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子どもが「数学なんて役に立たない」なんて言いだしたら渡す「数学で犯罪を解決する」

数学で犯罪を解決する 天才数学者が犯罪者を追い詰める。

 アメリカのドラマ「NUMB3RS」の話だけれど、実際の事件をベースにしている。科学捜査官ならぬ数学捜査官。そのエピソードを糸口にして、元ネタとなっている様々な数学概念を解説するのが本書。サスペンスのドキドキ感と数学のエウレカ!を楽しみながら読む。

 まず、ロサンゼルスの連続殺人鬼。若い女を次々と強姦殺人した現場が、街路図に×印で記されている。捜査は行き詰っており、手がかりはない。次はどこで、誰なのか――?

 この事件を解決する数学の発想がスゴい。わたしなら、「×群の真ん中あたり」しか思いつかないが、この天才数学者は試行錯誤の結果、次の数式を書く。

Hotzone_3

 もちろんわたしにゃチンプンカンプンだった――が、本書ではその肝を解説してくれるので安心して(そしてわたしに訊かないように!)。

 これは、連続殺人犯の自宅を絞り込むための式だそうな。犯人は尻尾をつかませないよう、ランダムなパターンを選んだつもりだったのだが、その「ランダムなパターン」に傾向があり、

 1. 家の近くが多いが、あまり近すぎない
 2. いつも家の周りに「バッファゾーン」を設け、そこでは攻撃しない
 3. 安心して襲えるエリア外になると、遠くなるにつれて、犯罪件数は減る

を数式にしている。もちろん地形や移動手段や犯行状況による変動要素はあれど、本質的な「犯人はどうやって現場を選んでいるか」に迫っている。

 そして、ずばり住居があるホットゾーンがあぶりだされる。おかげで捜査範囲は絞り込まれ、スリル満点の場面もいくつかあって、犯人は捕まり、事件は解決する――これが、「NUMB3RS:天才数学者の事件ファイル」の第一話なんだって。

 ドラマの紹介と思いきや枕にすぎず、データマイニング、オペレーションズ・リサーチ、ベイズ確率、ゲーム理論、暗号、指紋とDNA鑑定の尤度など、「数学という武器」が縦横無尽に活躍している。ドラマとはいえ、ホントに「囚人のジレンマ」を使って数学による裏切りの説得をするトコなんて爆笑もの。理論的な下支えといった裏方的仕事ではなく、数学が直接現場に役立っているところがスゴい。

 もちろん、数学を武器として扱うため(捜査に役立たせるため)には、地道な裏取り調査や正規化された膨大なデータが必要だ。しかし、そうしたデータの大海から結果を出すためには、数学的にアタマを使う必要がある。

 つまり、重要な要素だけに集中して、他は無視すること。一見複雑な問題を、少数の主要変数に還元すること。変数の振る舞いから、問題の本質をつかまえ、表現すること。言うのはカンタンだが、やるのは難しい。パターン化って言い換えてもいいかもね。

 わが息子は、いま九九で四苦八苦しているところ。高校ぐらいにきっと言い出すはず→「なんで役に立たない数学を勉強しなきゃならないの?」…そのときは、本書と、「生き抜くための数学入門」、さらに「その数学が戦略を決める」を渡すつもり。

 その前に、一緒に「NUMB3RS」を観ようか。

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コメント

さすが、すばらしい紹介です。
自分も最近この本を読んだのですが、こんだけのoutputが出せない。
ただ、私としては、訳者後書に「意見に同意する訳ではないが」の但し書き付きで確率本を紹介されていた小島寛之氏の「数学でつまずくのなぜか」も、お勧めします、但し、子供にではなく、親か、親に教える立場の人に。
学会を離れて在野の数学者(と言って良いのか、受験参考書とか塾の講師)を長年やっていた著者は、現在、経済学者に転身していますが、その原点の子供達との交流?から、(ご自身の)数学観に迫った内容になっています。『数学は子供(私)たち自身の中にある』という発想は新鮮です。
著者はすべて言い切ったみたいですが、数学科出身者としては、後半の1/3、数論の辺りは難易度が高すぎるので、共著でもっと語った方が良いかなと思います。

