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ガチ・ファンタジー「闇の戦い」

 どこか歪んだ小説ばかり好んで手にするのは、わたしが傾いでいるから。だから、こういう「王道」を読むと、わたしの歪み具合が浮き彫りにされて興味深い。

 「光と闇の戦い」というと陳腐かもしれないが、初版は30年前。今以上に言葉が力を得ていた時代だ。スレてないときに読んだなら、ハートを掴まれるに違いない。児童書なので、エロなし/伏線ミエミエという反面、ずばりストレートな面白さを堪能した。ストーリーはこんなカンジ――

―― 11歳の誕生日に「古老」としての不思議な力に目覚めたウィルは「光」と「闇」の戦いに巻き込まれていく。アーサー王伝説を下敷きに、「光」の使者となったウィルが、仲間たちとともに「闇」の脅威と戦う ――

 日常生活と異世界との交錯が面白い。「魔法」をどうやって体現させるか? 例えば、「ベルガリアード物語」や「ザンス」のように異世界をつくりあげてしまえば解決できる。しかし本書では、「目覚める前の普通の人間世界」がベースになっているため、語り手は「つじつま」を合わせる必要がでてくる。

 さらに、異世界だと思っていたところは、実は遠い過去だった(ということはつまり、魔法とは科学じゃねーか ! と膝を打つ)。魔法は「場所」や「血縁」と強い関係性を持ち、本来の名前で呼ぶことで影響力を与えられる。正しいスイッチを入れることで力を行使することと一緒。魔法と見分けが付かないぐらい、充分に発達した科学技術を見せ付けられる気分(←これはひねたオトナ読み)。

 どうして現実の世界を下地にしたのだろうか… と思っていると後半でハッとさせられる。ウェールズにそれこそ八百万とあるアーサー王伝説とリンクさせるため。あいにくと極東の島国とは無縁だけど、ウェールズやイングランドの子どもたちはワクワクしながら読んだだろうなー。

 アーサー王伝説って何? という方のために、ちょっと解説。モデルとなった人物はいるが、物語のほとんどがフィクションという人物。詳しくは[Wikipedia]へ。

ユーサーの王の子アーサーは、生まれてすぐに魔術師マーリンによって騎士エクターに預けられ、育てられる。十五の時に、鉄床に刺さった不思議な剣を抜き取るのに成功し、認められて王となる。王は信仰心あつい武勇と礼節の人で、よりすぐりの騎士たちを集めた円卓を誇っていたが、王妃グイネヴィアは騎士ランスロットと恋に落ち、王を裏切る。これがきっかけとなって大戦争が起こり、王は甥にあたるモードレッドによって重傷を負わされ、女たちに神秘の島アヴァロンへ船で運ばれ、姿を消す。

アーサーは「かつていまし、また来るべき王」と呼ばれ、祖国が必要とする時に再び現れて黄金時代を築くとされている。「ペントラゴン」とは「竜頭」を意味し、イギリスが危機にある時に最高権力を与えられる族長(王)を指す。ユーサーとアーサーはともにペンドラゴン。

 二元論は単純でいいねーと斜めに読んでいると、人の要素、上位魔法(魔法を定義する魔法)が出てきて多層的になる仕掛け。ラストを決定付ける「人の判断」「人の絆」「人の記憶」も、科学技術と対峙した場合のメタファーとして読むと面白い(一行たりとも示唆しちゃいないけどね)。
闇の戦い1闇の戦い2闇の戦い3闇の戦い4

 もの足りねぇ ! という方は、「ベルガリアード物語」をどうぞ。おっと、ハリポタなんてオススメしないでね、ファンタジー指南役の嫁さんに釘さされてるので→「あんなものより前に読むべきものがいっぱいあるでしょー」。次はバーティミアスかな。

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コメント

ファンタジーといえばエターナルチャンピオンシリーズはどうでしょう?血を浴びて哄笑する皇子様が主人公だなんて、今時でも中々無いと思います。

一昔前はエルリックといえばエターナルチャンピオンだったんですが、今検索すると鋼錬ばかりでてきますね。海外のファンサブでは日本人に名前を盗まれたと一部で騒がれたりしました。FFなどの和製ファンタジーに与えた影響は多大なものがあると思うので外せない存在だと思います。新装版でシリーズが再刊されているので今では手軽に読めます、未読なら是非。

投稿: jackal | 2008.01.23 12:06

>> jackal さん

 マイケル・ムアコックのやつですね、ファンタジー指南役の嫁さん曰く、
 「読むとダークな気分に浸れるよ~」
 とのことなのでワクワクしながら読むぞリストに入れています


