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ゲームで子育て「ピクミン2」

ピクミン2 園児も三十路もハマれる、Wiiユーザーならやっとけ。

 「ゲーム脳の恐怖」を喧伝する「専門家」がいる。親の恐怖心を煽っては著作を売りつける商法はいかがなものか。GTAやネトゲといったオトナゲーならいざ知らず、選んで時間決めて遊べば無問題かと。

 むしろ、テレビとゲームとケータイは通過儀礼、腹をくくって向き合うべき。「子どものために」と遮断したまま月日が経ち、免疫がないまま独り立ちするほうが怖いぞ。だから、一緒に楽しんでしまえ。なあに、かえって免疫力がつく。それを実証するためのシリーズが「ゲームで子育て」。

 今回は「ピクミン2」、家族全員でハマっている。100匹のピクミンをあやつって、敵を倒したり「お宝」を集めるゲームなのだが、簡単に入れて奥が深い。短時間で遊べる(1プレイ15分くらい)反面、やりこみ度も高い。その魅力は松本人志にゆずるとして、このエントリでは、「子育て」にまつわるところを紹介しよう。

 ピクミンには色がついていて、それぞれの色ごとに得意・不得意がある。その特性を使い分けながら、力を合わせて敵を倒し、ギミックをクリアし、お宝を運ぶわけだ。

   赤ピクミンは、火に強い
   青ピクミンは、溺れない
   黄ピクミンは、高く飛ぶ
   紫ピクミンは、力持ち
   白ピクミンには、毒がある

 単純なアクションゲームではなく、マネジメントゲームともいえる。能力に応じた役割分担と、タイムラインに従った連携プレイが重要なのだ。敵を弱体化したり、殲滅する部隊と、死体やお宝の運び屋部隊、そして、ギミックを突破したり探索する部隊とチームに分けて、連携して仕事をしてもらう。上手く割り当てたピクミンが整然と仕事するのを見ているのも楽しい。

 オトナのプレイをしばらく見ているうちに、子どもらはすぐに操作法をマスターしたぞ。Wiiリモコンで指示を出すのが直感的に分かりやすかったようだ。

 下の園児は、ピクミンたちを従えて探索するだけで満足しているが、上の小学生の方は、「敵」をやっつけることに専念しだす。さらに、敵や状況に応じて、攻撃パターンやピクミンを使い分けるようになってくる。わたしのプレイとは別のスタイルを編み出し、実践しているのが頼もしい。

 彼のスタイルは、「白ピクミンで敵を弱らせ」→「弱ったところを一斉攻撃」というパターン。白ピクミンは猛毒を持っており、これを食べた敵はダメージになる。白は貴重じゃない?と訊くと、「他のピクミンの犠牲が一番すくない」そうな。やたら白を大事にする嫁さんやわたしと違い、子どもはトータルで見ている。ゲームを子どもにやらせたい一番の目的「パターンを認識し、因果律を制する」ことが達成できている。

 あるいは、箱庭をまるごと与えられ、その中で試行錯誤していき、世界を広げていく喜びがある。地図を見ながら次のルートを決める。知らない場所へ放り込まれたとき、何に注意し、どうやって探索していくのかがシミュレートできる。これは小学校の授業でいう、「学校たんけん」や「町のたんけん」と一緒やね。

 うかうかしてたら、子どもに先を越されてしまった。面目ない。だが、クリア後も探索は終わらないし、2Pバトル、2P協力プレイまである。効率的なピクミン配分や、寡をもって衆を制する戦法なら任せておけ、ゲーマーパパの面目躍如はこれからだ。

 余談だが、集める「お宝」は、ビー玉とか牛乳瓶のフタとか、ナショナルの単三電池(Hi-Top)などの旧いものばかり。舞台は明らかに日本のどこかなのに、「人間」は一人も出てこない。おかしくね?どこ行ったんだろ、ヒトは?そもそもピクミンって何だろね?と話し合っていたら、「これは人類が滅亡した後の世界なんだよ、そんで、ピクミンはヒトが変化したものなんだよ」などと言い出す。その想像力には恐れ入った。

「ゲームで子育て」シリーズ
  ゲームで子育て
  ゲームで子育て「ポケモン」
  ゲームで子育て「どうぶつの森」
  ゲームで子育て「まちがい探し」
  ゲームで子育て「ハッピーダンスコレクション」


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恐竜の飼いかた教えます

恐竜の飼いかた教えます 家庭用から軍関係まで、ニーズに合った恐竜を紹介し、入手方法や飼い方を解説する。

 ヴィクトリア女王がいいことを言っている。「恐竜に飽きた人は、すでに人生に飽きている。なぜなら、恐竜には人生がもたらす全てが備わっているのだから」。"恐竜"と一口でくくっても、賢いもの、速いもの、芸達者なものと沢山ある。そんな中から、価値観や趣味・用途に応じて、最適なパートナーとなる種類を教えてくれる。

