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ずっと米国のターン?「21世紀の国富論」

 要するにパソコンのパラダムシフトと、ITの次にくる基幹産業の話21世紀の国富論

 転換点は2015年ごろだそうな。そこで日本がどういう役割でいるかは、予想というよりも「エール」に近い。梅田望夫は胡散臭いが安易な悲観論も御免だね、という方に。

 グローバルスタンダード(死語)のお題目で、米国型経営や成果主義が日本に広がっているなか、著者は以下の切り口で問題点を挙げている。

 切り口1 : 内部留保の軽視
 切り口2 : ROEへの固執

 切り口1。資金調達の方法として、以下のルートがある。イノベーションを起こすための研究開発資金なら、1と2はあまりにもチャレンジングなので、普通3だろう。過去の蓄えでもって未来の食い扶持を創出するわけ。

   1. 金融機関から借金
   2. 株主調達
   3. 内部留保

 米国のベンチャーキャピタルは肥大化しているという。リスクを取って新しい技術を育てるのではなく、「買う」わけだ。そのため、調達ルートは銀行か株主で、内部留保は軽視される。

 切り口2。「企業は株主のもの」とばかりにROE(株主資本利益率)に固執し、企業としての目的が「数字」になってしまう。短期の「結果」を出すために、研究開発費を削り、新しいものがうみ出せなくなる。

 シリコンバレーは新しい基幹産業をうみ出す力を失っているという。ベンチャーキャピタルは大きくなりすぎており、2つの切り口から覗くと、合従連衡ゲームのようだ。

 わたしは既に「オールドタイプ」なんだろう。たとえば、マイクロソフトやgoogleの時価総額を聞かされる度に、ぱんぱんにふくらんだをイメージする。「ただの広告屋に賭けるにしては、身の丈あっていないよ」、と言うが早いが「googleの価値が分かっていない奴」というレッテルが貼られる。

 巨大企業を腐したいわけじゃない。IT屋の端くれであるにもかかわらず、「パソコン」に違和感を感じているから。

 もっと詳しく説明するね。

 もちろん、わたしにとってパソコンやネットは不可欠なものだし、現代社会にとってもそうだろう。電話や自動車のように、なくてはならないものだ。

 しかし、電話や自動車は「フリーズ」したりしない。かつて、Windows搭載のBMWやイージス艦があった(乗るかい?)。また、電話も自動車も、ほぼ直感的に習得することができた。なによりも「さいしょからある」ものとして付き合ってきた。

 パソコンは急速に普及したので、これから洗練される―― と聞かされても信じない。メモリの単位がK→M→Gになっても、起動時間は1/1000にすらならない。

 それでも、パソコンは便利だ。命を託すほどではないが、本を注文してもいいぐらい信用できるようになった。そこで、違和感がでてくる。

 その程度の「信頼」や「実績」の上に、過大な期待が乗っかっていないか? という違和感。いそいで付け加えると、「期待するな」「信用ならねぇ」と言っているのではない。大きすぎやしないか? と心配しているんだ。

 いやいや、PCとかネットといったディメンジョン自体、小せぇ小せぇと嘲笑(わら)ってくれ。あるいは、「メシの種にケチつけんじゃねぇこのバチあたりがッ」と罵るなら、もっと安心だ。

 ―― そういう違和感、わたしだけかと思っていたら、著者がズバリ「これからは、機械が人間に合わせる時代がくる」と斬っている。「計算機」としてつくられたコンピュータは、もっと人間に合わせて作り変えられる(定義しなおされる)と説く。

 それ―― パソコンの次のもの―― は、計算機能中心からコミュニケーション中心の発想へシフトする。早ければ、5、6年の間に情報端末としてのパソコンの優位性は失われ、2015年頃にはオフィスからパソコンが消えるかもしれない、という。

 じゃぁその、「パソコンの次のもの」の正体はというと、NetPC/NCだから涙が出てくる。いやいや、かつてオラクルやマイクロソフトがぶち上げてたのとかなり違うらしい。もっとユビキタスで、使っていることを感じさせない(パーベイシブ/pervasive)なやつで、PUC(Pervasive Ubiquitous Communications)と名付けている。ハードとソフトが一体化しており、今までのOSやデータベースとは、まるで違う発想の元に作られている。

 この道はいつかきた道、ああ、そうだね… 泣けてくる。おそらく、そのガジェットは、いま、目の前にあるモノだろう。「最初は、iPodやケータイと呼ばれていたもの」が、それ―― パソコンの次のものになるんじゃぁないかと。

