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チームリーダーは「アジャイルレトロスペクティブズ」から盗め

Agileretrospectives 「なんで、こんな非効率なやり方なんだ?」この疑問、よくあるどころか毎日だ。

 たとえば、情報がうまく共有されていないとか、ある人がボトルネックになっているとか。不平を言うと「じゃぁオマエがやれ」と押し付けられるので、最近では不言実行で最適化を図っている[参考]

 あるいは、評論家になっていっぱしのクチをきくが、現場を変える努力も勇気もないくせにブログで薀蓄たれ流す。ネット弁慶カッコワルイ(誰とはいわんが、わたしも含まれるので自戒)。

 たしかに、「前と同じやり方」で仕事は回るが、「やり方」が改善されないまま。成果物はレビューされるが、仕事のプロセスはレビューされない。かくして非効率性は引き継がれ、不満は澱のように溜まってゆく。

 こいつをなんとかする試みが、「アジャイルレトロスペクティブズ」。舌噛みそうな名前で、サブタイトルの「『ふりかえり』の手引き」というほうがピッタリだね。

 つまり、プロジェクトの要所要所でチームそのものを「ふりかえり」、作業そのものをレビューしようという発想。この「ふりかえり」のためのアイディアやヒントが本書。

 「ふりかえり」を短期に組織的に行おうとするのが斬新だ。小さいチームを想定した手引きで、学級会のようなノリに戸惑うが、たくさん盗ませてもらった。「いま、チームに何が起きているのか」を知るための強力なツールになる。ファシリテーター必読。

 以下わたしの収獲。

■ 感情にフォーカスする

 いちばん驚いたのがこれ。「仕事に感情を持ち込まない」のがルールだろう。そりゃぁ、罵倒したり爆発したりすることもあるが、マナー違反として扱われる。本書では外に出すことが奨励されており、その方法まで紹介されている。

自分の感情について話せる仕組みを作ることで、感情的に負担のあるトピックを取り上げることに抵抗がなくなる。感情的な内容に言及することを避けていては事態は進展しない。問題は表面化されず、エネルギーとモチベーションが徐々に吸い取られていくだけだ。

 その具体的方法は以下のとおり。まぁ、ヤなことをハラに溜めて仕事するよりも、出しておいたほうが精神衛生上いいことは確か。「どう感じたか?」ではなく、「○○と思ったのはいつか?」というすりかえ質問。うまいやり方。

エンジニアは自分の感情を話したがらないものだ。だからレトロスペクティブで感情について尋ねるようなことはしない。ちょっとした工夫がある。感情について直接尋ねるのではなく、別のやり方で尋ねてみるのである。会社に来るときにワクワクしたのはいつか? 仕事が「単なる仕事」になったのはいつか? 会社に来るのが怖かったのはいつか?

■ 厳禁句「おまえのバグだろ!」

 すげー耳に痛いのが「あなたが言葉」(You Language)。チームの約束が破られたとき、絶対に、絶対に、ぜったいに「あなたが言葉」を使わない。さもないと、自己防衛と逆ギレによる負のスパイラルでレトロスペクティブが崩壊する。主語を "You" にすると、途端に責任追及の場になってしまう。いわゆる「おまえのバグだ(゚Д゚)ゴルァ!」だねッ

 どうすればよいか? 「私が言葉」(I Language)を使えという。主語を「私が」にすることで、「話し手の気づき」がメッセージの重点になる。決め付けではなく、気持ちについて議論ができる。

あなたが言葉 : 「ビルドを壊しやがって、お前がちゃんとやっていれば目標を達成できたんだよ!」
私が言葉 : 「私が怒っているのは、目標を達成できなかったことだ。あのビルドを修正するのはとても厄介なんだよ」

問題がビルドにフォーカスしているのが「見える」。少なくとも、「私が言葉」の方が前向きな流れになるはず。

■ ドットによる優先づけ

 アイディア出しの技法はどこかで聞いたものばかりだったが、その優先づけの方法が興味を惹いた。価値基準による重みづけあたりが出るのかなーと思っていたら、書いてない。代わりに、もっと素朴な「ドット貼り」が面白い。こんなカンジ…

 目的 : 課題/アイディア/提案の優先づけをする
 方法 : メンバーにカラードット(丸いシール)を10個配って、

  • 優先度1には4ドット
  • 優先度2には3ドット
  • 優先度3には2ドット
  • 優先度4には1ドット
 と、それぞれのアイディアの横に貼ってもらう。みんながやるべきだ、と支持しているものが「見える化」できる。声の大きい人の提案が通るのではないところがポイント。

 すると、素朴な疑問が頭をもたげてくる。みながやりたい案が採用されるのであって、最もやるべき案とは必ずしも一致しないのではないかと。著者は用心深くこう述べている。

人は、重要だと分かっていても、まだ手をつけたくないことがあるものだ。エネルギーがあるときに取りかかればいい。必要なのはチームが支持するアクションや決定だ。みんなが実行してくれなければ意味がないのである。

「ふりかえり」のための沢山のアイディアやヒントを読むうちに、チームの今を察するために、どういう姿勢でいればいいか(いるべきか)が分かる。言い換えると、「よい質問」が発せられるようになる。

 最後に。献本ありがとうございます。翻訳に「あそび」があって楽しめました。「これはひどい」や「家に帰るまでがレトロスペクティブです」といったcool(?)な訳に噴きました。本書は会社でたっぷりと使わせてもらいますぞ。

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