「本が売れない」ホントの理由を知るための三冊
本が売れなくなったのは、若者の読書離れのせい――そんなバカな!と調べたことがある。結果は真逆で、若い人ほど本を読むし、40年前の若者よりも、最近の若者の方が読んでいることが分かった。特にアサドク(朝の読書)のおかげで、学生の読書率はめざましい。しかし「本が売れない」ことは事実のようだ。というか、出版業界そのものが危ないらしい。本当なの?
「本の現場」は、この疑問に対して、ファクトベースでずばり答えている。ここ30年で書籍の出版点数は4倍になったが、販売金額は2倍程度だという。ということは、つまり一点あたりの販売金額は、ここ30年で半分になったといえる。これが「本が売れない」の正体で、さらに、売れなかった分を帳簿上で相殺していくカラクリも明らかにする。新刊洪水は、起こるべくして起こっていることが分かる。需要は変わっていない、ただ供給過多に陥っているだけなんだ。
詳細はここ→「本の現場」はスゴ本
「本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本」では、本との出合い方を再考させられるアイディアが盛りだくさんとある。「中身を見せない本」が強烈で、クラフト紙で本が包装され、中身はおろかタイトルすら見えない。包装紙に印刷された引用を頼りに選ぶ、一期一会な感覚が新鮮だ。あるいは、「手にした人に自由に書き込んでもらう本」も面白い。書き込みは本の価値を下げることへのアンチテーゼがビジネスアイディアなのだ。本は、決して「その中に書き込まれた何か」だけに限らず、本というオブジェクトであることに気づくべし。
詳細はここ→「本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本」がスゴい
「新世紀メディア論」はもっと過激で、紙メディアとウェブメディアをまたにかけたプロデュースの仕掛けが見えてくる。これからは、サンデー・ブロガーやパートタイム・パブリッシャーが、本業とは別にメディアを運営することになるという。しゃかりきに稼がなくても、副業として「趣味や嗜みの発表の場」としてのメディア=出版なのだ。「誰でもメディア」になれるこの状況が、メディアのデフレーションを招いているのかもしれない。
詳細はここ→「新世紀メディア論」に触発される
出版が危ないというよりもむしろ、「出版」という言葉を再定義する必要があるのかも。

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