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14冊の理系の名著

世界がわかる理系の名著 「世界がわかる理系の名著」ではなく、「世界がかわる理系の名著」だね。

 なぜなら、ここに挙げられた本は、人類の価値観を根底から覆し、世界を文字通り変えたものばかりだから。こうした本のおかげで、人類は「世界がわかる」ようになったのかもしれない。

 いわゆる文系の名著とされる戯曲や小説は、少なくとも生まれた時代に迎合する必要があったから。「時代を先取りした」形容詞は釣書きにすぎず、真に先進的ならば、ノイズに埋もれ後世に残らない。

 しかし、この14冊の本は違う。世に出たとき、まともに取り合ってもらえなかった。むしろ、当時の大勢の「空気読め」攻撃にさらされ、無視・弾圧・発禁扱いされてきたものもある。

 たとえばファーブル。「ファーブルの昆虫記」なら日本人の誰でも知ってそうだが、本国フランスではほとんど受け入れられなかったという。犬よりも小さな生物は目に入らないお国柄で、さらに、発売当時の十九世紀では、昆虫とは悪魔がつくったものであると信じられていたからだ。

 あるいは、ガリレイ。地動説を主張した「星界の報告」が教会の反発を買い、宗教裁判にかけられたことは有名だが、時の権力者・メディチ家を後ろ盾とするため、木星の衛星に「メディチ星」という名前を贈っている。保身のための「保険」だね。

 当時の圧力に負けず、真理をうたったものであれば、後の世にその正しさが示される。ファーブルはユクスキュルへ。ガリレイはニュートンへ。ただし、これは「真理」に限らない。単に正しいからといって、必ず再評価されるとは限らない。

 それは、真理のみならず、情熱があったから。後の時代に残った本に共通して、世間が何と言おうと、わたしはコレを信じる、という強い想いが伝わってくる。「世の人は我を何とも言わば言え我がなすことは我のみぞ知る」というやつだね。

 14冊の名著は、以下の通り。本書では、書いた人のエピソードや、本が世界に与えた影響、さらに本のさわりがピックアップされており、「読んだフリ」ができる親切設計となっている。「昆虫記」と「沈黙の春」しか読んでいないわたしは、「生物から見た世界」「相対性理論」に手を出してみるつもり。

  生命の世界

    1. ダーウィン「種の起源」
    2. ファーブル「昆虫記」
    3. メンデル「雑種植物の研究」
    4. ワトソン「二重らせん」

  環境と人間の世界

    5. ユクスキュル「生物から見た世界」
    6. バヴロフ「大脳半球の働きについて――条件反射学」
    7. カーソン「沈黙の春」

  物理の世界

    8. ガリレイ「星界の報告」
    9. ニュートン「プリンキピア」
    10. アインシュタイン「相対性理論」
    11. ハッブル「銀河の世界」

  地球の世界

    12. プリニウス「博物誌」
    13. ライエル「地質学原理」
    14. ウェゲナー「大陸と海洋の起源」

重力のデザイン さらに、本書では、名著からつながる、現代の名著まで紹介されているところがユニークだ。バヴロフの条件反射は、「アンビエント・ファインダビリティ」につながっており、ユクスキュルの「生物から見た世界」からは、ローレンツの「ソロモンの指環」が導出される。ガリレイつながりで紹介された「重力のデザイン―本から写真へ」が抜群に面白そうなので、これも手を出してみよう。

 名著は、単体で歴史に浮かんでいるだけではない。原理を通じて、たった今にも連綿と伝えられていることが、よくわかる。

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コメント

「わかる」が「かわる」って上手いこと言いますね。ガリレオ→ニュートンって確かにそうだなぁと感心しました。歴史的時間的な縦の「つながり」って、あ~ロマンだなぁ(笑)って。話飛躍しますが、古事記万葉集が現代の今まで生き残り、読み続けられているってことと同じかもって思いましたね。

アインシュタインでなくても、当時、相対性理論のようなことを研究するひとは多くいたはず。だからいづれは誰かによって証明される。要するにたくさんの研究者がその理論へ向かって進んでいたはず。だからアインシュタイン一人の手柄ではないかも。今風で言えばES細胞やips細胞とか。京大の山中さん以外でも誰かがきっとやるはず。ライバルって親友になりうる?という矢吹丈と力石徹的な横の「つながり」もまたロマンという風にはならないわね(笑)。

重力のデザインの鈴木さんから祖父江慎さんの「タイポグラフィ (デザインの現場BOOK)」へとたどり着きました。といってもDainさんのおかげですけど。日本語とデザインの結びつきが面白そう。両方読みます。いつもサンクスです。

投稿: シュークリーム(地獄略) | 2009.04.07 20:34

>>シュークリーム(地獄略)さん

はい、おっしゃるとおり、本書では「歴史的時間的な縦のつながり」が見えるように紹介されています。真理のバトンタッチがつながっていく様子は、なかなか面白いですよ。

投稿: Dain | 2009.04.08 00:13

一人ひとりの構成、例えばアインシュタインンの「相対性理論」の場合。

・書いたのこんな人
アインシュタインといえば、お約束の「小さい頃勉強が苦手でした」的なことから、核兵器廃絶運動を起こすまでのことが記されています。

・こんなことが書いてある
「相対性理論」の原題は「動いている物体の電気力学」なんだって。ほ~。

・その後世界はどう変わったか
原子力発電→原子爆弾

・エピソード
アインシュタインは、ナチス時代のドイツが原爆兵器化を阻止するために、アメリカの原子爆弾開発に貢献。毒を持って毒を制そうとしたんだけれもど…。

・アインシュタインの教訓
才能とは生まれながらにして、好きなことだけに集中特化できる人らしい。だから、しょーもないことに頭つかわないんだって。

・さわりピックアップ
岩波文庫の相対性理論の「さわり」を紹介。

・コラム「アインシュタイン後」
本の紹介。「ホーキング、宇宙のすべてを語る」ランダムハウス講談社。

と、こんなかんじ。

本の著者、鎌田さんって確かNHKの京大VS爆笑問題?って討論番組で観た記憶があります(ユーチューブで観れるかも)。見た目はアバンギャルドな服装なんだけれど、爆問の太田光さんに挑発されて、保守的かつ出る杭はつぶす的な「THE大学教授」な内面が露呈したのがおもしろかった(笑)。
 
著者自らが「私は天才なんぞになれませ~ん」的な言い訳がましいところは嫌いだなぁと思いつつ、逆に人間臭くて好きかも。文系の私としては貴重な理系の世界を吸収できた本でした。Dainさん、いつもサンクスです。

投稿: シュークリーム | 2009.04.14 22:05

>>シュークリームさん

はい、確かに「人間くさい」ところがありますね。キレイにまとめるよりも、読み手を挑発するような参考文献を出してきたり。この人を入口にして、「理系」の世界を覗いてみるのも一興かもしれません。

投稿: Dain | 2009.04.15 21:36

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