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結婚生活を成功させる361のアドバイス

 イギリス人の知恵に学べという二冊をご紹介。

 その前に、そもそも「成功する結婚」って何? 家庭をつくり、子どもを育てあげること? 安らかに満ち足りて、時には刺激しあい、互いに成長すること? あるいは反語的に「死が二人を分かつまで、離婚しないこと」なのか?

 ややもすると、「ゴールイン」という言葉に代表されるように、結婚の成功は恋愛や婚活の終着のように見られることがある(ホントは「スタート」なのにね)。その取り違えが、さまざまな「こんなはずじゃなかった」という嘆息を生みだしてきたのではないかと。

 キレイゴトはともかく、わたしの場合、嫁さん子どものおかげで死なずに生きていられる。独りのときは、非道かった。ルサンチマンを気取る奴がいるけれど、その1000倍くらいナイーヴで、恥知らずで、怖いもの知らずだった。過去のわたしを連れてきたら、穴掘って埋まっておきたいくらい恥ずかしくなる。

 そういや、結婚して十年になる。わたしがまともに生きていられたのは、この結婚のおかげ。独りのままだったら、誰かか何かに突撃して飛び散る人生だったろう。でも、「だからオマエも結婚しろ」なんて言えない。わたしの場合、縁(運?)にめぐまれたとしか言いようがないから。悪いことばかりじゃないけど、いいことばかりでもないから。

 そういう十年選手の視線で二冊を読み解くと、機知と示唆と後悔に満ち溢れていることが分かる。ニヤニヤ笑って読んでいると、グサリと刺さる箴言が待っている。ヒトゴトじゃぁ、ありませんぞ。

イギリス人の知恵に学ぶ妻がしてはいけない180のこと まず、「イギリス人の知恵に学ぶ妻がしてはいけない180のこと」から。著者は女性なので、「妻サイド」のアドバイスが的確かつ具体的でいい。たとえば、「夫」の定義は、なかなか辛らつだ。

靴紐がきついといっては大騒ぎし、卵の賞味期限が切れているといってはヘソを曲げる。まともな女性が誰ひとり理解できない理由で、腹を立てたり、すねたり、はしゃいだりする、それが夫なのだ。
 そう、現実を見つめ、現実的になれと。些細なことにイラ立ってはケンカしても仕方ないじゃないかという。そうだね、どんなに惚れてても、一緒に暮らせばアラは見えてくるもの。古くは「婚前には両目を大きく開いて見よ、結婚してからは片目を閉じよ」という金言があるし、最近なら、「ちっちゃいことは気にしない、それ!わかちこわかちこ~」だね。

 おお、これは!と見開いたのは、次のアドバイス。単純かつ強力だ。

のどまで出かかっても、夫に「だから言ったでしょ」と言ってはいけない。言っても何の得にもならないが、言わないでおけば夫は感謝する。
 著者は夫に向かって、何度も言ったんだろうな、そして夫に「感謝されない」仕打ちを受けたんだろうな、とひとりごつ。あるいはこれ、「妻→夫」に限らず、その逆も然りかと。何かで失敗した嫁さんに向かって、「ほらね、オレの言ったとおりじゃん」なんてうそぶいて、いい結果になった覚えがない。

 笑ったのが、「やきもち禁止」。180のアドバイスのうち、10コも使って「やきもちダメ」という。著者は自分のやきもちで相当苦労したらしい。夫の女友達・男友達、夫の仕事、夫と娘、夫の趣味、夫が参加しているサークル活動に、「やきもちを焼くな!」と主張する。ヒートアップしていく様子は、単なる助言を超えている。さらに、「やきもちほど、女性を老け込ませ、みじめにさせるものはない」の裏側の悔恨が垣間見えて、気の毒になってくる。

イギリス人の知恵に学ぶ夫がしてはいけない181のこと 次は、「イギリス人の知恵に学ぶ夫がしてはいけない181のこと」。「妻」よりも一つ多いのがミソ。これも、ハッとさせられるものが多い。たとえばこうだ。

