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飲んだら読むな、読むなら飲むな「ウルトラヘヴン」

 読むクスリなんだが、週刊文春の小話集ではない。読むドラッグ、しかも「最上級のペーパー・ドラッグ」だ。

 オビにある、謳い文句に偽り無し。酔って読むとダイレクトに作用してくるので、かなり危ない。アルコールは感情や感覚の増幅器にすぎないから、飲みながら読むとバッド・トリップになること請合う。呑んでジェットコースター乗っちゃダメのと同じだし、アルコール入りセックスが深いのと一緒。

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 近未来――多種多様なドラッグの発明によって、好みの精神世界を体験できるようになったはいいが、違法ドラッグの危険性も桁外れになっている。「人間やめますか」どころじゃない、人間じゃないナニカにまでなろうとするのね。

 見所というか酔いどころは、究極のドラッグを求める主人公のトリップシーン。皮膚の表裏の区別がつかなくなり、体そのものが裏返しになる感覚や、メタ現実を時系列に、しかも何層にもわたって知覚するイメージ群がすさまじい。主人公だけでなく、読んでる自分までもが微分されてる気分になってくる。

 さらに、知覚とは、脳により咀嚼されたデータにすぎないことが、よく分かる。あるシーンで、「情報未処理」の状態である赤ん坊そのままの世界を「視」る。遠近感デタラメで、全体は部分を構成しており、平衡感覚は完全に喪われている。一瞬一瞬が妙にクッキリとして、まるで高精密映像のパラパラマンガで現実が成り立っているような、そんな感覚を「理解」できる。

 つまり、ホントはそこまで「解析」できるにもかかわらず、通常の脳だとそこまで追いつけないのだ。だから、無数の諸相の最大公約数的なところをパターン認識して誤魔化している――そんなことを、主人公と一緒になって「理解」する。

 たとえば、いわゆる麻薬中毒と似ているかも。疑似体験として、視界が脈打っているような錯覚なら、↓のyoutubeで確認できる。最後まで画面を見つめた後、モニタの「外側」を眺めてみよう(視聴注意!気分が悪くなったらすぐ止めること)

 これは、脳による映像情報の処理をいじったもので、網膜に映っているけれど「視」ずに見たことにして補っている部分がうねっている。

 あるいは、蓮コラ(蓮イボ)が忌み嫌われることも同様かと。脳が自動的に処理している「顔」や「体」への変換を拒絶しているため、見流せない映像と強制的に向き合わされる。この、脳がいうことをきかない気持ち悪さこそが、生理的に嫌なんじゃぁないかと。実際、トリップシーンには、蓮コラっぽい表現もあるので、用心用心。

 本書は、masashiさんオススメで出会えた傑作。masashiさん、ありがとうございます。幾重にも崩壊した現実、狂ったアフォーダンス、怒涛の幻想世界を、何度でも安全に(?)堪能できますな。ただし、「飲んだら読むな、読むなら飲むな」と声を大にして言いたい。でなきゃ「混ぜるな危険」と大書きしておかないと。

 使用上の注意をよく読み、用法・用量を守り、覚悟キメてお使い下さい。

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コメント

おはこんばんちわ。
dainさんはこのサイトを知っていそうなんですけど紹介してみます
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1356/DOKUSARU.html
スゴ本がいろいろあると思います。

投稿: juu | 2008.10.22 12:53

>>juuさん

「猿」ですか、これまた大御所ですね。
もちろんチェックしていますぞ。
(blog対応になってからうんと見やすくなりましたし)

投稿: Dain | 2008.10.22 23:18

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受信: 2008.10.20 15:10

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