 しかし、人生で列に並ぶのは一度きりではない。あなたは、レジ列にn回並ぶたびに、勝率1/4の勝負をするとする。すると、「レジ列が早い」というためには、(1/4)^nの確率になる。nが大きくなればなるほど、レジ数が増えれば増えるほど、勝てない勝負となる。すなわち、自分が並んだ列が必ずといっていいほど遅くなってしまうのだ。

 学校の勉強としての「数学」から離れてずいぶん経つが、いまだに数学の(というかパズルの)魅力にハマっているのは、その面白さを「aha! Gotcha」で知ったから。やりなおし数学というよりもむしろ、最初から好きだったんだね。

 完全に見過ごしていたのは本書のタネ本として、ホフスタッターの「ゲーデル、エッシャー、バッハ」が幾度となく紹介されていたこと。これは、「自己言及」をテーマに、ゲーデルの不完全性定理が、エッシャーのだまし絵やバッハのフーガをメタファーとして渾然と展開される超弩級エッセイ。中学生のわたしは、これをスゴ本だと気づけなかったのだ。数年前から積読山に刺さってるんだけど、あのとき手を出していれば―――違った世界を手にしていたか、さもなくば知恵熱で憤死してたかもw

 すぐおいしい、すごくおいしい数学をどうぞ。
 

 

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コメント

おッ!
Dainさん。ちょうどいいところに紹介してくださいました。
茂木健一郎氏が推薦帯に出ていたので気にはなっていたのですけれど、ちゃんと読まずじまい。

時は流れて、今、数学絶賛やりなおし中なのでこの論理パズルを解いて頭の体操したいと思います。

レジの行列って奥が深いですなぁ。


投稿: シンジ | 2010.06.23 02:54

>>シンジさん

復刊になって大きく薄く(?)なったようですが、中身は一緒……のはず。なんせ20年近く前なのです。やりなおし数学は、ブルーバックス「高校数学の教科書」をやってます。授業もテストもないので、本当の意味でマイペースです。

投稿: Dain | 2010.06.23 22:18

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