 IT産業への違和感や、イノベーションの価値感覚と、かなりの部分で著者とシンクロできるのに、PUCの話題に移ると、マユツバになる。オールドタイプになったもんだ。ただ、「いつかきた道」だろうと、説得論理はじゅうぶんある。大前研一「新・資本論」の読後感とそっくりだ。賭けはしないが、見とどけたい未来が書いてある。

まだ誰も信じない未来のビジョンに投資する

コンピュータ全盛の今、「コンピュータの時代はもうすぐ終わる」といっても、普通は誰も信用しないでしょう。しかし、世の中は変わるという本質をつかみ、新しいビジネスモデルを提唱するのがベンチャー企業創業者です。

新しい技術が生まれ、世の中の枠組みが変化すれば、すべてが変化することを忘れてはいけません。西部開拓の時代からアメリカ各地で発達し、重要な交通機関となった幌馬車のことを知っている人が今、どれだけいるでしょうか。各地の幌馬車会社をつぎつぎと買収し、一握りの大企業がようやく独占的な支配を確立した頃、現れたのが鉄道です。そして巨大化した幌馬車会社は、あっけなく消えてしまったのです。歴史が教えてくれるこういう事実は、今から振り返ればごく当り前のことでしょう。しかし当時、長距離を移動する乗り物といえば幌馬車しか知らなかった大多数の人々にとっては、いつか幌馬車会社がなくなるなどということは想像すらできなかったのです。

 見えていないのは、わたしなのだろうか? こないだ読んだ「イノベーションの神話」で知った、ウィリアム・ギブスンの言葉を思い出そう。

  未来はここにある。まだ、普及していないだけだ
  The future is already here - it is just unevenly distributed.
  William Gibson

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「罵ってけ!へんたいたーれん(M@STER VERSION)」を100回脳内再生する

このエントリには、感染力の強い釘宮ウィルスが多数生息しております。上級者でない方の閲覧を、固く禁じます。

未経験者または初心者が閲覧・視聴した際、釘宮病に感染・重篤化する可能性があります。その責任は当blogでは持ちません(持てません)。あきらめましょう。

これは、人類が初めて遭遇する、インターネットを媒介する伝染病なのかも。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 罵ってけ!へんたいたーれん(M@STER VERSION)
                            Song:水瀬伊織とその関係者
                            Produce:ベホイミ [blog]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ファンのみんな、待たせちゃってごめんね
ミュージック、スタート!

変態変態ど変態
かっこ悪いったらありゃしないわ
バカ言ってんじゃないわよ!頭使いなさい!

バカバカ!バカバカ!あったまわるぅーい
ど変態ど変態ど変態変態
へんたいたーれん

にひひっ
じゃじゃーん!
みんなのアイドル、水瀬伊織ちゃんでーすぅっ
うわぁ~もうホント自分の溢れすぎる才能が怖すぎるわ~

イラつくわーイラつくわーイラつく
イライラするのはアンタのせいよ
ほんっとダメダメなんだから
アナタねぇいいかげんにしなさーいっ!

何よ何よ何言ってんのよ
何ですってぇ暑苦しい!
分かってないわねアンタは
バカ!
頭ひねりなさささささーいっ

そろそろ下僕の心得、分かったかしら?

サイテーっ!

the変態(英)

うるさーいっ!

de変態(仏)

バカ!

der変態(独)

フンだ!

el変態(西)

死んじゃえー!

ド変態(日)

つまんないわよ!

変態大人(中)

致命的にへったくそでダサくて貧乏くさい!

フンフンフン!
よく聞きなさいよね

別にアンタのことなんかこれっぽっちも考えちゃいないわよ
何ニヤけてるのよ…もう

バカ!

バカぁ!

バカッ!

バカ!どどどどど変態!

どこ見てんのよ!痴漢かと思ったわ
いかにも犯罪者っぽいものねぇ~

足蹴っ飛ばしちゃうわよ
川に突き落としてやろうかしら
百叩きの刑なんだからぁ

せいぜい夜道は気をつけて歩きなさいよね
惨殺するわよ惨殺するわよ惨殺するわよ
土下座しなさーい!

変態変態ど変態the変態、de変態、der変態、el変態、ど変態、へんたいたーれんっ
こらーっそことそことそこ!あり金はたいてCD買いなさーいっ

もうサイテー
もうサイテーサイアクー
全部アンタのせいだからね

サイテー
鬼、悪魔
鬼、悪魔、人でなしーっ
許さないんだから

ウルサイ!
バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカねぇ、もうバカ
キモ、キモ
信じられなーい
死んじゃえー
へんたいたたたたたーれん!

フンフン!de変態
もーこの変態
フンだ!el変態
あったまきたわ!der変態
フーンだ!de変態
惨殺するわよ!変態大人

ゼッタイに明日からは私の後ろを歩かないことね
フンフンフン!

