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やわらかく心をえぐる「谷川俊太郎質問箱」

谷川俊太郎質問箱 [田村隆一の人生相談]のコメントで教えていただいて、読む。こんにゃくでペチン、ペチンと心臓を叩かれるように効いた。zemukuripu さん、よい本を教えていただき、ありがとうございます。

 生きてるかぎり必ずぶつかる問題や、どーでもいい(でも本人は切実な)悩みごとが盛りだくさん。そうした悩みを"谷川俊太郎"でフィルタリングすると、一編の詩に変化する。質問と回答がカチッと合わさる瞬間が気持ちいい、詩人一流の「おかしみ」が心地よい。そして、質問者の背後をじぃっと見つめる目が怖くない(なぜだろう)。

 ここの読者に一番役に立つかもしれない問答を引用する(というか、わたしのため)。

質問十三

彼女の機嫌を直すには
何がいちばん効果的ですか?
(まる 二十歳)


谷川さんの答

すぐ機嫌を直してもらおうとせずに、
あせらずゆっくり構えて
怒らせた原因が何か考える。
その原因が自分にあると思ったら、
相手の目を見て、マジであやまる。
言葉は少ないほうがいい、
何か具体的な行動で
謝罪の気持ちを伝えるほうがいい。
指つめたり、腹切ったりすると嫌がられると思うから、
好きな酒を断つとか、頭を剃るとか、
針金やビーズでアクセサリーを自作して贈るとか、
毎朝彼女の部屋のドアの前に、自分で摘んできた野花を置くとか、
メールに毎日一行ずつ誰かさんの詩を引用するとか、
いくらでもアイデアあるだろ、
あとは自分で考えろ、自分で!

 以下、質問だけ引用しておく、言葉の達人が何て回答するかは、ご自分の目でお確かめあれ。

質問三

人間をはじめ
多くの生物って左右対称ですけど
なんででしょう?
(しょうごろう 三十六歳)

質問十五

ふつうの言葉と、詩の言葉の
違いは何ですか?
(みく 三十四歳)

質問四

どうして、にんげんは死ぬの?
さえちゃんは、死ぬのはいやだよ
(こやまさえ 六歳)

質問四の回答には、はっとさせられて、少し泣いた、と告白しておく。

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コメント

今回の素敵な紹介、感謝です!寒がりな自分にはホッカイロをわけて頂いた有難さでした。

しかし同じ方が、グロ小説もたしなんでいるのが、自分にはとても不思議ですwエロだけなら、自分にも解るんですが。

投稿: th | 2007.11.21 15:59

>> th さん

ありがとうございます、いい本をオススメできて、わたしも嬉しいです。
中の人は「わたし」一人です。いくら好きでも牛丼ばかりだと飽きるのと一緒です。あるいは、カレーもいいけど、おせちもねってやつ(逆か)。

投稿: Dain | 2007.11.21 23:22

こどもから大人まで、幅広い人に受け入れられる「詩」の正体は実は、わかりやすさだということに気づかされました。例えば賢治中也って神みたいに崇め奉られているけど私はあまり好きではない(特に中也)。「雨ニモマケズ」なんて人間の美徳?理想?のように感じてる人が多いと思うんですけど、実は違う。今風で言えば、派遣切りされて仕事も無く住む家もなく途方に彷徨う人の絶望感を表すと言った方が「雨ニモ」の確信に近いかも。あ~話が脱線してしまった。

読者の質問と谷川さんの回答に一喜一憂できました。谷川さんがそれとな~~く質問者を諭している、いや怒っている所も面白かった。

あとがきの糸井重里さんとの対談も良かった。「どうしてこんなくだらない詩ばかり書くんですか」って質問に対する二人の回答にハラハラドキドキ。

言葉なんて信用できないとか、「意味を伝える」ってことじゃない「存在させたい」というのは、ま詩人だって哲学的なことも考えてますよということですかね。全否定でなく全肯定万歳というところでしょう。

また話が脱線しますが、わかりやすい詩=「解釈においてもうそれ以上分解できない」ということかも。で、「つぼみたくさん 堀明子著」という本にたどり着きました。9歳の少女の詩の世界が、言葉で表現されてはいますが、言葉ではないというか、、、。谷川さんの詩よりこの少女の詩の方が優れていると思う。少女の無垢ゆえの勝利かも。

投稿: シュークリーム | 2009.04.09 08:06

>>シュークリームさん

「わかりやすさ」は、重要だと思います。

現実があまりにフクザツなので、人はことばに――それも、「わかりやすい」ことばに――すがりついているのではないかと。本当かどうかは別として、内なる感情に上手に名付けができる人は、優秀な作家として扱われますね。

しかも、これは詩作や小説に限らないかと。昨今の「経済学」本をパラ見していると、「現状へのわかりやすい説明」こそ求められているのであって、あいまいさ・不明瞭なリスクは疎外されているようです。

投稿: Dain | 2009.04.10 00:10

レバレッジという金融用語って、私意味わからなったんですよね(泣)、でもわかりやすい説明記事(具体的な例)のおかげで得心できたことがありました。そんなのネットで検索すればいいじゃん?と言われればそれまでですけど(笑)。

Dainさんのアリストテレスの「詩学」の解釈を思い出しました。「ヒトにとってリアルは複雑~だから単純化する」っーことですね。「内なる感情に上手に名付けができる」←これいただきィ!

「つぼみたくさん」の堀明子さんはフェリス女学院超中高一貫校へ進学したくらいですので、もしかすると谷川さんやその系統の童話作家の絵本に影響を受けていた可能性があるかも。おそるべし谷川。

投稿: シュークリーム | 2009.04.10 06:42

>>シュークリームさん

ご指摘いただいた、「ヒトにとってリアルは複雑~だから単純化する」の通りです。
例えば、日本の不況について「分かりやすい」説明をする「経済学者」は、その表現の中で、あいまい性や不確実さを破棄・省略しています(その結果、分かりやすくなっているのですから)。では、その説明が一年後も説得力を持つかというと…

あいまいなものや、不確実なものを含んでいるのが、現実。それを、そのままの形で引き受けるウツワがないかぎり、そうした「経済学者」に振り回され続けることになるでしょう。いま、「経済学者」を喩えにだしましたが、「分かりやすさ」はあらゆる表現を評価する際のマジックワードになりそうです。

投稿: Dain | 2009.04.11 08:35

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不思議なことだが、僕がベートーヴェンから受ける感動は常にひとつのものに限られていた。 ぼくは生きられる。 自分の感動を僕はそのように言葉にすることしか出来なかった。 これが人間的なはげましでなくて何だろう。 芸術というものが、生とは違うひとつの秩序であ... [続きを読む]

受信: 2009.04.11 22:05

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