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プロジェクトを成功させる魔法の言葉

 あいにく銀の弾丸の持ち合わせはないが、うまくいくプロジェクトでよく使われていた言葉は確かにある。耳にしたときは聞き流していてた言葉を、この本は思い出させてくれた。ここでは、そんな「魔法の言葉」を紹介する。

目標を突破する実践プロジェクトマネジメント ネタ元は「目標を突破する実践プロジェクトマネジメント」。ふつう、図書館で読んだ本はそれっきりだが、こいつは買って周りにばら撒く。薄くて分かりやすくて、すぐにやってみようという気にさせるところがいい。

* * *

■ もし、問題があるとすれば、それは何ですか?

 朝会や進捗会議で「何か問題はありませんか?」という質問はよくするしされる。けれども答えはいつも決まっている→「特にありません」。でもって、不具合が起きると、「あのとき聞いたのにッ」←→「こうなるとは思ってなかった」となる。

 身に覚えない?

 これを、冒頭の質問にしてみると、アラ不思議、いくらでも出てくる。「問題ない?」には無反応だったのが、「これから問題が起きるなら」、あるいは「いま気づいていない不具合があるなら」と言い換えると、様々な「問題」を教えてくれる。

 つまり、「問題ありませんか?」という質問の裏には「潜在リスクを洗い出してください」がある。いっぽうで、「特にありません」という答えの裏には、「顕在化している不都合な点はありません」がある。両者のギャップを埋めるのが、この質問というわけ。

 応用:「この対応をやったことで、別のリスクが発生するならば、それは何だろう? それはどうすれば"見える"ようになるだろう?」。デグレード要因の洗い出しの場では、必ずこの質問をするようにしている。

■ あと何日?

 これまた進捗会議で「進捗率90%です」とある。「そーか、ほとんど完了しているんだなー」と思ったら要注意。残り10%が全然進まないのよ。次回も次々回も90%のまま。「進捗率」は、「予算を消化した割合」なのか「書き上げた行数」なのか、人によってさまざまだったりする

 身に覚えない?

 これを、「あと何日?」で問い直す。スケジュールの予実の割合ではなく、その作業を終わらせるためにあと何日かかるか? と聞く。問うているのは、決して、スケジュール上の完了予定日マイナス消化日数ではない←これ超重要。

 すると、答えるほうはこうクるはずだ「○○さえなければ、あと○日です」、あるいは「△△が間に合えば、あと△日で終われます」ってね。

 作業開始の初日から完了まで、「あと何日」で管理する。経過した時間は1日だからといって、あと○日マイナス一日というわけではないことを、常に意識しながら進める。

 例えば、10日のタスクがある。開始5日の時点で「あと7日かかる」ことが分かれば、2日遅れることがこの時点で分かる。だから手を打たなければならない。あったりまえじゃん、と言うなかれ。進捗率ならこう報告するはずだ→「若干遅れ気味ですが、進捗率は50%です」ってね!

  □□□□□□□□□□  10日のタスク

  ■■■■■◇◇◇◇◇◇◇ 開始5日目での進捗(■は消化済み、あと◇かかる)
                 ↑↑
              ここを見るべし

 ここで見るべきは、消化済みの■ではない。進捗率50%と言いたくなるのは■に着目した場合だ。終わったものに目を向けるのではなく、完了までにどれぐらいかかるか? こそが本来管理されるべき対象。だから、■ではなく、◇に目を向ける、「あと何日?」という質問でねっ。「先手管理」はマネジメントの肝なんだが、具体的にはこの質問が相当するわけだ。

■ 目的は何ですか? 成果物は何ですか? 成功基準は何ですか?

 プロジェクトが混乱する原因の最たるものは、たった一つ→「目標が明確でない」。雀の涙の予算や、二転三転する仕様、尻だけは決まっているスケジュール、どいつもこいつも要因になりうるが、最大は「結局何のためのプロジェクトかハッキリしないままスタートしちゃっている俺ガイル」だろ?「プロジェクトのゴール」や「目標」というとピンとこないかもしれないが、お題の質問に言い換えると座りが良いかも。

 目的:「最大の儲けの実現」「圧倒的なブランドの確立」「業界で注目を浴びる人材を育て上げる」など、みんながワクワクするような、(かつ実現可能性のある)目的―― 何のためにこのプロジェクトがあるのか―― を出し合う。

