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「ワインバーグの文章読本」で始めた7つの習慣

ワインバーグの文章読本 ワインバーグのライティング指南!(ここは驚くところ!あのワインバーグ翁だよ)

 文章読本とあるが、コラム・エッセイのようなものではなく、本一冊を書き上げることが目的。自分のテーマを持ってる人は、本書を使うことで一冊書けるだろう。

 ただし、いかにもワインバーグ本なので、使えるアイディアや視点は埋まっている。ゴシックで強調されるポイントもあるが、もっと重要な点がサラリと書いてある罠。ワインバーグ自身、自著を「金脈」ならぬ「鉱脈」と紹介する。金剛石はないかもしれないが、掘れば必ず石炭がある。これを「自然石」と名付けている。

 有用なアイディア、視点、フレーズ ―― いわゆる「ネタ」―― 自然石を拾ってくること、積み上げることが、いわゆる「本を書く」ことになる。自然石を積み上げるから、「自然石構築法」と訳されている。

 本書は、第1章「文章を書くために、一番大切なこと」から、第20章「完成した後は?」の20章にわたって自然石構築法が紹介されている。興味深い書き出し、絶妙な引用、分かりやすい構成から、まさに本書がこの手法で書かれていることが分かる。

 このエントリでは、その鉱脈から習慣にしたいものを選び、ご紹介。

■習慣1 文章を書くために一番大切なこと

 いきなり結論、それは「興味のないことについて、書こうと思うな」(←超重要)。

 これまで学校では、違うことを教えてきた→「知っていることについて、書きなさい」でもって傍らに小さくこうある「…あなたの興味に関係なく」ってね。著者の過去話をネタに、「興味のないことについて書くことがいかに苦痛か」が身にしみる。

 自分でも可笑しいのだが、学校で出される「読書感想文」がキライだった。憎んでいたといってもいい。なにゆえ自分が興味をもてない「課題図書」を読まされて、あまつさえ「かんそう」を書かねばならないのか!―― と憤っていたわたしが、こんなblogをやってるなんて、なんたる皮肉。同じ苦しみを味わった人なら分かる。だから、「興味のあることを書く」が正解。

 しかし、文章を書くことが生業となってしまうと、あやしくなってくる。興味のあるなしにかかわらず、「読者のニーズ」「編集者の要望」を満たすために駄文製造器と化してしまわないように。

たいてい文章を書こうと思うのは、自分の知らない何かがあるからだ。わたしにとって、ある題材について書くことは、それについて知る最良の手段である。だいいち興味がなければ、知りたいと思うはずもない。

■習慣2 アイディアに対する態度

 「○○について書くから、手ごろなネタ・アイディアを探そう」と思い立っても、おいそれと集まらない。ネットからの切り張りは精神的に「も」器用でないと続けられない。著者はこれを、壁をつくるための自然石探しに喩える。お目当ての自然石が、ちょうどうまい具合に野原に転がってるなんてこと、ぶっちゃけありえない。

 どうするか?

 そのテーマについて、いちどに全部のアイディアを求めずに、普段からアイディアを貯めるように心がけろという。いつかどこかで何かの壁になりそうな自然石はないか、目を光らせて歩き回り、見つけたら手持ちの「山」に加えていく。

 この態度は、「アイディアのつくり方」で身に付けている。アイディアを「集める」のと「暖める」ことは別物で、意識してこれを行うことが肝心(わたしの場合は、ノートという外部記憶に頼っている)。

 アイディアが足りなくなったり、逆に多すぎて対処できなくなったら、どうするか?

 アイディアの数が問題なのではなく、アイディアの数に対する書き手の反応こそ目を向けるべきだそうな。足りなければ探せばいいし、多すぎたら別の山に振り分ければいい。ライターズ・ブロックの行き詰まった感覚は、アイディアの数ではなく、それどう感じているかに拠るのだから。だから、アイディアの多寡に喜憂するのではなく、アイディアの数を「ちょうどよく」する作業を地道に行え、という。

■習慣3 写して学べ

 ここでいう「自然石」――ネタ・アイディアは、誰がどう見ても立派な自然石であるわけではない。秘密は石そのものではなく、石への反応であるという。つまり、自然石を持ち帰るべき/放っておこうとするわたしの感情的な反応が重要なんだって。

 自然石に感じるエネルギーを認識するよい方法は、以下のとおり。「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」で学んだ[ 抜き書きテクニック ]に酷似している。このテクは続けているが、言葉や文章の質感を養うのに、かなり有用。