妻の心を細部まで理解することを望んではいけない。
女は複雑な道を経て答えを出すので、
女性があれこれ考えることに、
「なぜ?」と聞いてもあまり意味がない。
 ああ、確かにそうだ。わたしなんざ絶対に思いもよらない理由で行動することがある。そのいちいちに論理的な説明を求めても、ケンカになるだけ。ここは、「そうだね」と返し、積極的に共感するほうがいい結果を呼ぶ。言いえて妙なのは次の助言。
妻を操縦しようとしてはいけない。
導くほうがはるかに簡単なのだから。
 これも同意。嫁さんをコントロールしようにも、できるワケがない。意図がバレたら怒られるのは必至だし。むしろ、一緒になって取り組み、最終的には彼女の頭で「望ましい結果」にたどり着くように仕向けるのがベスト。決して強要してはいけない。愉快なのは、「妻サイド」の助言。「夫を操縦するのなら、バレないように注意してね」という。これは不同意。バレないように上手くやってるつもりなのかもしれないけれど、バレてるよ、おそらくね。

 オトコゴコロに刺さるのは、このアドバイス。浮気の事実よりもむしろ、妻の反応が冷ややかだ。

浮気をしてはいけない。
あなたの妻が嫉妬するかは別にして、
あなたを軽蔑することは確かだ。
 二次元キャラに恋するのは浮気になるのだろうか? 「うおぉぉー、いおりん、好・き・だー」と座布団を抱いてごろんごろんするのは浮気だろうか? 軽蔑されていることは確かだが、嫁さんはまこまこに2回もプロポーズしてるし… 奇妙な四角関係が成立している。まぁ、「共通の趣味をもて」というアドバイスは実践しているから、よしとするか。

 ときには、「妻」バージョン「夫」バージョン、どちらも時代を感じるところがある。

 妻子を放っておいて夜遅くまで遊び歩くな、とか、高圧的になって恐怖で支配するな、といった「莫れ」を見ていると、今どきそんな夫がいるかしらん、と思えてくる。頑固で暴君のような「ビクトリアン・ファーザー」が浮かび上がってくる。

 その一方で、「妻」とは、お金に疎く、世間知らずだという前提で語られている。「女の子は幼い頃は父親の召使いで、成長し、妻になったら夫の女中」などと揶揄されていたそうだが、今どきそんな女性がいるかしらん。

 それもそのはず、本書の出版は1913年(大正2年)のこと。訳者曰く、どんなに飲む打つ買うにハマっていても、家庭にお金を入れておけば、世間的には「よき夫」としてまかり通っていた時代だという。やたら古き良きイギリスをありがたがり、「これだから日本はダメだ」という人には、ちょっとしたカウンターになるかも。

 また、原題が"Don't's for Wives/Husbands"となっていることに注目してみよう。つまり、これは結婚生活における禁則事項なのだ。これはダメ、あれもダメというようで、いささか息苦しい。「何々する莫れ」に囲まれた禁欲的なイギリスを彷彿とさせられる。読み手は鵜呑みにするのではなく、「莫れ」を「願望」に裏返してみたり、いかにもイギリス的な開き直り(マズい飯)にプッとしながら味読するといいかも。

 あるいは、禁止事項に閉口するのではなく、「こうしよう(Let us...)」で始まるほうに着目すると、するりと入ってくるかも。これは「妻」へのアドバイスだが、夫婦両方に通ずる。幸せな結婚生活のためのゴールデンルール。

待ってさえいれば、夫が幸せにしてくれると思ってはいけない。
夫を幸せにしようと積極的になると、
妻自身が幸せであることに気づくはずだ。
 そうだね、幸せにさせようと努力しているときが、いちばん幸せなのかも。

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コメント

女も男もいつ心変わりするかなんてわからない。だから結婚とは、新たな旅立ちへの準備期間だと考えるべきかも。by シュークリーム。

投稿: シュークリーム | 2009.04.27 17:02

>>シュークリームさん

うまいこといいますね。
「心変わりするかわからない」を理由にもってくるのであれば、「結婚」に限らないかと。

投稿: Dain | 2009.04.29 01:22

>>Dainさん
>「結婚」に限らないかと

はい、仰るとおりです。このほうがDainさんに伝わるかなぁ~と思い「結婚」と書いてみました…クックックッ(笑)。あ、悪気は無いです。いつもおもろい本をご紹介いただきサンクスです。

投稿: シュークリーム | 2009.04.29 06:02

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