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そうだ、宇宙、行こう「宇宙旅行はエレベーターで」

宇宙旅行はエレベーターで リアルSFのプロパガンダ本。

 クリアすべき課題の一つ一つに明確な回答を与えており、一緒に考えてるだけでワクワクできる。どの問題も現実的で、どの回答も現実的なので、単なる思考実験を離陸した「投資対象」としても魅力的だ(著者の一人は不動産投資信託のファンドマネージャーなので要注意www)。

 ケーブルの素材や強度、エレベーターの動力といった技術的課題から、敷設場所、建造方法や既存の宇宙開発計画との競合、気象や人為的リスクを考慮した安全性や移行・運用方法、さらには宇宙ビジネスの収支まで、グローバルレベルの風呂敷が広げられている。いや、話は月や火星エレベーターまで広がっているから、太陽系レベルか。

 面白いのは、風呂敷の現実味。

 技術的課題のほとんどは、既存のテクノロジーで解決可能だという。資本コストもべらぼうではなく、民間団体や個人(ex:ビル・ゲイツ)でも充分に手が届く「お買い物」だそうな(初期投資1兆円を高いと思うかどうかによるが…)。

 むしろ、NASAの官僚主義や、所有団体の政治・軍事的立場こそが最大の阻害要因になると指摘している。最初の宇宙エレベーターを建造するのは「アメリカ以外ありえない」と言い切っているが、最も可能性の高い国として、中国を挙げているのは見逃せない。本書で言及されてなかったが、きっとGoogleが手を挙げるぞ。

 細部だって手を抜かない。ジオステーション、クルーザー、アース・ポートのアイディアはSFからもらうものが多く、具体的なイメージを伴っている。クラーク「楽園の泉」やスタンリー・ロビンスン「レッド・マーズ」、カール・セーガン「惑星へ」に夢中になった人は、きっと拍手するに違いない。宇宙基地での治安活動のための警察の必要性に言及するあたりで、「ポリスノーツ」思い出したぞ。

 気づかされたのは、わたし自身の固定観念。「宇宙 = ロケット」が固くバインドされた頭に、「宇宙へいくために、なぜロケットを使うのか」という問いかけはブレークスルーをもたらした。また、宇宙旅行のコストの95%は重力を振り切るための費用に使われることを知って、そりゃ地球の重力は魂を縛るくらいだよねと呟いたり。宇宙と「いまここ」がつながっていることを、感覚レベルで想像する手段として、本書を使うと面白いぞ。

 宇宙エレベーターは、実現するかどうかではなく、「いつ、だれが」建造するかレベルになっている。風呂敷の巨大(でか)さと感触をお確かめあれ。

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