  1. 自分がすばらしいと思う文章のサンプルを選ぶ。そのサンプルを一語一語飛ばさず書き写す
  2. 執筆日記――この課題を聞いたときどう思ったか。写しながら何を考えたか。どの箇所で何らかの感情的反応に気づいたか。それはどのようなものだったか。その箇所を見直して、どうしてその瞬間にそのように反応したのか、理由を考えてみよう
  3. 写すことによって何を学んだか
  4. 同じ文章を書き写す。二回目に学んだことを書き写す
  5. 日誌に書いたことを見直してみる。自分の声、自分の感情の表れ方は、写した文章の声によってどのような影響を受けたか

■習慣4 すべてのライターにとって最も大切な本

 ズバリ、すべてのライターにとって一番大切な本がある。実際、本書の目次を見て一番楽しみにしていたのはここであり、本書を読み終わった後も「完全にモノにすると誓った」習慣もここ。ワイバーグ翁はこう言っている――

すべてのライター必携の書、絶対不可欠なある本について説明しようと思う。
急いで!このチャンスを逃すなかれ、メモの用意をして!
準備オーケー? よし、じゃぁ教えよう。

文章を書くために必要な最も大切な本は、
いまメモをとるために用意した白紙のノート、
または紙の切れ端、またはカード、または何か近代的な電子記憶装置である

 さらに翁は追い打ちをかける。「その白紙のノート/紙の切れ端/電子記憶装置」を手にして準備ができるまでに、どれぐらい時間がかかったかに答えよという。5秒以上かかったならば見込み薄で、手に取りさえしなかったならば自然石構築法のことは忘れちまえとも言う。

 自然石に反応したら5秒以内にメモする、これ絶対。

■習慣5 書き出しのマンネリズム

 エントリのタイトル名なんてまさにそう。「○○する7つの方法」だとか「なぜ△△は××なのか?」なんて、ありきたりな題名をつけたがる。以下の書き出し例は、マンネリ化した状況を切り替えるのに役立つ(はず)。

  1. 質問から始める どれぐらいを安全だと感じるか?
  2. 「あなた」から始める あなたは段階評価を使って安全性に関する感覚を数値化できる
  3. 「わたし」から始める わたしは自分の感覚を量的に表現できる(この文にはほとんどエネルギーを感じない)
  4. 「なぜ」、すなわち動機から始める 会議で何を言っても安全だと感じるときもある
  5. 同じく動機から始めるが、否定的な表現にする ばかみたいに恐怖を感じる会議もある
  6. 「~とき」から始める 会議がうまくいかないとき、よくある問題は安全性の欠如である
  7. 「もし」から始める もし会議が安全ではないと感じたら、どうして自分の意見など言えるだろうか
  8. 「誰でも」から始める 誰でも会議について思うことはある
  9. 「誰も」から始める 誰もひどい会議の犠牲になりたくはない
  10. 引用から始める 「言うべきことがあるのに、誰も聞こうとしない」ロニーがこぼした
  11. お好みの書き出しで 「いやあ、こんな会議は見たことがない」
 扇情的なキャッチもアリだし、「必ず」「絶対」をくっつけることで、自分を追い込むのも可。ただし両刃の剣であることをお忘れなく。

■習慣6 一割削減の原則

 まさにわたし向けのルール、ダラダラ書かない!書き終えたら無条件に一割削るッ!(翁は1/3まで削れと…んな無茶な)

■習慣7 執筆日誌をつける

 自分だけの執筆日誌を始めよ(あるいは続けよ)という。心地のいい、きちんと装丁された日誌を買い求め、手にしっくりとなじむ筆記用具を準備せよという。そのための費用をケチるなと。そんなところで倹約精神を使うのならば、作家としての人生も同じぐらいの価値がないと認めているようなものなんだってー

 スケジュール手帳+αは書いてきたけれど、もうちょっと良い手帳を準備した。「書いたもの」はこのblogに垂れ流している。書くという行為は、そのまま書いたものにつながっているから―― が、もう少し視点を上げて、ネット界隈+αの文章を、この手帳でコントロールしてみよう。

 この他にも、

  • 単語/フレーズ/文章の盗み方とローンダリングの仕方
  • 記憶の引き金になるものを見つけろ
  • アウトラインプロセッサで自然石を入れ替える(節を再構成する)
  • 完璧を期するな、ただ書き上げろ
  • いい椅子を使え
 といった細やかな(お節介?)アドバイスが続く。ワイバーグの本なので、堀り手によって得られる鉱物は違ってくる。読了すると、まとまったものが書けそうな気がしてくる、不思議な一冊。

