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「こどもをやる気にさせる101の言葉」と「こどもをダメにする130の言葉」

こどもをやる気にさせる101の言葉 高校受験をひかえた子どもに向けたメッセージ集。

 ただし、それに限らないところがミソ。不安を抱いていたり、今のいま落ち込んでいる人も、本書から元気をもらえるかもしれない。むしろ、親であるわたしが勇気をもらっている。

 本書が気に入ったのは、その本質を冒頭にまとめてあるところ。つまり、こんな問いかけで始まっている。

こどものやる気を伸ばすためには、一体、どんな言葉で、どんなことを語りかければいいのでしょうか

 その答えは、とても簡単なものだという。否定語を少なくして、善いところを大げさなくらい誉めろというのだ。そして、欠点やダメだと思うところは目をつぶり、口やかましいと逆効果になることを心得よと。そうすることで、「自分は親に愛されており、周囲の人たちに大切な存在として必要とされている。生きていていいのだ」という自己肯定感をはぐくむことができる。これがない限り「やる気」は育たず、「やらされ感」のままムリヤリ机に向かわされることになる。

 ──と、このあたりまでは、ありきたりの育児書の延長に見えるが、続きがある。今度は大人たちに目を向けてこう述べている。

それにしても、大人たちは、どうして否定語を使ってしまうのでしょうか。わかりますか? それは、こどもを信じられないからです。「こどもを放っておいたら、どうなるかわからない」という不安がつのった結果が、否定の言葉となって、子どもに向けられているのです。その不安は、実は言葉をかける大人自身の不安とつながっています

 ああ、確かにそういう動機が心底にあることを否定できない。子どもに精いっぱい頑張って欲しいと強く望む心の奥に、「自分は全力を出し切って生きてこなかった」という後ろめたい気持ちは、確かにある。

 そういう「親」の気持ちも目配りしつつ、思春期の子どもに向けてどんなメッセージを発していけばいいのか、101の言葉にまとめてある。発信元が塾講師なので、おのずから勉強がらみのものが多い。それでも、先生たちの真剣さと熱が、単なる受験勉強を超えて迫ってくる。子どもに向けて「使う」ためでなく、読んでいるこっちもアツくなってくる。

 前著「子どもを追いつめるお母さんの口癖」とあわせて読むと、一層効果がある。見ているだけでヤル気がみるみるうちにしぼんでくるマイナス言葉のオンパレードだ。うっかり自分が使っていそうなので、反省リストとしても使えるかも(あるいは反面教師リストとして)。

 ベタなやつだが、わたしの心に響いたものをいくつかピックアップしてみよう(いかにもたんぶら向けかも)。

不安を感じないほうが怖いよ。

自分の状況をわかってないか、

無感情になっているかの

どちらかだからね。

でも、あなたは不安を感じた。

だから大丈夫。

 受験前に不安を感じない生徒なんて、滅多にいない。高校なんてどうでもいいと思っているか、自分の状況を把握していない子だけ。不安を感じるのが普通──この「受験」や「高校」をテキトーな言葉に置き換えてみよう。

一生に何度もあることじゃない。

だから、受験を楽しもう。

そして、人生のどんな場面でも

楽しめる人になろうよ。

 よく取沙汰される質問、「どうして勉強しなくちゃいけないの?」についても、納得のいく返事がある。

 たとえば、「将来の役に立つから」とか「人生を充実させるため」といった答えを耳にするが、実際にそんな問いをわが子からされたことがないんだろう。思考実験として屁理屈問答をシミュレートするのは楽しいかもしれないし、賢しらの中坊をやりこめる自説を開陳するのは痛快かもしれない。

 しかし現実は、そんなワイルドカードで答えられない。一般的な「学ぶための"方法"を身に着けている」という回答のほかに、本気で質問してくる子どもに応えてあげられるのは、これだろう。

まず、この質問をしてきたこどもの、将来の夢ややりたいこと、好きなことを聞いてみましょう。もしも、こどもに将来の夢や好きなこと、やりたいことがあるのであれば、それを手助けし、実現するために必要なのが勉強であり、学力なんだと説明できるでしょう。社会では、テストのように一つの正解があるのではないため、それまで培ってきた知識や考える力で、自分なりの答えを出すしかありません。これは、全ての夢に必要な力といえます。
もしも、そのこどもに夢や好きなことがまだないようなときは、それを見つけるサポートをしてあげることが大事です。そうして、こども自身が「自分の夢のために」勉強するという道筋を作っていくのが、一番の答えになるでしょう。

 その他に、「こどもが勉強を『嫌い』だという場合」や、「こどもが『いまは他にやりたいことがある』という場合」のそれぞれの対応がある。「どうして勉強しなくちゃいけないの?」への回答は、子どもの気持ちや状況に応じて変わってくるはず。文字通りケースバイケース、そのときのわが子の興味の方向・素質を鑑みて、一緒になってルーティングするのが適切だろうね。

 そして、適切な答えを言うだけではなく、適切なひとが言うべき。「なりたい自分」「ありたいアタシ」を実現していないような――こころのタマゴにバツがついたままのオトナの口から言われても、「夢? ハァ?」と白けるのがオチだろう。

 つまり、この答えにふさわしい親になれということやね。

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受信: 2008.10.05 20:25

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