投稿: 金さん | 2008.06.16 10:28

自分の立場を書くのを忘れてました。
『数学は役には立つが、それだけじゃあない。』
世界最大のゲームでもあると思ってます。ガロアやラマヌジャン以外でも命懸けで取り組んでる人(天才)がこんなに多いジャンルって、他に無いんじゃないでしょうか(株式市場?天才の器が違うように思います)。
なので、チャイティン『メタマス!』もいいです。

それと、ついでで、すみません、「サイト内検索」が機能していないようなんですが。デザインを変えられました?それとも何らかの上限に当たられたのでしょうか。

投稿: 金さん | 2008.06.16 12:50

すみません、「サイト内検索」動いてました。私のマシンが遅かっただけみたいです。失礼しました。

投稿: 金さん | 2008.06.16 12:54

>> 金さんさん

オススメありがとうございます。

「数学でつまずくのはなぜか」は、そんなに良い本なのですか…
小飼弾さんレビューを読んだときはピンと来なかったのですが、
これを機会に手にしてみますね。

  > 「数学は子供(私)たち自身の中にある」

この発想は、この言葉だけからでも広がります。
数学の本質は「青い鳥」なのかもしれませんね。

  > 天才がこんなに多いジャンルって、他に無いんじゃないでしょうか

激しく同意ッす!
むしろ、天才の血を吸って数学は変容し拡大していったんじゃぁないかと。
フツーの学問、例えば経済学なら秀才程度で「進歩」するでしょうが、
数学は天才、しかも超のつく人が必要だと思います。

投稿: Dain | 2008.06.16 22:26

天才たちがタイムシフト、オフライン、サブマリンと色んな方法で参戦してきているので、面白いです。
最新の結果が実は、ガウスやリーマンの原稿に書いてあったり。
最近は賞も増えて、ノルウェー政府のアーベル賞は毎年一人に1億です。

小島氏の本を薦めるのは、塾や受験参考書(『高校への数学』!)を書いてきて、最近よく目にするGiftedの人達とは別の視点で、『数学の理解』について長く考えてきた人だからです。
一応、小島氏のぶろぐも(雑談も多いのですが)、面白いです。
終わった連載物:小島寛之の「環境と経済と幸福の関係」 | WIRED VISION
個人ブログ:hiroyukikojimaの日記
この本も紹介されています。

投稿: 金さん | 2008.06.17 11:48

>> 金さんさん


はい、「数学で犯罪を…」を読もうと思ったのは、小飼弾さん経由で「hiroyukikojimaの日記」を知ったのがきっかけです。
連載エッセイをいくつか読みましたが、思考ストレッチのようですね。もっとswing(トンデモともいう)してもいいんじゃぁないかと。

まずは、「数学でつまずくのはなぜか」から手にしてみます。

投稿: Dain | 2008.06.17 22:20

こういった面白い本もあるんですね。私の友達でパチンコで家庭崩壊したひとがいまして。TVで「2万円投資して10回に一回8000円のリターンがあるかないか」というのをみて目が覚めたそうです。もうすでにいくらつぎこんだかわからないくらいだったとのこと。逆に通帳や家計の数字がわかっていないからといえるのかも。
どんなにすばらしい愛も、経済の裏打ちがなければ色あせていくんだなとおもいました。お薦めの本、読んでみます。

投稿: なんとなくを数値化すると自分が見える | 2008.06.18 10:27

>> なんとなくを数値化すると自分が見える さん

ああ、ドンピシャなところがありますぞ。

13章に、数学を使ってカジノで大儲けする話があります。いかに胴元が負けないかが「数学的に証明」されています。その一方で、ルールの偏差により、この証明を逆転させる手法も解説されています。

パチンコや競馬は、いわば国家が胴元なので、勝つためには相当の「運」が必要かと。

投稿: Dain | 2008.06.20 00:49

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受信: 2008.10.05 20:50

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