■おまけ

 ワインバーグ翁が文章を書く上でよく利用しているサイトは、プロジェクト・グーテンベルグの他に、セントキャサリン大学図書館のサイトだそうな。引用文を豊富に集めているので愛用しているとのこと。ただし、p.76にあるURLは間違っているみたいだ。

  誤? (does not exist)
  http://www.stkate.edu/lubrary/guides/speeches.html

  (たぶん)正
  http://library.stkate.edu/guides/speeches.html

 p.230で紹介される、フォーラムSHAPEは[ここ]。「効率的に行われる人間活動としてのソフトウェア」(Software as a Human Activity Practiced Effectively)フォーラムで、自然石がゴロゴロしているそうな。ワインバーグ翁の雄姿を拝むことができる。あたりまえっちゃーあたりまえなんだけど、サンタクロース並のじいさんになってる

 すげぇ余談だが、翁のSF小説は「The Aremac Project」というお題で、マインドリーディング、FBI、テロリズムが登場するスリル溢れるストーリーだそうな。そしてソフトウェア開発プロジェクトの話(above all it really is a story about a software development project)だという。よ、読みたくねーッ!

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「プロジェクト・ブック」はスゴ本

プロジェクトブック 建築デザイナー向けだが、システム屋のわたしにも効果大のスゴ本。

 本書は、建築タイポロジーの解説ではないし、建築デザイン・テクニック集でもない。仮に本書が建築デザインについての形式論・類型論だったなら、わたしにとって、何の役にも立たないだろう。

 しかし、デザイナーとしての才能やテクニックに関係なく、つくるキモチに焦点を当てている。たとえば、場のつくりかた、発意の仕方、他者との共有方法を理解することで、どういう瞬間にプロジェクトが「まわって」いるかを感じとれる。いちいち具体的で、かつ、そのままITプロジェクトにハマる。

 デザインプロジェクトに効く63のキーワードと、現場の会話ログを追いかけるうちに、プロジェクトを「まわす」のに建築もシステムも大差なく見えてくる。つくる「モノ」は違えども、つくる「コト」は同じなのだから。

■1 場所をつくる

 大きなテーブル、広い壁、ライブラリー、気持ちのいい椅子、逃げ場が大原則。

 テーブルは全員で囲めるぐらい大きいやつを。広い壁は知識の共有のため、椅子は最も接触する時間が長いから最高のものにすべきだという。そして、「片づけるな!」とクギを刺す。キレイにしてしまうと、前回を思い出す暖機運転が必要だからだ。

■2 キャスティングをする

 プロジェクトの初期段階で風呂敷を広げて、性別、年齢、特性など、さまざまなキャストを思い浮かべろ、という。そして、(ここがスゴいところ)キャスティングからプロジェクトを逆定義すべし、と言い切る。つまり、人でプロジェクトを描くわけだ。

 キャストどおりに人を集めるかどうかは別として、プロジェクトを押さえるのに良い方法だと思う。プロジェクトをロールプレイング・ゲームに喩える「仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本」も同じココロ。

■3 施主を読む

 システム屋にとっては「顧客」「お客さま」に相当するのが「施主」、つまり建築主だね。どれぐらい似ているかは、以下の引用で分かる。

プロジェクトの始まりにおいては、施主自身、自分の考えていることを充分に理解していない場合が多い。地図を読むのと同様に、施主を読まねばならない。施主が持っているイメージは断片的で、矛盾しており、不鮮明である。

 だからこそ、インタビューを通じて深い対話が不可欠だという。反論・意見は慎んで、決して結論を急がない、ブレインストーミングのようなミーティングが必要だという。「施主を読む」感覚は大事にしたい。施主の気持ちの水位を高め、ひとつのプロジェクトを一緒にやっているという「共犯関係」へ持ち込みたいからだ

■4 ブレインストーミングの10か条

 「批判しない」、「時間を区切る」といったルールはアタリマエかもしれないが、なじみのない原則が目を引いた。「視線を泳がせろ」や「メモは取るな」というルール。ブレストは歩きまわって意識を切替ながらすべきだし、メモは記録係(トラッカーと呼ぶ)にまかせて集中しろ、という。見出しだけ引用する。

  1. 批判しない
  2. 誰でもいい
  3. かぶってもいい
  4. ゴールをクリアに
  5. 時間を区切る
  6. 場所が大事
  7. ポジショニング
  8. とにかくしゃべれ
  9. 視線を泳がせろ
  10. メモは取るな  ←■6 を参照

■5 ホワイトボード重要

 ホワイトボードの重要さはどんなに語っても尽くせない。飛び回る問題とアイディアをつかまえられるのはホワイトボードだし、誰かのフィードバックを共有できるのはホワイトボードだけだ。

