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かなり身に覚えのある「地下室の手記」

地下室の手記 [劇薬小説を探せ]は続くよ、どこまでも。「骨餓身峠死人葛」や「問題外科」といった、読んでる途中から気分が悪くなるような小説は片付いた。今では、読了した後になって、読んだことをジワジワと後悔するような小説を選んでいる。今回はドストエフスキーの「地下室の手記」。[人生を狂わせる毒書案内]でも強力にプッシュされているし、新訳も出たことだし。

 で、読んでみると…これが笑えるんだ、あざけり笑いの方。40喪男のあまりにも自意識過剰っぷりがおかしくてタマラン。こいつ、バカじゃねぇの、考えすぎー、しかも笑い取りたいのか自らドツボにはまってる。

 例えば、見知らぬ男を激しく恨む。なぜか? 居酒屋でそいつが強引に押しのけたから。「俺をモノのように扱いやがって!」と屈辱感に苛まれ、あいつと決闘してやる!ストーキングして名前や行きつけの場所を突き止める。で、「あいつとすれ違うとき、どいてやらないんだ!」と息巻いてチキンレースを仕掛けるのだが…

 この間2年。人を恨みに思うことはあれど、2年間も燃やしつづけるのは一種の才能だと思う。チキンレースの顛末は黒い笑いに包まれる。しかもこの出来事は14年前のことだってさ。

 満たされない思いはぶくぶくと肥大化する、歪む、腐る。怪物のような「自意識」が頭全部を占領し、部屋から一歩も出られなくなる。次の段階では、自分を卑しめたり痛めつけることに快感を抱くようになる。「ホラホラ見て見て!」って奴だ。自分の堕落をあてつける、世界のせいだってね。

 怨念にまで発展する執拗な自意識へのこだわりは、あっぱれかも。自意識が「過剰」を超えるとどうなるか、この実験は面白い。「地下室」とは自意識のメタファーなんだなー、こんな奴いた(いる)よなー、ネットに多いよなー、と呟きながら読む。

 ――で、笑いながら読み終わって、気づくんだ。なんてこった!こんなところに俺ガイル。

 自意識の重さに悩んだことは、誰でもあるだろう(特に思春期)。屈託なく振舞う友人を羨んだり、根に持つ自分を恥じたかもしれない。そんなヒリヒリ感覚を思い出す一冊。

 光文社文庫から新訳が出ているが、実は無料で読める→[地下室の本棚]。文庫版で主人公を「俺」と訳していて違和感あったのが、ここでは「僕」になっており、しっくりくる。やっぱりこういうイジけた40男はボクボク君でなくっちゃ。

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