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5冊で恋愛を語ってみよう

 スゴ本オフ(恋愛編)で語ろうと思っていること、あるいは話したこと。

 わたしが語るとき、キーボードを経由したほうが上手くしゃべれるようだ。なので、いったん吐き出してみる。事前メモのようなものだけれども、事後にこうして公開するのもいいだろう───

 レンアイ、と一つ言葉で語られているものの、「恋」と「愛」はまるで別もの。「恋」と「愛」の違いは、「心」のありように表れている。すなわち、下に心で下心なのが「恋」で、真ん中に心がある真心なのが「愛」だ。では下心と真心の違いは?それは、「もらうこと」と「あたえること」になる。

 恋する人は下心を持つ。すなわち見返りを期待した行動をとるのだ。もちろん、好きな人に食事をごちそうするとか、プレゼントを渡すのは、「あたえること」に相当するのだが、そのお返しに○○だったり△△をさせて「もらうこと」を期待している。恋することは、もらうこと。高揚した感情や、身体の快楽だけでなく、失恋の「痛み」すらもらうことに入る。

 愛する人は真心を持つ。すなわち見返りを期待せず「あたえること」が自らの望みとなる。「あたえる」ことができるくらい自分が豊かなことを確認する。あたえられる相手の喜びが自らの喜びになる。逆説的だが、「あたえること=もらうこと」になる。

 たとえば、「思い出をもつこと」に言い換えてもいい。親しい誰かと遊園地に行ったとしよう。そこで「思い出作り」をするのが「恋」の関係、「思い出をあたえあう」のが「愛」の関係になる。つまり、「二人の笑顔の写真」を残すために行動するのが恋で、「その人を笑顔にさせる」ようにはたらきかけるのが愛だと思う。だから愛する人は、別に遊園地に行かなくても「愛」することができるのだ。この前提で、恋愛について5冊で語ろう。

聖少女 一冊目は「聖少女」。これは恋の話。処女喪失を「パパ」にしてもらうことを弄る少女の話だ。ここで「もらうこと」とされているのは、近親相姦という事実。バージンなら「あげる」じゃないの?とツッコミ入れたくなるが、「絶対者=パパに処女をささげた」という"コト"が欲しいのだ、彼女は。いっぽうで、ベースの語り手である「ぼく」は、彼女の感情を欲しがる。「好きだ」という感情を。この小説を面白くさせているのは、どいつもこいつも「もらうこと」しか考えていないところ。当然作者は、おいそれと「あたえ」ないので、登場人物はみな、どこかに喪失感覚を抱いたままだ。

春琴抄 次から違ってくる。「春琴抄」は、恋から愛へクラスチェンジする話だ。それもただの愛ではなく、狂愛とでも呼ぶべきか。盲目の箱入り娘に恋をした下男という初期設定から、すごいところへ行ってしまう。読み手はこの下男のような思い切ったことができるか(ちょっとだけ)考えるが、まちがいなく「ムリ!」という結論になるだろう。彼は、自らの両眼を針で突き刺すことで、「目が見える自分」を彼女にあたえる。「恋は盲目」ではなく、「愛で盲目」なのだ。ちなみに、本作のヒロインである春琴は、日本文学史上最強のツンデレだぞ(参考→ツンデレ小説ベスト【まとめ】

おおきな木 さらに四冊目、「おおきな木」は愛の話だ。少年とりんごの木の交流という、いっぷう変わった設定ながら、じわりとクること請合う。少年が青年になり、成人し、中年になり…と時間が経つ中で、りんごの木は変わらない「愛」を彼にささげる。「アイヲササゲル」なんて抽象的な言い回しをやめるなら、「持っているものを惜しみなくあたえる」やね。彼の要求がエスカレートしていくにつれて、りんごの木があたえられるものも限られてくる。それでも、何の見返りも期待せず、ただ嬉しい顔を見たいがためにあたえつづける。この「りんごの木」を誰におきかえるかで、読み終わったら胸がアツくなるだろう。わたしは、その熱を「愛」と呼ぶ。

愛するということ 最後が、「愛するということ」。これはズバリ「愛」に正面から応えた小論だ。よくある「愛される技術」なんてハウツーと混同すると、きっと後悔する。これは、考え方を変える本であって、方法を探すものではないのだ。しかし読者はだまされる。著者フロムはこう言い切るから―――「愛は技術だ」とね。愛とは、人が自らの孤独を癒そうとする営みであり、愛するとは、幸福に生きるための「技術」なのだという。技術なのだから、トレーニングを積むことで、誰にでも身につけられる。金で着飾ったり自己啓発して「愛される人」を目指すのではなく、「愛する人」になるよう研鑽せよという。読み手は、「愛」の定義が自分のなかで逆転してくるはずだ。

 「ではどんな訓練が必要か?」と問うても、本書に具体的なレッスンはない。これはハウツーではないのだから、「視座が変わった、あとは自分で実践する」が正解やね。わたしは「身近な人にあたえること」だと取った。家族や友人、同僚など、自分の周囲に、自分ができるもの・ことを、あたえること。愛する技術とは、あたえる技術。それは自分の時間であったり、労力だったり、笑顔であったり、傾ける耳だったり、感情を寄せ合うことだったりする。怒りっぽくて好き嫌いの激しいわたしだが、「あたえること」を「愛」なんだと決めて、実践している。

───さて、実際のオフ会では、こんなカンジ→togetter:スゴ本オフ(恋愛編)、まとめていただいたしゅうまいさん、ありがとうございます。参加いただいた方、協力いただいたスタッフの方、感謝しています。

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コメント

「少女セクト」が気になるな

投稿: そふ | 2010.05.17 09:56

>>そふさん

vol.1がamazonで普通に手に入るようになったので、今が狙い目です(少し前まで品薄でプレミア価格になってました)

投稿: Dain | 2010.05.18 06:49

はじめまして、いつも楽しく読ませて頂いています。

『鈴木先生』というコミックはご存知でしょうか。激しくおすすめです! 「恋愛」で私が思いついたのはこの本でした。中学を舞台にしたお話なのですが、中学生の思いつく疑問はストレートですからね、それにまさしく直球で応える先生の姿が魅力的です。もし未読でしたら、ぜひ!

投稿: がみ | 2010.05.18 23:38

>>がみさん

あああー、三巻ぐらいまで読んだ記憶があります。中学生なのに犯ってしまってそれがオモテザタになって……の件が生々しいなぁと思いながら読みました、なんという体当たりセンセ……と心配しながら。

投稿: Dain | 2010.05.19 01:04

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