 議論を「あなたvsわたし」の構図から、「問題vsあなた+わたし」にするツールとして、ホワイトボードよりも強力なものを知らない。「書けないマーカーは捨てろ!」の絶叫には激しく同意する。

■6 トラッカー重要

 この存在は知らなかった!役割はPMチームやPMOが担うのだろう。プロジェクト全体を見渡しながら、現場で生まれるあらゆる情報の軌跡を追い、記録していく仕事。レビュー報告書だとか進捗報告といったテンプレート的なドキュメントはあるが、構造づけて整理し、いつでも再利用できるようにするところは注目すべき。メタレベルな視点は、現場にもまれているプレイング・マネージャには不可能だろう。

トラッカーをチームに加えよう。トラッカーは決して後ろを振り返るための仕事ではなく、前進するための推進力を生み出す仕事であると心得よ。

■7 ブランクパック手法

 プロトタイピングの紹介で知った方法。プログラミングの世界とは異なり、建築デザインのプロトタイピングでは、「そのプロトタイプ」の構成要素を共有する術がない(リポジトリがないからね)。

 そこで、ブランクパックの登場。ブランクパックとは、雑誌の編集部でつくる台割の考え方を応用したもので、プロジェクトを構造や外観、原価計算等の要素で構成された1冊の本をつくる。資料、統計データ、分析、アイディアをどんどんそこに差し込んでいき、コピーをとってメンバーで共有する。厚くなりすぎたら取捨選択して、つくりなおす(繰り返し)。こうすることで、紙ベースで全体像を把握することができる。

■8 建築デザイナーのプロトタイピング

 システム開発での教科書的な「プロトタイピング」とずいぶん違うが、わたしが経験したプロトタイピングそのものが書いてあって面白い。

 プロトタイプの本質は「作っては壊す」の繰り返し。再利用しつつ肉付け、なんてことはない。いわば、作り直すことの練習をしているようなもの。その中から、デッサンによって選ばれた線のように機能・デザインが採用されていった。

■9 Synchronicity

 偶然にしてはできすぎているが、心に届いたもう一冊の本「イノベーションの神話」と同じ論が展開されていた。まずは「イノベーションの神話」より。

  問題を20日で解決しなければならないとしたら、
  私は19日かけてその問題を定義する

  アインシュタイン

 次に、本書では「視点を絞る」という見出しでこうある。

  何が問題なのか?
  そのことが明確に定義できれば、
  デザインは8割方終了したに等しい

  デーン・トゥイッチェル

 世の中の事象はあまりに多種多様複雑を極めていて、問い自体を絞ることが、デザインの重要なプロセスだという。強度の高い問題ができれば、デザインも物理学も同じということか。

■10 アブダクション(abduction)という手法

 すごいやり方。前提にある問題群を一挙に解消できるようなフレームを、突然思いついてしまう瞬間がある。このとき、問題は解決されるといより、新たな形で再発見されている。帰納(induction)でも演繹(deduction)とも違う推論形式。真髄はこれ↓

  1. 驚くべきCがある
  2. もしAが真なら、Cは当然のことだ
  3. ゆえに、Aが真ではないかと考える理由がある

 例えばヒマラヤ山頂で大量の化石が発見されたとき(C)、事実を説明するためにここは海だったという仮説(A)を立てると、一挙に事態が了解される。「経験をいくら集めても理論は生まれない」とアインシュタインは言ったそうな。

 天才の発想やね。

 分析的なアプローチから「創造」に至るダイナミズムは生まれない、というのが本書の主張。創造を「モノ」として切り出すのではなく、身体・環境・時間を含む「コト」として扱うことを目指している。

 ケーススタディとして、実際のコンセプトデザインのミーティングのログを読む。恐ろしいほどアバウトな言葉で緻密に語っている。手も目もクチもいそがしい、やかましい。

 ひとつの建物をデザインする際、人工衛星の視点→鳥の目(バードビュー)→ご近所との関連性→近隣マンションの視線→道路に面した部分という垂直・水平視線移動がスゴい。さらに、家族に高齢者がいることから、「彼が死んだら、生活空間はこう再構築される」と真顔で語る冷徹さもスゴい。

 このミーティングログ、えらく読みにくいレイアウトなんだけど、ぜひ目を通してほしい。プロジェクトが血肉の通った生々しいものとして見えてくるはずだ。そしてラストのページで、あれだけモメにモメ、跳躍と七転八倒したデザインの完成形を目にするとき、それまでの会話群をいっぺんに了解するだろう。

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