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【微グロ注意】 カニバリストの告白

カニバリストの告白 食人が忌み嫌われる理由の一つに、その調理方法がある。

 「八仙飯店之人肉饅頭」を観ていたとき、そう思った。料理人が発作的にkろした女の処理に困ってミンチ→肉まん→(゚Д゚)ウマー(捜査にきた警察も喜喜!)。

 そもそも、そんなチャンス(?)は、遭難して食料が尽きたときとか、食人族のお宅に招かれたときしかない。だから、まともに調理していない生焼け・腐肉だったり、見た目まんまのグロテスクだったり。解体・調理の場所と食事処が物理的に近しいのも輪をかけている。タブー云々の前に、嫌でしょ、そんなの、たとえ「猿の肉」と偽られても。

 食物連鎖を上るほど、旨いものになる。オキアミ→ニシン→マグロの順で美味しいからね。結果、マグロを食ってるヒトのほうが一番旨いはず。開高健が「松本清張の下唇、ニコチンが染みてホロ苦い旨さだろうな」と語ったことがあるが、そのときの調理法は確か、「炙り焼き+岩塩」だったような気が。

 では、超一流のシェフなら?

 否が応でも期待が高まる。題名は「カニバリストの告白」だし、表紙をみろよ、「うまそう」な骨付き肉だろ? 実際、告白体というか手記の形で語られる天才シェフの半生は、そのまま上質のミステリになっている。

 その人を食ったユーモアたっぷりな「語り」に、ニヤニヤが止まらない。彼のレシピが折々に挿入されており、最初、読者はヨダレを垂らすだろうが、そのうち生唾が酸っぱくなってくる仕掛け。究極のレシピを追求する数奇な運命をたどるうち、読者は「表紙」を見返したくなる誘惑に幾度も駆られるだろう。

 ただし、「劇薬小説ベスト」で鍛えている、このblogの読者サマにはモノ足りないかと。いっぽう、ネットで評判を漁ると、「下品」「狂ってる」「吐き気を催す」という良識的なご意見が沢山おじゃる。やっぱり常識人からすると、ちょいと背伸びが必要かも。

 食べることは理解すること――ふつう異文化理解に使われる言い回しが、読了後は真の意味で「腑におちる」一冊。

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コメント

食べはしませんが、ジュスキントの「香水」が上品で良かったです。綺麗な映画(邦題「香水/パフューム~ある人殺しの物語」は長過ぎ)にもなったし。

投稿: 金さん | 2008.09.12 16:02

>> 金さんさん

オススメありがとうございます、チェックしてみますね

投稿: Dain | 2008.09.13 01:01

ニコラス・ウェイド著『5万年前―このとき人類の壮大なたびが始まった』によると、狂牛病(クロイツフェルト・ヤコブ病)に対して耐性のある遺伝的特質は、人類の祖先の食人の風習に起因するということらしいです(インフルエンザの予防接種と同じ原理ですね)。

1986年に英国で狂牛病が発生した際、科学者は狂牛病の感染者が大流行すると予測しましたが、狂牛病に感染した牛肉を食べたことが原因と思われる患者は数十人しか確認されていないようです。

ただ、前掲書によると日本人だけは、狂牛病に対する遺伝的特質はどの民族集団とも異なっていて、遺伝子の別の部位に保護的特性があるんだそうです。

投稿: きゆづきさとみ | 2008.09.15 05:35

人は食べませんが、ハリー・クレッシングの「料理人」は食べることに関しての意識が揺らがされた作品です。
でも、中高生のころだったから、今だとゆるく感じるかな?
ふとアマゾンを見てみたら、まだ売ってるようです。
http://www.amazon.co.jp/%E6%96%99%E7%90%86%E4%BA%BA-%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%AF%E6%96%87%E5%BA%AB-NV-11-%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0/dp/4150400113/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1221442140&sr=8-1

あと、「ハンニバル」は食べちゃうシーンまでにこちらの神経をマヒさせて、フツーに読ませちゃう筆力に脱帽でした。
立ち読みであのシーン見た時はショック受けたはずなのに…。

投稿: しろいまちこ | 2008.09.15 10:34

>>きゆづきさとみさん

勉強になります、ありがとうございます。
ご提示の本は未読なので真偽の程は分かりませんが、「食べてるものでカラダになる」は、けだし真実なのでしょう。


>>しろいまちこさん

ありがとうございます、クレッシングの「料理人」ですね、未読なので手にとってみます。
それから、このblogで紹介している「劇薬小説」は、読まないほうがいいです…というよりも、むしろ読んではいけません。

投稿: Dain | 2008.09.17 00:32

劇薬小説、わたし的には「問題外科」より「宇宙衛星博覧会」の方がグッときます。あと、「万延元年のフットボール」とか。

劇薬小説の回を読んで連想したのは
「侍女の物語」(マーガレット・アトウッド)ですが
これは私が女だからかもしれませんね。男性が読んでどれくらい切実さがあるのかはちょっと謎です。

投稿: しろいまちこ | 2008.09.21 00:03

>>しろいまちこさん

おお、「万延元年」未読でした。
思い出させてもらい、ありがとうございます。
「侍女」は女性が読むと戦慄する話ですね。
男としてはティプトリーJr.の「ラセンウジバエ解決法」におののきました。

投稿: Dain | 2008.09.23 07:40

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