うっうー、はい・たーちっ
いぇい☆
はにぃー、だーいスキなのーっ

何ニヤけてるのよ…二度と言わないんだから!
バカ変態バカ変態バカだだだだだいっキラいっ!

全部アンタのせいだからね
ドブ川で顔洗ってお目々覚ました方がいいですよ

机の下で足を踏んづけてやるんだからー
二度とその顔、見せないでくれるかしら
化けて出てやるんだから
ホントしょぼしょぼプロデューサーね
変態変態ど変態ど変態変態、de変態、der変態、el変態、へんたいたーれん

全国一千万人の伊織ちゃんファンのみんな~伊織ちゃんを称えるコーナー開始よっ

あんたなんかともお口きいてあげないんだからああ~もぉ~イライラするわぁーバカバカバカ人でなしー役立たず死んじゃえキモキモ信じられなーいフンフンフン!変態変態ど変態the変態de変態der変態el変態ど変態へんたいたーれんへんたーいへんたーいへんたーいウルサイもうサイテー鬼、悪魔、人でなしーどこ見てんのよ信じられなーいウルサイししし死んじゃえー惨殺するわよ惨殺するわよ惨殺するわよキモキモ別にアンタのことなんかこれっぽっちも考えちゃいないわよ彼女なんか一生できないんでしょうけど全部アンタのせいだからねバカ!バカ!バカ!信じられなーいなに公私混同してんのよ化けて出てやるんだからやれるもんなら、やってごらんなさいよハッキリしなさいよねウルサイほんっとダメダメなんだからキライキライ大キラーイ早くいいなさいよへんたいー!(閣下)へんたい!(あずさ)へんたいー!(美希)へんたいー(とかち)へんたいー(真)へんたいー(千早)へんたいー(雪歩)WA!へんたいー(全員)へんたい(伊織)変態!大変態ヘンタイ変態ヘンタイ変態ヘンタイ変態ヘンタイ変態ヘンタイ変態

フンフンフン!
よく聞きなさいよねっ

別にアンタのことなんかこれっぽっちも考えちゃいないわよ
何ニヤけてるのよ…もう…バカ!バカ!バカ!バカ、どどどどど変態!
どこ見てんのよ…痴漢かと思ったわ、いかにも犯罪者っぽいものねー

足蹴っ飛ばしちゃうわよ
川に突き落としてやろうかしら
百叩きの刑なんだから
せいぜい夜道は気をつけて歩きなさいよね
惨殺するわよ惨殺するわよ
土下座しなさーい!

変態変態ど変態the変態、de変態、der変態、el変態、ど変態、穴掘って埋まっておきますぅ~へんたいたーれんっ

何ニヤけてるのよ…二度と言わないんだから…バカ変態バカ変態バカだだだだ大っ嫌い!
変態変態ど変態腹が立つのよねーフンっ!

もうサイテー
サイアクー
鬼、悪魔、人でなしー
プロデューサーの嘘つきー
ウルサイ!バカバカバカバカどうせ中身空っぽなんでしょ
ど変態ど変態ど変態変態へんたいたーれん

ファンのみんなは、義務として1日に100回は聞かなきゃダメよ
じゃあ、また会いましょうバイバーイ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


1日100回聞くとなると、7時間以上になる。せめて脳内再生の一助としてご利用くださいませ。そして、これ聴くためだけにiPod買ったわたしは…伊織組。

11/25追記 : この神MADのプロデューサー、ベホイミさんに捕捉されてますた。「うっうー」のご指摘、ありがとうございます。

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やわらかく心をえぐる「谷川俊太郎質問箱」

谷川俊太郎質問箱 [田村隆一の人生相談]のコメントで教えていただいて、読む。こんにゃくでペチン、ペチンと心臓を叩かれるように効いた。zemukuripu さん、よい本を教えていただき、ありがとうございます。

 生きてるかぎり必ずぶつかる問題や、どーでもいい(でも本人は切実な)悩みごとが盛りだくさん。そうした悩みを"谷川俊太郎"でフィルタリングすると、一編の詩に変化する。質問と回答がカチッと合わさる瞬間が気持ちいい、詩人一流の「おかしみ」が心地よい。そして、質問者の背後をじぃっと見つめる目が怖くない(なぜだろう)。

 ここの読者に一番役に立つかもしれない問答を引用する(というか、わたしのため)。

質問十三

彼女の機嫌を直すには
何がいちばん効果的ですか?
(まる 二十歳)


谷川さんの答

すぐ機嫌を直してもらおうとせずに、
あせらずゆっくり構えて
怒らせた原因が何か考える。
その原因が自分にあると思ったら、
相手の目を見て、マジであやまる。
言葉は少ないほうがいい、
何か具体的な行動で
謝罪の気持ちを伝えるほうがいい。
指つめたり、腹切ったりすると嫌がられると思うから、
好きな酒を断つとか、頭を剃るとか、
針金やビーズでアクセサリーを自作して贈るとか、
毎朝彼女の部屋のドアの前に、自分で摘んできた野花を置くとか、
メールに毎日一行ずつ誰かさんの詩を引用するとか、
いくらでもアイデアあるだろ、
あとは自分で考えろ、自分で!

