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タバコとコドモ

 タバコ礼賛の批判を受け、販売中止になった児童書について。結論は次の通り。販売中止はやりすぎ。タバコを子どもから隠したってタバコそのものは無くならないから。むしろ、子どもとタバコについて話し合うきっかけにしたい。

 わたし自身、ヘビースモーカーから卒煙したこともあって、「吸う権利」と「嫌煙権」のどちらの意見も耳に痛い。おたがい配慮しあっていけたらいいのにと願うのだが、「禁煙ファシズム」 などの先鋭化した言説が飛び交っている。なかでも、タバコ礼賛の表現が不適切だとの指摘により、販売中止になった児童書がある。「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」という。これは喫煙礼賛のプロパガンダであり、健康被害の配慮に欠けるものだという主張があったようだ。福音館書店の「おしらせ」にはこうある[URL]

喫煙による健康被害と受動喫煙の害についての認識が足りず、このような表現をとってしまったことは、子どもの本の出版社として配慮に欠けるものでした。深くお詫び申し上げます。つきましては、「たくさんのふしぎ」2010年2月号『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』の販売を中止いたします。

 喫煙シーンは幾度もある……というより、パイプをくわえた姿がデフォルトなんだ。だから、「おじいちゃん」を描くと、どうしてもタバコが出てくる。坊主憎けりゃ式で、「子どもが読む本にタバコを堂々と描くなんて……」という発想になったようだ。たとえば以下のシーン。メシ食ってる横でタバコ吸うなよ!とツッコミ入れたくなる。
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「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」(太田大輔、福音館書店、2010)

 しかし、わたしには、「パイプをくわえたおじいちゃん」という一種の記号のように見える。シャーロック・ホームズにとってのパイプのように、いわゆる「アクセント」や「トレードマーク」のようなもの。「喫煙を推奨」したり、「子どもたちの受動喫煙を肯定」するような意図を読み取るには、かなり想像力を働かせないと難しい。

 確かにタバコによる健康への悪影響は否めない。少なくとも、わたしの体にとって害だった。やめたことで睡眠や食生活、ニオイや呼吸などで大きな改善が見られたから。だからといって、タバコが害だという理由でタバコを子どもから隠したからといって、タバコの害はなくならないことも事実。これは、戦争をテーマにしたゲームや、殺人事件のニュースと似ている。そうしたゲームやニュースを子どもの目から隠したからといって、戦争や殺人そのものはなくならない。わたしの場合、ゲームやニュースをきっかけに、子どもと話し合うように心がけている。

 実際、タバコを吸う姿を描いた絵本は沢山あるぞ。「分煙」なんてない時代は、今よりももっと日常的だったからね。例えば、「おじいちゃんの…」を出してる福音館書店は、こんな絵本も出している。朝いちばんに吸うタバコは、まずくてウマイのだが、そんなパパの様子を、調子をつけて歌うように語っている。
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「へへののもへじ」(高梨章/林明子、福音館書店、1993)

 「ペーテルおじさん」では、音楽や工作が上手なペーテルおじさんが登場する。子ども達に大人気で、異国の物語を聞かせたり、帆船をこしらえてあげたりするのだ。そんなおじさんが若いころ船乗りだった名残りとして、小道具の「パイプ」が使われている
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ペーテルおじさん(エルサ・ベスコフ、フェリシモ出版、2002)

 大御所、ピーターラビットにもある。ベンジャミン・バニーという厳格な紳士うさぎの雰囲気をかもすため、パイプとムチが使われている。受動喫煙よりも、このムチによるスパンキングのほうが問題になりそうな……
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ベンジャミン バニーのおはなし(ビアトリクス・ポター、福音館書店、2002)

 もっと豪快なやつもあるぞ。なにげない休日のおわりの、お父さんのお話。迷惑顔な子どもをよそに、タバコをふかし、鼻くそをほじり(ピンと飛ばし)、おならをする。ありきたりの休日が、どんなに大切だったかを、思い起こさせる。
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あしたは月よう日(長谷川集平、文研出版、1997)

 このように、タバコやパイプは、厳格さや成熟を示す記号として扱われたり、お父さんの臭いとして代替されている。タバコが害だからといって、「無いこと」にはできないし、「無かったこと」にもできない。嫌いなものを排除すれば、(その人にとっては)心地いいかもしれないが、好きな人もいるのだ。

 今回販売中止となった本書では、タバコのことを子どもに教える良い機会となった。わたし自身が中毒になっていたこと、やめてホントによかったこと、面白半分でも吸ってはいけないことを諄々と説いた。子どもは神妙な顔をして聴いていたが、中学・高校になったらまた話題にしてみよう。タバコは隠したってなくならないのだから。

 むしろ、わたしが「隠した」ことを真似して、子どもが「隠す」ようになることを恐れる。なぜなら、子どもは親の言うことなんて聞かないものだが、親のマネをするのは抜群に上手いのだから。


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コメント

私自身はタバコを吸いませんが、今の世の中の嫌煙ブームは行き過ぎていると感じています。
この本に対する風当たりなんかいい例ですね。

Dainさんがおっしゃるように子供との会話のきっかけにして、
「昔は吸う人はたくさんいたんだけど、体に悪いことが分かったので、いまは吸う人は少なくなった」
とでも、時代の変化として教えてあげればいいかもしれませんね。

投稿: Fozy | 2010.02.09 01:15

>>Fozyさん

お久しぶりです、コメントありがとうございます。(絵本で)昔と今とを比べて、時代の変化を教えるのですね、いいやり方だと思います。次にそんな機会があったら、試してみます。

投稿: Dain | 2010.02.09 06:52

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