 たとえば、初心者がマンションで飼うなら。コンピー(コンプソグナトゥス)が一番だという。ニワトリぐらいの小ささながら、順応性や耐寒性が高く、飼い主に従順だからだ。排泄のしつけも覚えられる知能もあり、キャットフードや残飯で育つ。なによりも子ども好きなところがいいそうな。

 あるいは、収益性の高い牧場経営に向いているのが、リオハサウルスだという。パンパスに放し飼いにし、新興ハンバーガーチェーンに提供するわけだ。同時に、ステーキ肉としても有望だ。イグアノドン中心の食肉市場に、低脂肪のステーキで殴りこみしよう、と経営者をそそのかす。

 本書のユニークなところは、恐竜たちのグラフィック。CGで精密に再現されているだけでなく、人々の生活と溶け込んでいる姿が面白い。先のコンピーは、室内トイレで排泄した直後で、側らのCAT LITTER(猫砂)がご愛嬌。そして、リオハサウルスのステーキは、ガーデンパーティ真っ最中の一家とともに紹介されている。一緒に描かれている人たちもリアルなので、いちいち目を疑いながらページをめくる。

 有名どころもいるぞ。ティランノサウルスは「動物園の最終兵器」と称される。一頭いるだけで、行列のできる動物園となるからね。ただし、(あたりまえだが)非常に危険な恐竜なので、著者は「飼育を考えること自体が無謀の域を超えている」と最大級の警告をする。普段はゆったりと内股で歩くのだが、とっさの動きは極めて素早いそうな。

 ハラ抱えて笑ったのが、「子どもが大好き」ネタ。恐竜の特徴を示すアイコンがあるんだが、「子どもが大好き」には二種類あるんだ。よーく見ると、「子どもと遊ぶのが大好き」という意味と、「子どもを食べるのが大好き」と、まるっきり反対の意味があるんだ。ご注意あれ。

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魂をつかみとられる読書「精霊たちの家」

精霊たちの家 物語のチカラを、もういちど信じる。

 小説の技巧に着目するようになってから、心底から楽しめなくなっていた。いや、面白いことは面白いよ――けれど、構成や人称や配置を目配りしながら『鑑賞』するようになって、ワクワク度が半減してた。時代背景や著者の生い立ちから近似を解釈するかのようなテクスト読みなのだ。美味しんぼ的なら、「ウム、このダシは利尻昆布を使っておる」なんてスカした野郎だな。

 ヒョーロンカならいざ知らず、もったいない読み方をしていた。物語に一定の距離をおいて、自分を少しずつ曝しながら反応を確かめつつ、進める。過去の作品や現代の時評に連動させるところを拾ってはネタにする。まさに読書感想文のための読書、鼻もちならん。

 それが、このラテンアメリカ文学の傑作のおかげで、気づかされた。驚異と幻想に満ちた物語に没入し、読む、読む。小説とは解剖される被験体ではないし、解体畜殺する誰かの過去物語でもない。身も心も入っていって、しばらく中を過ごし、それから出て行く世界そのもの。

 物語は、母娘三代に伝わるサーガとして読んでもいいし、語り部の一部を成す男の波乱万丈の物語と捉えてもいい。千里眼や予知能力、死者や精霊がウヨウヨしていることで、ガルシア=マルケス「百年の孤独」の女版だと考える人もいる。あるいは、池澤夏樹「マシアス・ギリの失脚」を思い出すかもしれない。

 たしかにマジック・リアリズム的なトコはあるのだが、それは前半まで。百年分の歴史が「いま」に向かって語られるに従い、「マジック」は次第に影を潜め、「リアリズム」が表出する。「百年の孤独」が追い立てられるように加速していくのとは対照的だ。ことに恐怖政治の跋扈のあたりになると、同じ小説かと驚かされるほど、濃密に血と暴力を塗り重ねる。拷問シーンでは酸欠にならないように気をつけて。

 さらに、語りの構成が絶妙だ。「私」、「わし」、それから三人称は、誰がストーリーテラーなのか推察しながら読むと二倍おいしい。「わし」はすぐに分かるのだが、あとが分からない。タイトルに「精霊」があるし、一族が住む屋敷のあちこちに精霊がウロウロしているので、最初は精霊が語り部なのかなぁと思いきや――見事に外れた。さらに、「私」が誰か分かるのは最後の最後で、物語の扉が再帰的に開いてゆく悦びを味わったぞ。

 物語がわたしを圧倒する。わたしを蹴飛ばし、喰らいつき、飲み込む。咀嚼されるのは、もちろん、わたし。これほどのエネルギーを放っているのは、著者イサベル・アジェンデ自身が言葉の持つ力に絶大なる信頼を置いているから。言葉に対する信頼が失われつつある昨今だからこそ、彼女のこのセリフが光っている。解説より著者の言葉を引用する。

私は大変原始的な方法で言葉に力を、つまり、死者をよみがえらせ、行方知れずになった人たちを呼び集め、失われた世界を再構築する力を言葉に与えようとしたのです
 世界を再構築する物語のチカラに、我を忘れて読むべし。

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