 以下、質問だけ引用しておく、言葉の達人が何て回答するかは、ご自分の目でお確かめあれ。

質問三

人間をはじめ
多くの生物って左右対称ですけど
なんででしょう?
(しょうごろう 三十六歳)

質問十五

ふつうの言葉と、詩の言葉の
違いは何ですか?
(みく 三十四歳)

質問四

どうして、にんげんは死ぬの?
さえちゃんは、死ぬのはいやだよ
(こやまさえ 六歳)

質問四の回答には、はっとさせられて、少し泣いた、と告白しておく。

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学校がつらいなら「氷の海のガレオン/オルタ」

氷の海のガレオン/オルタ 親になったら読むべき4冊目、あるいは、生きにくさを感じている生徒・児童におすすめ。

 わたしの行ってた学校は、本当に空気が薄かった。

 居所がないというより、そもそもコトバが通じない。「私は日本語をしゃべれているのか?」と真剣に考えた。「問題児」というレッテルのおかげで学校からは放っておかれた。いじめには暴力で決着をつけた。それでも、図書室や剣道といった「逃げ場」のおかげで息つぎができた。

 大人になるために、子どもを生きのびなければならない

 うまく生きのびたものだと思う。死ぬこともなく、壊れもせず、子どもを終わらせることができた。ほとんど運みたいなものだ。だから、いま、生きにくさを感じている子どもには、何のアドバイスもできない、何の役にも立たない。

 ところが、いい本を教えてもらった。「氷の海のガレオン」(木地雅映子)だ。どういう内容かというより、どういう子どもなのかは、次を読めばわかる。

「なんで? 友達じゃないの?」
「むこうはそう思いたがってるけどね」あのトイレでの会話――会話以下のものだけど――を思い出しながらわたしは言った。「友達って言葉の定義が違うのよ、ママだって言ってたじゃない、本当の友達なんて、家族を別にすれば同性にひとり、異性にひとりいれば御の字だって。あの子はぜんぜんその器じゃないよ。だけどあっちは孤独がこわくてしがみつきあってる関係でも"友達"だと思ってる。あたしにそれをやってくれってんだから、参るわよ」

 こんなところに俺ガイル、と同時に呼吸が苦しくなる。ぜんぶ「過ぎ去った」として見ることができる今になって、どうすればよかったか、が分かる。

 ただし、この「どうすれば」は、わたし限定。この短編小説には、何の解決も書いていない。何かを求めてページを開くなら、ラストにいたっても何も得られないことに気づく。それでも、同じ気持ちを(もういちど)通り抜けることは、できる。うまく言葉にできなかった口惜しい思いを、今の自分で追体験できる(ここがスゴい)。

 続いて「オルタ」。これは、親こそ読むべきですな。どうしてこれがヤングアダルトなのか分からん。「星の王子さま」は大人こそ読むべきであるように、「オルタ」は親が読んでおくべき。

ここにいたら、あぶない。

ここにいたら、じぶんをとられる。

そんな警報があたまの中で鳴り響いているのに、それ以上、どうすることもできない。

 あー、でも、これも「解決策」は書いていない。小学校一年生の「オルタ」の母親が語りべとなって、つむぎだされる苦しい話。この短編の本質は、次に凝縮されている。

「貴大くんはね、ほんとうはやさしい子なんだよって、先生ゆってた……」
会話としては何の脈絡もないところで、突然ぽつんと、オルタが呟いたことがありました。
学校はこどものだいじなところ。先生は熱心ないい先生。そして貴大くんも、ほんとうはやさしい、いいこども……
それじゃまるで、オルタの胸のなかにある、この苦しみだけが、よぶんなものだということになってしまう。

だから、たぶん、行かせれば、オルタは行ったでしょう。
そして次第に、先生に告げ口もしなくなり、わたしにもなにも言わなくなり、「ほんとうはいい子」な貴大くんからの仕打ちにもできるだけ耐えて、一番いいことは、もう自分がこれ以上、なにも言わないことだと。みんないい人なんだから、後はわたしががまんするだけなんだと。それがクラスのみんなのためなんだと、自分に言い聞かせながら、きっと最後まで、先生みたいな人たちの期待どおりに、がんばりぬいただろうと思います。
最後まで……
つまり、
壊れるまで。

