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SFで描いた青春恋愛小説「ハローサマー、グッドバイ」

ハローサマー、グッドバイ ボーイ・ミーツ・ガール、少年のひと夏の恋物語――だと思っていたら、のけぞった。

 サイエンス・フィクションを、ちょっとナナメに見ていた。SFなんて科学調味料で味付けしたファンタジーにすぎないから、ギミック取ったらただの冒険譚でしかないと思ってた。

 つまり、宇宙人や未来人を持ってこなくてもそのテーマは書けるんじゃないの? そんな「設定」で紙数稼ぐの? その「設定」がないと語るに値しないの? とまで冷ややかに見ていたことがあった。

 この物語は、そういう視線を粉々にしてくれる。これはSFでないと書けないし、その強烈な証拠をラストで明かすのは上手い/美味い。後半の急転直下は驚きの連続だし、最後の最後のドンデンは、一本背負いのように決まった。わざわざホーガンやクラークを持ってこなくても、SFってスゴいね、と実感できる。

 わたしのように疑り深い読者向けなのか、出だしでこんな予防伏線を張っている。主人公ドローヴに語りかけられるこのセリフが、よもや物語全体を覆っているとは気づかなかった。

「だいじなのは、お話の裏にこめられた意味なんだよ、ドローヴ少年。お話ってのはある目的があって語られるもので、その語られかたにもやっぱり目的がある。お話しがほんとかそうでないかなんてのは、どうでもいいことなんだ。それを忘れるなよ」
 仕掛けがあまりにも鮮やかなので、そこへ至るまでのビルドゥングス・ロマンが霞んでしまうほど。けれども、よく目を凝らすことで、親との葛藤や優越感ゲーム、友情と恋愛の不安感、オトナへの懐疑が上手に折りたたまれている。

 のんびりした田舎の漁村風景に見え隠れする戦争の影の出し方がいい。全て少年の独白体で進められるため、読み手も同じ情報の制限を受けることになる。このもどかしさと息苦しさは彼の気分そのもの。最初は、少年と少女の夏の冒険だったのに。

 そして、あばかれる人性の残酷さと、一変した風景とのコントラストが、まぶしい。

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