投稿: Dain | 2008.01.24 01:40

Jackalさんもおっしゃっているように、ファンタジー好きとしてはエターナルチャンピオンシリーズは読んでおきたいシリーズですね。
これぞダークファンタジーの傑作といえるでしょう。
できれば天野喜孝がイラストを描いていた旧版をオススメしたいです。ムアコックが依頼するだけあって、イメージにぴったりです。

それとベルガリアード物語を読んだのであれば、そのままエレニア記(続、タムール記)もオススメです。
こちらもベルガリアード/マロリオン物語と同じように新装版が早川から出ているので手軽に入手できるはずです。

LOTR、ハリー・ポッターによるファンタジーブームのお陰で、随分と絶版した海外ファンタジーが新装版発売するのはうれしい限り。いい時代になったものです。

今回紹介された闇の戦いは書店で見たものの、手付かずでしたのでこれを機に読んでみようと思います。

投稿: もっちょ | 2008.01.24 12:56

わりと最近のものになりますが「ルーンの子供たち」というシリーズがなかなか面白かったです。
韓国人の作家が書いたもので、テイルズウィーバーというネトゲの原作本らしいのですが、アニメっぽい部分はあまりなくて普通のファンタジーとして楽しめました。

第一部はうまく纏まったのですが、現在続刊中の第二部がちょっとgdgdになりそうなので、第一部だけオススメしておきますw

投稿: ririmu | 2008.01.24 14:45

 こんにちは。いつも興味深く参考にさせていただいています。こちらで紹介されていた「ベルガリアード物語」、現在2巻目です。
 さて、ファンタジーであれば、今ひとつ知名度の低い作品ですがハンス・ベンマン著「石と笛」はいかがでしょうか。痛い思い(山羊足になったり、石像にされたり、太陽恐怖症になったり)をしても「経験から成長すること」が身につくことの難しさを遺憾なく表現してくれる主人公と、人間より遙かに生き生きと描かれる動物達が、非常に魅力的な作品だと思います。

余談ですが、「草原で馬と共に生きる」種族はモンゴル系かネイティブ・アメリカン系のデザインが多いような気がします。全然異なる描かれ方をした作品も読んでみたい・・・。

投稿: zemukuripu | 2008.01.24 20:27

はじめまして。いつも参考にさせていただいています。ご存知かもしれませんが、このシリーズには「コーンウォールの聖杯」という前日譚があります。版権の関係かこれだけ学研からの刊行で長らく絶版でしたが、数年前に改訳復刊しています。図書館で司書さんに「こっちを先に読むともっと面白いと思うよ」と教えてもらったのを思い出しました。

投稿: KURATA Atsushi | 2008.01.24 23:09

ファンタジーは嫁さんが大量に読み込んでいるので、「次はコレがいい」「これ読んでおかないと!」と次々とオススメを喰らっている次第です

  ダレン・シャン
  http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2005/03/post_3.html

  シルバーチャイルド
  http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/08/post_c50d.html

  西の善き魔女
  http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/01/post_103d.html

  ベルガリアード物語
  http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/03/ff2_7671.html

で、現在は「バーティミアス」「炎と氷の歌」「エルリックサーガ」をオススメされてます


>> もっちょさん

 オススメありがとうございます

 マロリオン、ベルガラス、ポルガラ、エレニア、タムールは、
 嫁さんが全読しています…で、一言
 「まーまー面白いけれど、ベルガリアードは超えてない」
 なので、デイヴィッド・エディングスは手控えしてます


>> ririmu さん

 「ルーンの子供たち」は知りませんでした
 さっそく指南役の嫁さんに聞いてみたところ、「名前だけ…」なので
 ポイント高し!評判を漁ってみますね


>> zemukuripu さん

 「石と笛」は知りませんでした、オススメありがとうございます
 余談のほうの「草原で馬と共に生きる」は、ファンタジーではないのですが、
 コーマック・マッカーシーの国境三部作を思い出しました
 なかでも「すべての美しい馬」は、スゴいです
 (ファンタジーではなく、小説です為念)


>> KURATA Atsushi さん

 「コーンウォールの聖杯」で活躍した三人兄妹は、
 「闇の戦い」の2巻目から出てきます
 話のつながりからすると、「コーンウォール」を先に読んだほうが
 いいですねー


投稿: Dain | 2008.01.25 00:26

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