 壊れてしまった話なら、「わたしのいもうと」、そして「ぼくはお城の王様だ」が浮かぶ。最悪の最後ならずとも、幼い子どもが善意の地獄の中で身動き取れなくなるさまが非常にリアル。親ならきっと、「あるある」と頷くこと請合う。

 オススメいただいた金さん、ありがとうございます。わたしが知らないスゴ本は、金さんが読んでいたのですね。それから、この「言葉にできないもどかしさ・くやしさ」は、ぜひ、柊ちほさんに読んでもらって…と思っていたら、読了済み(流石)。

 ちなみに、親になったら読むべき残りの3冊は[ここ]をどうぞ。

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イノベーションの神話10

 見えてる穴に落ちていたことに気づかされる一冊イノベーションの神話

 革新的なアイディアは、どこからか「ふってくる」と考えている人は、けっこういる。わたしもその一人で、アイディア出しの手法・ツールを準備すれば、あとはインスピレーションの女神が降りてくるのを待つだけと考えていた…そして、今も待ちつづけている。

 あるいは、天才肌のカリスマが全く新しいアイディアで世界を変えてしまうことを、「イノベーション」だと考えている人は、かなりいる。わたしもそう思ってた、iPod の「新しさは」ジョブズだから生まれたんだと、ね。

 本書を読んで、わたしの思い込みは粉砕された。もちろん、エジソンが電球を発明したわけじゃないことや、Google の最初のアイディアはYahooで却下されてたことは知っていた。が、知っていたにもかかわらず、わかっていなかった。著者はそれを、イノベーションの神話と呼ぶ。そして、

  1. イノベーションにまつわる神話を洗い出す
  2. なぜそれが有名になっているのかを解説する
  3. 真実という観点からそれらを探求し、教訓とする
 既にネタは挙がっている神話もあるし、聞いたことのない(が、教訓として知っている)神話もある。以下、わたしが落ちていた穴をまとめる。なお、本書の方は興味深い事例が盛りだくさんであることを、予め断っておく。ある種の厳しさを求めている「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」[レビュー]と異なって、本書はユーモアと教訓に満ちている。ちなみに、amzon.com のベストオブ2007のビジネス書部門で4位だそうな(著者Berkunさんのブログ[参照])。

■神話1 イノベーションはひらめきによってもたらされる

 もちろん最後の「ひらめき」はあるかもしれないが、そこばかりに目を向けていると、イノベーションをもたらす本質について見誤る。イノベーションがもたらした「結果」があまりにも速やかだと、イノベーションそのものを breakthrough と取り違える。

 本気でブレインストーミングをすると、疲れる。さらに、出たアイディアを整理して蒸留させるとチーム全員ヘトヘトだろう(整理のプロセスでアイディアの組み合わせは指数的に膨れ上がる)。このスプリントを繰り返し、最終的に革新的なヤツに至ったとしても、それは決してひらめきからくるものではない。膨大な取捨選択とブラッシュアップの賜物だろう。

 これは、やったことがあるヤツなら分かる。やりもせず能書きだけ垂れているなら、棚ボタを期待するほうがまし。著者はイノベーションに至るまでの地道な積み重ねに着目し、「ひらめき」を追い求めることは、「はっきりいって無意味」と断ずる。「アイディアのつくり方」[レビュー]でも同じコト言ってたっけ。

■神話2 私たちはイノベーションの歴史を理解している

 自明なのに忘れがちなこと。ケータイであれiPodであれ、いま目の前の「結果」に至る道が、たった一本であるという思い込み。あるいは、イノベーションは可及的速やかに世界を変えているという思い込み。電話やヒコーキの例が顕著だが、ゲーム機器の例で考えてみると面白い。

 著者は、「なぜ、歴史は完璧に見えるのか?」という問いを立て、ローマの例から暴いている。

ローマの場合、集合住宅の生活について記述された文献や、ローマの精鋭集団が犯したエンジニアリング上の失敗が記録された資料はほとんど残されていません。ほとんどの人々には何かを書き残すという手段が与えられていなかったため、反対意見が歴史に残されることはほとんどありませんでした。歴史が完璧に見えるのは、人々の生活が潤っていたからではなく、起こったこととその理由が隠蔽されていたからである場合が多いのです。

■神話3 イノベーションを生み出す方法が存在する

 あらためて考えると笑止千万なんだが、ほにゃららHackが典型だね。たとえば、プログラミングの生産性を上げる普遍的で革新的で確実な方法を追い求めることと一緒。もしも「ある」と大マジメに考えているなら、本書は読まないほうが吉。ほにゃららHackで遊んでる方が精神衛生上いい。