 成果物:その目的達成のために、具体的に何を作るのか? という問い。「システム一式」、「納品物一式」にしてしまわないで、ブレークダウンする。

 成功基準:前2つの議論の中で、「それは何を達成したら、『成功した!』と言えるのだろう?」と言い換える。具体的に数字や行動で測定できるものを定義する。「利益率40%」でもいいし「社長から『よっしゃ、よくやった』と誉められる」でもいい。

 この、目的(Objectives)、成果物(Deliverables)、成功基準(Success Criteria)の頭を取って、ODSCというそうな。プロジェクトをODSCでデザインする。メンバーで出し合って共有するところがポイント

* * *

 ネタ元「目標を突破する実践プロジェクトマネジメント」はスゴ本。

 ゴールドラットの制約理論は「ゴール」読んだだけで知ったかぶっていた。あるいはクリティカル・チェーンは、PMBOK3で分かった気分になっていた…が、TOCを実践でどう適用していいのか分かっていなかった。本書はそいつを、徹底的に、肌感覚で分からせてくれる。しかも、『読んだらそのまま』使える仕掛けが施されている

 「山積み・山崩し」の肝や、「遅れは伝播するくせに、進みは伝わらないひみつ」、あるいは「サバ取りの極意」(←これは読んだ今日使った)といった、いま、わたしが必要とするネタばかり。納期に間に合わせるために無意識のうちにサバを読んでしまう(丸めてしまう/下駄履かせてしまう/バッファ入れてしまう)心理が、いかにプロジェクトを圧迫しているかがよーく分かる([ここ]にイラスト付きで紹介されている)。

 PMPとしてSI屋である自分の仕事を見るにつけ、かつて輝いてい見えた「開発手法」が色あせて見える。あ、ダメというつもりじゃないよ。開発手法に拘泥する、あるいは開発手法が成否を決めるといった発想から離れようとしている。RADだからよいとか、WaterFallだからダメといった議論が、過去のものになりつつある。

 つまり、「目標に向かって、いかにプロジェクトを運営していくか」という命題を達成するツールとして認識できるようになった。「コンピュータ・システム」を作るために、そのツールとして手法がある、というカンジが感覚として身についた。

 さらに、その上位にあるマネジメントの方法(の一つ)にTOCがあるのだなー、と理解できるようになった。山が開けた感じ。この感覚、PMBOK3読んだ人と共有したい。あるいは、これからPMの仕事する人にも伝えたい―― そういう一冊。

* * *

 以下自分用、P2Mをやってみるか。

  日本TOC推進協議会
  TOC-CCPM情報サイト

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ゆりさんから挑戦状を叩きつけられる→「けッBLかよ」鼻で笑って読む→気持ちが悪くなる→完敗(ごめん劇薬でした)

 わたしが知らない劇薬本は、ゆりさんが読んでいた

WELL うん、確かに最悪の読後感を味わえる、いろいろな意味で。わたしと同性(男)の感想を聞いてみたい一方で、異性、特に嫁さんには絶対に見せられない。この「嫁さんに見せられない逸品」はギャルゲ・アニメ・同人etcとシリーズ化できるぐらいあるが、本書はその頂点と相成った。

* * *

 萌えるシチュエーションはそれこそ千差万別で、ユーザーの数だけニーズがある。いっぽう、いかなる状況でも萌えられるというのは、パワーユーザーの資質だ。

 そうした思惑を粉砕してくれるのがこれ。突然世界が崩壊して、生き残ったのは男だけ(女は全滅、原因不明)。ウホッ、男だらけのジ・エンド・オブ・ザ・ワールドというやつ。「世界が終わる」はネタに困ったときの常套手法かもしれんが、だからといって女を殺すな、女を!(←この時点で、潜在読者の半分を作者自ら抹消している)。

 世界の終わりとボーイズ・ラブの相性はいいのか? あるいは、ノンケがゲイに目覚めるためには、世界を丸ごと一個を必要とするのか?

