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逃げ場としての図書館、あるいはプロ眼力の価値

 「本のかたち」という変わったフォーラムに行ってきた。本の未来のビジョンとスキームを語らおうという場だ。詳細は[公式サイト]を参照。

 出版界の危機を反映した、真っ向勝負のテーマなのに、キャッチボールのようなやりとりに拍子抜け。初回だからこんなものか。もっと殺伐とした、顔面ありドッジボールを期待するわたしが悪か。とはいえ、普段なら得られない「気づき」があったので綴ってみる。

 まずは"逃げ場としての図書館"に反応した。これは、橋本大也氏の提言の一つ「教会としての物理的図書館」の話の中で出てきた。曰く、管理教育に馴染めなかったとき、地域の図書館が一種の避難所として役に立ったという。そして、大検という選択肢があることを図書館の本で知り、人生を拓いたそうな。図書館とは「情報による救済と癒しの場」であって、「万人を迎え入れてくれて、放っておいてくれる場所」として重要だという。

 おお、なんというシンクロニシティ。わたしの場合は、もっと青い理由で「こんな授業出られっか」とばかりに学校の図書室に引き籠もってた。ミソは「学校の」図書室だというところ。外へ出る度胸もないし、憧れのあの娘が昼休みに来るからという理由で、学校の図書室を逃避先としてたところが痛い。

 ただ橋本氏と違うのは、図書室での出会いは「本」ではなく「人」だったこと。殊勝に読書してたと思いきや、ほとんど読まなかった。代わりに、本好きな人たちとひたすら話してた。「こんな本がスゴい」から、「それが良いなら、これをオススメ」まで、まさにこのblogでやっているやりとりをリアルでしてた。

 本が集まってくる場所は、本好き(主に女子)が集まってくる。司書の先生(女)を始めとし、一種の読書サロンになってた。グレアム・グリーンや尾崎翠を教えてくれたのは憧れの女子。話の糸口に絶対必要なので、そりゃ必死になって読んだものだ。

 動機が不純であればあるほど、人は必死になって努力するもの。結局のところ、わたしの恋はm9(^Д^)プギャーだったものの、図書館とは、本を介して人を探す場所でしたな。

 次に、津田大介氏の"特定の情報に対するファンクラブ化"に反応した。物体としての「本」というパッケージは、CDやiPodのようなデジタルな情報とコスト構造からして違うよという文脈から出てきたネタ。

 「本」というパッケージにお金を払うのではなく、セグメント化された分野の情報そのものに価値を見出せる人が、受け手となる。だから、著者自身が情報の追っかけとなって、集めたものをイベントのような形で提示する。著者や編集者がエージェントのような役割を果たし、受け手にプッシュすることで課金する仕組みがうんたら…とゴメンなさい、よく分からなかった…というのも、「たとえば」で始まる事例がなかったから(巻きが入っていたから端折られたのだろうか、あるいはわたしの意識がトんだか)。

 なので、自分で事例を考えてみる。

 わたしが有益だなーと思っている情報に、「本屋の棚」がある。これに平台も含めてもいい。八重洲や紀伊國屋、ABCや1stといった、大型書店の棚だ。もちろんミーハーのための新刊とベストセラーだけの書架もあるだろうが、その店ならではの特徴、ぶっちゃけて言うと、店員さんの趣味が出ているところがある。選別やレイアウトに、好みが現れるのだ。大きな本屋だと、「○○特集」と銘打って趣味全開なコーナーまである。本屋をハシゴしてまわると、同じ「文芸書」棚でも微妙どころか大いに違っていて、これがまた面白い。そしてとても有益。

 なぜ有益かというと、「わたしが知らないスゴ本は、店員さんが読んでいる」から。わたしが高評価を与えている本の隣にある、わたしが知らない本こそ、チェックすべき。もし書店でそうした気になる本を見つけたら、迷わず手に取るだろう。しかも書店のハシゴでそんな本がカブったら、迷わずレジに向かうべし。

 もちろん、図書館の棚でも同様な「オススメ」が見つかるかもしれないし、amazonの「この本を買った人は~」機能も使っている。しかしだ、両者にクセがないんだ。図書館はスタンダードな棚を目指し、amazonは単純統計をダダ見せているだけ。書店にもよるが、有名どころであればあるほど、店員さんの好みがにじみ出る。

 だから、有名どころの書店の「棚」を定期的にパチリと撮って、ジャンル別時系列に並べて見せたら、書店ごとの傾向が見えてくるはず。加えて、各書店での「特集」棚やベストセラー棚も一緒に居ながらにして見えるのならば、お金を出してもいい。どの本を選び、どうアレンジメントしているか、書店の魅せどころがよく分かるはず。

東京ブックストア&ブックカフェ案内 東京に限られるが、特徴的な書店ばかりをカタログ的に紹介しているガイドがある。写真がふんだんに使われているため、店内の雰囲気や、書架に並んでいるタイトルまで見える。これをもう一歩進めて、特徴的な書店の書棚(情報)を収集し、比較できるような仕掛けがあると、面白いかも…おっと、Shelfariやlibrarything、booklogといったSNSではないよ(わたしのやり方が悪いのか、ノイズありすぎ)。欲しいのは、集合知ではなくプロの目利きなのだから。

――とまぁ、本題とは関係のないところで妄想をたくましくさせてくれたフォーラムだった。Ustreamで中継してたのはさすがだが、参加者のつぶやきを主催側が twitter でフォローしてたのは笑った。誰かの「フォーラムの趣旨が分からん」というつぶやきに、進行途中で司会の岡本氏がキレ気味に趣旨説明しだしたのには驚いた。手ぶらで行ったので、twitterでの空気が分からなかったのよ。キャッチボールのようなのんびりした会場の雰囲気とは裏腹に、ネット上は殺伐としていたのだろうか… 顔面ありのドッジボールのように。

 そうそう、丸香は重要。会場近くのうどん屋、丸香で食べた釜玉が絶品だったことを申し添えておく。初めてバーガーキングのワッパーを食べたときの感動、あるいは、初めて道頓堀で神座を食べたときと同じ悦びを味わった。興奮気味に語ると、「最低三回は食べないと」と言われた。神座と一緒だな。

 次回も、ぜひ、神保町で。

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コメント

岡本@ARGです。

ご参加&レポートありがとうございます。

いや、知り合いだったので、別に「キレ気味」なつもりはなく、あー、構成が不親切だった~って気分でしたかなあ(苦笑)。

投稿: 岡本真@ARG | 2009.08.21 19:26

>>岡本真@ARGさん

当日はお疲れ様でした、いろいろと刺激させられる会話が飛び交っていましたね。後日twitterを参照して、「わたしが見たのは半分だったのかも」と思いました。後ろのプロジェクターでTLを流していてもよかったかもしれません。
しかしながら、「構成が不親切」に気づいてその場でフォローするようなフォーラムは、「初」ですぞ。スゴいことです。

投稿: Dain | 2009.08.22 08:05

岡本@ARGです。

いやあ、ほんと、これはやればよかったですね。>「後ろのプロジェクターでTLを流していてもよかったかもしれません」。

確か、会場にいらした国立情報学研究所の武田英明先生もそう呟いていました。次回以降の反省にしまーす。

投稿: 岡本@ARG | 2009.08.22 10:07

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