 アイディアが製品・サービスという形に結実し、それが世界を変えてしまうぐらいのインパクトを持つ場合、「イノベーション」として認知される。だから、認められる直前までのプロセスは、フツーの事業と一緒。ショートカットは存在しない。

 ただ、イノベーションに至る無限の道を歩く際、地図は無くても役に立つ「心構え」はあるという。サバイバルでの心構えと一緒。陳腐だが真実。

  1. 自らを知る
  2. 集中的に、しかし一歩さがって確認する
  3. 規模を大きくしていく
  4. 幸運と先駆者の功績を認める
■神話4 人は新しいアイデアを好む

 以下の図が強烈。これを見るまでは、心の底からナットクできなかった…たとえ、アタマで分かっていたにしても。


    →→→→ 【イノベーション】 ←←←←
  受入れられる           受入れられた
   前の観点             後の観点

時間
――――――――――――――――――――――→

 未来のわたしのために、この図の説明をする(わたしは忘れっぽい、だからウェブ「ログ」を書く)。

 過去のイノベーションを現代から見る場合、それらはすべて世の中に受け入れられた後の観点から見ることになる。そのため、イノベーターは自分のイノベーションが過去の事例とは異なった受け止め方をされることに愕然とするはず。たとえば…

  • そんなことなどうまくいくはずがない
  • 誰もそんなものは欲しがらない
  • 実際に役に立つはずがない
  • 人々は理解しないだろう
  • そんなことは問題ではない
  • それは問題だが、誰も気にしない
  • それは問題で、人々も気にしているかもしれないが、すでに解決されている
  • それは問題で、人々も気にしているかもしれないが、ビジネスにはならない
  • それは問題を探すための解決策だ
  • 私のオフィス/洞窟から今すぐ出ていけ(原文ママ)
そして、ひとたび「成功」すると、今度はイノベーターのジレンマ(≠イノベーションのジレンマ)が待っている。くじけそうなときには、ウィリアム・ギブスンの次の言葉を思いだそう。

   「未来はここにある。まだ、普及していないだけだ」

■神話5 たった一人の発案者

 ああ、これは思いつかなかった…が、事実だろう。イノベーションの象徴として、カリスマやらヒーローを祭りたがるクセがある。もちろん功労者として、スポークスマンとして「一人」が前面に立つことはあるが、彼/彼女が成し遂げたわけではない。

 「たった一人の発案者」にしておくと便利だ。ややこしい真実や状況を考慮せず、ヒーローを一人仕立て上げれば済むのだから。著者は、ガリレオやアインシュタイン、アポロ計画とiPodを縦横に駆使して、この神話を解体していく。

 するってぇと、ジョブズやゲイツの「中の人」は、何人いるんだろうね。

■神話6 優れたアイデアは見つけづらい

 優れたアイディアはデッサンから導きだす一本の線のようだ。最初からその一本が引かれることはなく、沢山の線を引いたあとに、「この一本」が選びとられ、いったん見つかったならそれ以外のどの線もふさわしくなくなる。

 すごくシンプルなんだが、わたしがいつも忘れてしまう原則は、ライナス・ポーリングが述べている。

   「優れたアイディアを得る最善の方法は、多くのアイディアを得ることだ」

 アイディアを得るときの「こころのありかた」について、面白いヒントが書いてある。心というものを、一種のフィルターだと考えてみるそうな。アイディアの取捨選択をするとき、「あれかこれか」といったON/OFFスイッチのようにはしない。仕事/遊びといった二値的なものではなく、自分の心のオープンさをコントロールできるボリュームスイッチをイメージせよという。

 このボリュームの目盛り幅を広げるにあたって、素晴らしいゲームが紹介されている。

「これは何?」ゲーム : あなたの周りにあるものであれば何でもよいので一つ選んでください。ペンでも、マグカップでも、何でも構いません。そして、それが本来の用途以外で、何に使えるかを自問するのです。 (中略) どんなものでも、本来の用途以外の使い道を考えることができるというのが、ここでのポイントなのです。

 さらに、アイディアを殺すセリフを引用しておこう。アイディアを刺激するための「質問」を握りつぶすときや、アイディアを持っている人をやりこめて黙らせたりするときに、とても有効だ。
  • そんなことはもうすでに試してみた
  • そんなことはやったことがない
  • ここではそんな風にしない
  • そんなことはうまくいくはずがない
  • そんな予算はない
  • それは興味深い問題ではない
  • そんな時間はない
  • そんなことは上役が承認しない
  • それは関係ない話だ
  • 誰もそんなことを喜ばない
  • そんなものは採算がとれない
  • お前はなんて馬鹿なんだ?
  • お前は口ばっかりだから黙ってろ
■神話7 上司はイノベーションについてあなたより詳しい