 いっぽう、読んでて面白いなぁ、としみじみ思ったのは、作者その人。いったいぜんたい、どんなつもりでこれ書いたのだろうか? こんな「セカイ」にせずとも、いくらでもBLできるだろうに。終末小説が書きたいから? 口に糊するため? 普通、小説は単品で存在するものとして、作者なんて属性の一つと思っているわたしにとって、顔を拝んでお話したい例外ができた。

 いそいで付け加えておくが、小説としてのデキは期待しないほうがいい。ハルマゲドンモノとしても恋愛モノ(?)としても破綻しているし、全てのオチは開始数頁で分かる。BLとしてスゴいのかどうか知らんが、とりあえずちんこ立ったといっておこう。監禁陵辱という萌えシチュになると、どうしても反応してしまう自分が憎い、憎いよ。いかなる状況でも萌えられるというのはパワーユーザーの証なんだ。ああ、自己嫌悪で気分が悪い、しかも読み終わってもついてくるよこの気持ち。

 本書の劇薬性について、ゆりさんが一言で喝破している。

何より怖いのは、これ読んで素直に「萌えました」っていう女性がいることじゃないかと。

 ああ、わかるよ、きっといるに違いないという確信が絶望に変わる。読んだ人なら同じ結論に至ってガクゼンとするかも。世の中には、氏賀Y太でないと抜けない人がいるように、本書を激しくオカズにする女がいる、きっといる。

 BL入門書としてどうかは… すまん熟練者に訊いてくれ。いわゆるBL本は本書が初体験なので(///)。

* * *

 さて、極限状況でのもう一つのテーマカニバリズムについては、ゆりさんは「ひかりごけ」(武田泰淳)を挙げている。人肉を犬の肉と偽るところなんて、むしろ「野火」(大岡昇平)を思い出した(もっともあれは「猿の肉」なんだが)。本当に餓えているときは、禁忌をめぐる対話なんてなされるべくもなく、喰える人とそうでない人に割れるだけのような気が。つまり、喰える人は躊躇しつつしっかり咀嚼するだろうし、できない人は完全に論破されてもできない(口に入れたら喰うぞ、泣きながら)

 あるいは、中途半端にこのテーマを取り入れて炎上した「マイナス」(沖さやか)を思い出す。単行本化にあたり削除された、『あの部分』よりも、むしろそういう性質の主人公にした書き手の方がスゴいね。「沖さやか」でピンとこなければ、「はるか17」の山崎さやか、と記しておこうか。

 このテーマも、ひと山できるぐらいあるが、最近読んだやつで「復讐する海」が良かった(レビューは[ここ])。劇薬小説というよりも徹夜小説、徹本というやつ、しかもノンフィクション。謹んでゆりさんに御礼仕る。

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「どんがらがん」は妙ちきりんなスゴ本

どんがらがん けったいな短編集、読むと不思議な気分になれる16編。ただし逸品だらけ、しかも、人によってイチオシが違ってくるという奇妙な作品集。

 … とはいっても展開が「あさっての方向。」だったり、読み手を韜晦するような難解なストーリーではない。むしろ、悲劇的なラストなのに思わずクスッと笑ってしまったり、日常的な会話から始まって「そこまで行くか!」と叫んでしまうほどトンでもない話へ転がっていったり。

 ミステリ、SF、ファンタジーのいずれの枠にも当てはまらない。実際、ヒューゴー賞、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞、世界幻想文学大賞の全てを短編で獲っているのは、あとにも先にもデイヴィッドスンしかないとのこと。

 最初の印象は、「残酷なO.ヘンリー」、「ユーモラスなレイ・ブラッドベリ」あるいは「ペダンティックなティプトリーJr.」だったが、進めるにつれ、そのスゴさに魅了されてくる。短編の名手だね、この人。収録作にある、

  • 「物は証言できない」(EQMM短編小悦コンテスト第一席受賞)
  • 「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」(ヒューゴー賞最優秀短編部門受賞)
  • 「ラホール駐屯地での出来事」(MWA賞最優秀短編部門受賞)

 などは、スゴ本ハンターなら要チェックの「賞」だろう。わたしのイチオシは冒頭の「ゴーレム」、出だしからオチまでの巧妙な展開と、絶妙な会話(重要!)、珍妙なプロットと読者との共有感のバランス具合、全てが完全な短編小説(perfect story)、良い小説の見本みたいなもの。ちなみに、「完璧な短編小説」、ミステリなら「妖魔の森の家」(ディクスン・カー)、文学なら「満願」(太宰治)が挙がる。

 ストーリーには一切触れない。いったいぜんたい、何の話なのかいぶかしげに頁を繰るのが読者の「特権」なんだから、惹かれた方は予備知識を排して手にしてみて欲しい。「ゴーレム」なら10頁、立ち読みできるゾ。

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 本書を知ったのは殊能将之氏のblog[参照]、氏の著書「ハサミ男」は予備知識ゼロで読み始め、ラストで心底ビックリさせられたなぁ… やっぱり面白い本書いてる人は、面白い本読んでるねッ。

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