棚とは書店からの提案である「青山ブックセンター」
図書館とAmazonがあれば完璧かというと、それは違う。だから、街に出よう。
もちろん、ネットで受信した本を片っ端から予約したり注文すれば、それだけで一生読むに事足りる。しかし、それだけでは足りない。好みの定まった、似たようなものばかり読んで満足してしまうことになる。蛸壺で充分なら何も言うまい、だが、読む世界を拡張したいなら、リアルな出会いを求めるべし。
その一つの方法が、雑誌などの本の特集を経由して、お気に入りの読み手を探索すること。「わたしが知らないスゴ本」を読んでいる人を探すんやね。雑誌を使った実例は、ananで読書通を探す。たいてい春先か秋口になると、こういう特集をちらほらしてくれるので、雑誌コーナーを物色すべし。人ん家(ち)の本棚を使った例だと、スゴい書斎とはこれだ「この人の書斎が見たい!」あたりが参考になるかと。こういうのは、定期的に書店に通ってナンボだと思う。
もう一つ、わたしがよくやるのが、ブックフェアを狩場にすること。テーマを決めてスタッフがそれぞれの「こいつだ!」という本を持ち寄るブックフェアは、ハンターたちにとって絶好の狩場となるだろう。紀伊國屋書店でやってる世界文学ハンティングの絶好の狩場「ワールド文学カップ」は、ブンガクスキーは絶対行っとけと声を大にしたい。自分にとってのスゴ本の隣にある、未読本こそねらい目だから。無料で配布しているリーフレットには一生困らない分の世界文学作品の評が並んでいるぞ。
さらに、これら二つを組み合わせたのが、お気に入りのブックスタッフを見つけること。つまり、ブックフェアで自分のお気に入りを集めているスタッフの勧める、別の本を狙うのだ。たとえば、今、青山ブックセンター(ABC)六本木店で、「外へ」という変わったテーマでブックフェアをやっている。これは、「外へ」というキーワードをスタッフが自由に解釈し、それに沿った本をコレクトするという楽しい企画だ。ここで、わたしの好みど真ん中の選書してくるスタッフがいる。リストはこうだ。
- 「Powers Of Ten」 フィリス・モリソン 日系サイエンス
- 「砂の女」 安部公房 新潮文庫
- 「ポーの話」 いしいしんじ 新潮文庫
- 「ムーン・パレス」 ポール・オースター 新潮文庫
- 「真鶴」 川上弘美 文春文庫
- 「犬たち」 レベッカ・ブラウン マガジンハウス
- 「夏の朝の成層圏」 池澤夏樹 中公文庫
スタッフの役割は、書店によってかなり違う。スタッフ色を前面に出そうとしたり、逆にスタッフは黒子役に徹したりする。ABCはスタッフの"個の色"が棚によく出ているので好きだ。既読本の組み合わせでも、並べ方によっては、思いもよらぬ化学反応を起こしたりする。境界を超えた「読み」を提案する、一種の"乱暴さ"にグッとくる。
いくつか撮ってきた。化学反応具合を堪能してほしい。これらの棚は、書店からの提案なのだ。
重要なのは、この演出、リアル書店にしかできないこと。本をフラットに並べるのではなく、立体的に演出する。ディスプレイの平らな画面では、なかなか難しい。ウソだと思うなら、ご自分の眼でお確かめあれ。
電子書籍がもてはやされているが、リーダーがリアルブックに取って代わったら、ますます本がフラットになってしまう。何を読んでいいのか途方にくれてしまい、「とりあえずベストセラー」か、「とりあえずタダのやつ」ばかりが売れる(というかダウンロードされる)のではないかと。そこで需要があるのは、本の目利きであり、本のソムリエになるだろう。お気に入りのソムリエを探すために、外へ出てみては?シャットダウンして、街へ出よう。

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