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「見えない都市」と銀河鉄道999

見えない都市 マルコ・ポーロが架空の都市をフビライ・ハンに語る幻想譚。

…なのだが、どうしても銀河鉄道999(スリーナイン)を思い出してしまう。というのも、999に出てくるさまざまな「惑星」は、いまの現実のいち側面をメタファーとしてクローズアップさせていたことに気づくから。

 「見えない都市」では、55の不思議な都市(まち)が語られる。死者の住む都市といえばありきたりだが、死者のために地上の模型を地下に構築する都市。全てのモノを使い捨てにし、周囲に堆積した塵芥に潰される運命を待つ都市。地面に竹馬のような脚を立て、雲上に築かれた空中都市。

 「銀河鉄道999」でも、奇妙な惑星(ほし)が出てくる。ルールや法律が一切ない惑星。すべてが化石となる惑星。密告を恐れて声をひそめる沈黙の惑星。命の尽きたペットが、主人を偲んで暮らす惑星。金属やプラスチック製のものが一切なく、すべてが枯木と枯葉だけでできた惑星。

 異様な都市、奇妙な惑星を眺めているうちに、いまそこにある矛盾の裏返しであったり、一部を拡大させた皮肉だったりする。異国の都市、あるいは別の惑星の物語を聞いているうち、実は自分の世界が語られていたことに気づく。個々のヴィジョンは濃密なので、ゲームでいうなら「Myst」や「RIVEN」のようなシュールかつリアルな感覚が得られる。ゲームの中で遊んでいるうち、中に入ってしまっていたようなもの。

 さらに、マルコ・ポーロの「東方見聞録」が下地なのに、「空港」やら「レーダー」といった言葉が何気に出てくる。いつの時代なんじゃぁぁ、とツッコむと同時に、これはなんでもありなんだということに気づく。都市という場所だけではなく時間すらをも超越しているというのか。

 おそらく999の原作者・松本零士は読んでなかったと思うが、人の想像力の行き着く先が似ているところがあって、面白い。だが、メタファーを喚起させる創造力は、カルヴィーノの方が一枚上手のようだ。

 たとえば、ツォベイデというでたらめな都市がでてくる。街路や建物の配置がバラバラで、まるで迷路のような構成となっている。そのわけは、都市の創設をめぐる物語になる。それはこうだ――

――さまざまな国の男たちが同じ夢を得たという。夜半に長い髪をなびかせ、見知らぬ都市を走り回る女の夢だ。女は素裸で、追いかけているうちに見失ってしまうのだという。男たちはその都市(まち)を探し回ったが、見つからず、ただ「裸の女を追いかけた夢」を見た男たちが出会っただけだった。

――男たちは夢に見たとおりの都市を築くことで合意し、街路や町並みの配置にあたっては、おのおの自分が追跡した道筋をそのまま再現させた。そして、おのおの女を見失った場所は、夢の中と異なり、城壁や広場を設けさせ、逃げられないようにしたのだ――

 これが、迷路のような都市ができあがった由来だ。読み手はそこに何を見出すのか?池澤夏樹の読みが面白い。裸の女を「アイドル」することで、この都市をさまざまなメディアに読み替えることができる。なるほどー、タネ明かしされた手品を見せられるようで、ちょっと悔しい。この都市のイメージは強烈なので、わたしの記憶の底に沈んだあと、なにかのきっかけで現実と結びつくだろう。そのとき、裸の女がどんな隠喩として扱われるか、楽しみだ。

 本書は、読んだ年齢や経験によって、さまざまな様相を見せる。人生の折々に見返して、そのとき想起されるイメージを楽しむもよし、本書から得られたイメージがリアルの「何か」の隠喩だったことに気づいて戦慄するのもよし、「小説」っぽくない楽しみ方がある。

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