 この神話については、著者やわたしなんかよりも、あなたの方がよく知っている。それでも、イノベーションを阻む要素は、「分かっちゃいるけど、見ていない」ことから始まる。スティーブ・ジョブズの次の言葉を引いておこう。Macintosh を製品として発売するための、長く・困難で・地道な作業を行わせるため、彼が語った言葉。

   「本当の芸術家は出荷にこぎつける」

…この出典のURLは注にあるが、URL先にソレっぽい一文は見つからなかった。お題の「Real Artists Ship」からの意訳? (本当の芸術家魂、と取れるし)

■神話8 最も優れたアイデアが生き残る

 これも、わたしが落ち込んでいた穴。神話の反例がいちいち的を射ていて面白い。何度聞いても笑えるのは、NASAの火星探索プロジェクトの失敗例(笑っちゃダメなんだが)。

 3億ドルと10年かけた火星探索船オービターは、1999年9月23日に周回軌道を離れ、火星表面に突っ込んでお陀仏となった。なぜか? 軌道への進入角度が誤っていたから。なぜか? メートル法で設計された仕様に、ヤード・ポンド法から換算するのを忘れていたから。

 ヤード・ポンド法に限らず、QWERTY配列、HTMLから、「優秀さ」のパラドックスを読みといている。

■神話9 解決策こそが重要である

 目からウロコ。言われてみれば「あたりまえ」に気づいていなかった。チカラを込めるのは、解決策の探求ではなく、問題の定義だ。「ハンマーを握ると全てが釘に見える」のと一緒に、次の警句を覚えておかないと。

   「問題を20日で解決しなければならないとしたら、
   私は19日かけてその問題を定義する」
   (アインシュタイン)

 電球、スプレッドシート、Palm といった身近な事例を挙げて、「いかに問題をとらえるか」の重要性を強調する。確かに。間違った問題の正しい解答は、正しい問題の誤った解答よりも、たちが悪い。

■神話10 イノベーションは常に良いものをもたらす

 原爆だろうなー、と読み進めたらビンゴ!だった。ただしもっと遡って、「飛行機」というイノベーションから斬り込んでいる。ライト兄弟はドレスデンの爆撃なぞ思いも及ばないだろう。いわんや、2001.9.11にニューヨークで行われた、極めてイノベーショナルな飛行機の使い方をや。

 プロメテウスの火をはじめとし、DDT、自動車、パーソナルコンピュータ、携帯電話の「光と影」のそれぞれの側面を採りあげている。テクノロジーは、すべてのものを例外なく加速していく。良いことと悪いことの評価を置きざりにして。

 巻末に参考文献として、イノベーション関連の書籍リストが山のようにある。嬉しいことに、著者独自のやり方で採点づけられている。最高得点は82ポイント「イノベーションと企業家精神」(P.F.ドラッカー)だそうな。ドラッカー本は取り憑かれているトコなので、読むベ。

 そうそう、オライリーでハードカバーなのは珍しい。サンプルは[ここ]で読める。また、青木靖さんとこで、「イノベーションの神話」の著者Scott Berkunが10の疑問に答えるが翻訳されているので、あわせて読みたい。

2007.11.27追記:書影とリンク先が原書になってた… ごめん、読んだのは邦訳版ッス

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見てきたように描いてある「激闘 ローマ戦記」

激闘ローマ戦記 「ローマ人の物語」は、ムラがある『小説』だが、さすがはプロの想像力、戦術と戦闘は見てきたように書いてある。同様に、本書は見てきたように描いてある。さらに史跡・遺跡の写真も盛りだくさんで、あわせてよむと効果絶大。

 既に「ローマ人の物語ガイドブック」が出ているが、美術品と遺跡をめぐる観光ガイドに過ぎない。いっぽう本書は、戦史に特化したビジュアルブックとして使える。戦略・戦術・戦闘の全てにおいて、ローマ兵がどうやって戦ったのかが「見える化」されている。

 前列にずらり並んだ象部隊を、スキピオがどうあしらったのか、ヤマアラシのような長槍のマケドニア兵とどうやって闘ったのか、塩野氏の文の冴えもあるが、絵を見たほうが早い

 また、「ローマ人」には史跡の現場での印象も述べられているが、不思議なことに「サイズ」の描写がない。本書を見れば一発で分かる。戦いの舞台がいかに広大なものであるか、写真を見たほうが早い。これから「ローマ人」を読む方は、ぜひ傍らに置いておきたい。既読の方は「ああ、あれがこれなのかッ」と何度も頷くだろう。

 たとえば、ファランクス(マケドニア式の長槍密集方式)を、どうやって打ち破るかのプロセスが非常に興味深い。それこそハリネズミさながらの長槍が穂先をそろえて突っ込んできたら勝ち目がない。だから、ローマ兵は短槍を使って切り崩すわけなんだが… これは文で説明するよりは、Wikipediaのファランクスの画像[マケドニア式のファランクス]を見たほうがいい。まともにぶつかり合ったら文字通り串刺しになるのを、ローマ兵は投槍を使ってスキ間をつくり、さらに地面のうねりによる戦列の乱れを突く。お見事としかいいようのないプロセスは、本書の本書のp.51の図でハッキリと分かる。

 次に興味深いのは、ガリア戦記の時代。カエサルvsヴェルチンゲトリクスの最終決戦の舞台、アレシア攻囲戦(BC52)が紹介されている。現在のアレシアの写真がスゴい。フランスのアリーズ・サント・レーヌを上空から撮影した写真だ。平野部に出現した台地の船のようだ。これを完全包囲したカエサルはスゴいというより、アホかといいたいぐらいの、巨大な台地なり。このデカさは、文や略図で見ても分からん。写真だと一発で見える。

 いちばん驚いたのが、ユダヤvsローマの決戦地、マサダの要塞(AD73)。「難攻不落」と形容されているが、写真を見ればすぐ分かる、「これはムリ」だと。茫茫たる岩砂漠に、ニョキッと戦艦大和の艦橋が突き出ているような場所が聖地。これを攻略するためにローマ兵が作った土手がまたスゴい。ローマ兵はつるはしで戦う。当時の工兵技術の粋が「見える」。2000年前の激戦をヘリコプターで上空から見ているようだ。

 塩野氏よりも「したり顔」になれる一冊。

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DS文学全集レビュー「少女∽地獄 」

少女地獄 「いっぺん、死んでみる?」人を呪わば墓穴二つ。哀しく、おぞましい。

 閻魔あいの手引きで、二つ目の穴、つまり自分の墓穴を覗きこむのが「地獄少女」。ひるがえって「少女地獄」は、一つ目の穴に自らを投ずる少女たちのオムニバス。怖いというより、哀しい。

 三編の独立した物語だが、いちばん哀しいのは「火星の女」だな。名門女子高で見つかった黒焦少女の屍体が、発端であり終端であったという話。

  1. 新聞ゴシップの、毒々しさとセンセーショナル
  2. 少女の手紙の、ひたむきさとセンチメンタル

を織り交ぜながら真相が暴かれていく。

 つかみからして驚愕の事件なんだが、裏側にはもっとおぞましい真実が。そいつを読み手に知らせる仕掛けがいちいち上手い。手紙文ってこうやって使えるんだーという見本のようなもの。でもって、手紙だからいちばん知りたい肝心なトコは書いてない。推して知るべしってやつなんだが考えたくねぇぇぇ!

 この手法、「瓶詰地獄」より上かもしれない、といえば読みたくなる?

 他の二編は、むしろ不安をかき立てられる。

 最初の作品「何んでも無い」は、はじめの不協和音がだんだん大きくなる様子がイヤらしい。可憐な少女の虚言癖をめぐる話といえば聞こえはいいが、緊張感のある描写が映画的。特に、ウソがホントになるさまと、ウソが暴かれるシーンは、ヒッチコックお得意のクローズアップ・カメラで「読む」カンジ(「鳥」とか「北北西」のアレ。こないだの「バイオハザード」にもあった)。

 嘘をリアルの一部として取り込み、嘘を支えるために嘘をつく。虚構+現実の世界に生きた少女の果ては… わたしが明かさなくても知れよう。

 次の「殺人リレー」は、もどかしさのあまり掻きむしりたくなる「方法」で読まされる。つまり、殺人鬼(かもしれない)男にとり憑かれた娘の話を「手紙で」読まされるわけだ。なんせ手紙だから、どんなに切羽つまったことがあっても何もできない。しかも、その手紙を手にする娘の背後から読むような立場なので、輪をかけてもどかしくなる。「志村ーうしろー」とVTRに向かって言う感覚。

 三作品ともカタルシスはあれど、分かった後は苦い読後感。「火星の女」がちょっとだけ「ふたりは百合きゅあ」なのが救いか。読むと発狂する「ドグラ・マグラ」のウォーミングアップにちょうどいい。文庫版は上の通りおどろおどろしいが、DS文学全集で読んだ。

 最近、シレン専用機としてクリムゾンブラックを新調したんだが、今じゃ文学全集専用マッスィーンと化している。デジカメ越しに読むような、にじんだ文字にも慣れた。手にした感覚が文庫本と一緒というのが所有欲望を充足させる。DS文学全集そのもののレビューは、[ここ]

DS文学全集

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