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じゃぁ最近のオヤヂは、若いとき本読んでたのか?

 前回のエントリ[「最近の若者は本を読まない」本当の理由]では、沢山の意見を頂いた。賛否いずれも、感謝感謝。賛成は嬉しいが、反論はありがたい。わたしの論拠の不備があらわになったから。愉快なのは米光さんの[「最近の若者は本を読まない」本当の理由の本当の理由]。いかにも最近のオヤヂが言いそうでしょ?

■各時代の若者の読書率

 いただいた反論のうち、かなりの説得力をもつのがあった。コレだ。

オヤヂどもは、今こそ本読んでないかもしれないけれど、若かりし頃は、イマドキの若者よりも、もっと読んでいたんじゃぁないの?若年世代を定点観測した比較結果でないと意味がないんじゃないか?

 ああ確かに。だからこの週末に調べてみた、「最近の若者は本を読まない」と嘆くオヤヂ連中が、若かった頃はどうだったかを。

 「若者」は20~30代、「オヤヂ」はそれにプラス30しておこうか。それから調査上、「本」とはマンガや雑誌以外の書籍を指す。「バナナはおやつに」的な質問には、YESと答えておこう。ラノベは本に含まれるし、携帯小説も然り。書籍読書率とは、「あなたは書籍を読みますか?」に「はい」と答えた割合で、ネタ元は、毎日新聞社の読書世論調査。

 結論から言うと、最近のオヤヂは、若いころ確かに本を読んでた…最近の若者と同じぐらいにね。だから、「最近の若者はオレの若い頃と同じぐらい本を読んでる」というべき。全体の書籍読書率を押し上げるかのように、どの年代の「若者」も読書率は高い。要するに、若い頃はたくさん本を読んでいる。

 言い換えると、「20~30代が読書のピーク」。若い頃から読書に縁がないと、トシとると、もっと縁遠くなるという罠。「読書は若いうちにしとけ」って、いかにもオヤヂ(各々の時代のオヤヂ)が言いそうだけど、どの時代の「若者」もそれを実践している。

 出版業界が若者をターゲットにする理由を裏付けるかのような結果だったね。角川文庫のキャンペーン[これ]は、その意味において激しく理に適っている(利に叶っている?)。

■「ラノベは本に入りません」という人びと

 それでも食い下がる人がいる。「ラノベのような本は、読書に入らない」といった、読書を高尚な何かのように考えた反論もある。んー、これについては、小飼弾さんが[最近の若者たちはどうやって本を読んでいるか]でいいこと言っている。

ライトノベルを読んでみるとわかるのだが、これらの作品は、過去の膨大な「名作」が下敷きになっていて、それらを知らないと楽しめないようになっている

 激しく同意。しかもちーともライトじゃねぇよ、と吼えたくなるような作品があるぞ。例えば「涼宮ハルヒの絶望」や、「神尾観鈴を思い出す2冊」なんて、ライトじゃなくヘビーノベルだよ…

 閑話休題、読書を高尚な何かとカンチガイしている方に、「最近の若者は…」とのたまうオヤヂが若かりし頃、何が読まれていたかを紹介しよう。同じく読書世論調査で、「よいと思った本を一冊あげてください」という質問のうち、各時代の10位までのランキングは以下のとおり。

 まずは最近のやつ。

2006年調査

  1. 竜馬がゆく(司馬遼太郎)
  2. 坂の上の雲(司馬遼太郎)
  3. 東京タワー(リリー・フランキー)
  4. 十津川警部シリーズ(西村京太郎)
  5. 鬼平犯科帳シリーズ(池波正太郎)
  6. ハリー・ポッターシリーズ(J・K・ローリング)
  7. 人間革命(池田大作)
  8. 砂の器(松本清張)
  9. 剣客商売シリーズ(池波正太郎)
  10. 坊ちゃん(夏目漱石)

 大河ドラマや映画の影響がありありとわかるランキングやね。最近ならではといえば「東京タワー」と「ハリポタ」ぐらいかな。十津川警部と鬼平がランキングに入っているのは、あきらかにオヤヂたちの票。

 これが20年さかのぼると、面白くなる。

1982年調査

  1. 窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子)
  2. 徳川家康(山岡荘八)
  3. 悪魔の飽食(森村 誠一)
  4. 人間万事塞翁が丙午(青島幸男 )
  5. 吉里吉里人(井上ひさし)
  6. 飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ(井村和清)
  7. 三国志(吉川英治)
  8. 青春の門(五木寛之)
  9. 人間革命(池田大作)
  10. 塩狩峠(三浦綾子)

 ちょwwwトットちゃんwww …うん読んだよ。フツーに読んだが、なぜトットちゃんが超弩級のベストセラーになったのか、20年経った今でも皆目分らん。あとギネスブックに載るぐらいの長編小説「徳川家康」は挫折したなぁ… 吉川英治の三国志は間違いなく面白いから、わたしがオススメするまでもなかろ。

 30年さかのぼると、もっと香ばしくなる。

1974年調査

  1. 日本沈没(小松左京)
  2. 恍惚の人(有吉佐和子)
  3. 勝海舟(子母沢)
  4. かもめのジョナサン(リチャード・バック)
  5. 人間革命(池田大作)
  6. 青春の門(五木寛之)
  7. 新・平家物語(吉川英治)
  8. 風と共に去りぬ(マーガレット・ミッチェル)
  9. 華麗なる一族(山崎豊子)
  10. ノストラダムスの大予言(五島勉)

 「日本沈没」は面白いよ。映画は知らんけど、小説は楽しめた。リチャード・バックは「かもめのジョナサン」よりも、「ONE」の方が良かった(「えいえんは、あるよ」のONEではない)。「ノストラダムスの大予言」って、当時かなりマジメに受け止めていたような希ガス。

 「人間革命」という例外もあるが、どの時代もその時代を写す本が読まれてきた。だから、本に高尚な何かを求めなくてもいいんじゃぁないかと。あるいは、今はライトノベルや携帯小説の時代なんだとも言える。

■まとめ

 「若者は本を読まない」というオヤヂが若かりし頃は、やっぱりこういう本を読んできたわけで、文句を言えた筋合いじゃない。

 だから、も少しマイルドに「堅くてデカくて難しい本は、若くて気力体力があるうちに挑戦しとけ、トシとったらますます読めなくなるから」と無難な物言いにするのが吉。50超えてもまだ生きてたら、そう言おう。

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数値込みのGoogle Spreadsheetsは、以下の通り。

 若者の書籍読書率

ネタ元は、読書世論調査(1987年、1989年、2007年)、および読書世論調査30年(1977)。

※1990~2000年の若者読書率のデータが入手できなかった。禁帯図書を一冊ずつ閉架から出してもらってたから、網羅しきれなかった…カンベンな。気になる方は図書館へGo!

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コメント

かもめのジョナサンは厨房の頃に読んだなぁ。面白かったけど選民意識が鼻につく、と思った。そして最近は剣客商売を何回目かに読み返す三十代。

明治時代は「最近の若者は小説なんてくだらんものを読んでてけしからん」と言われてたんだけどね。

じゃあ、何を読めば良いかというと漢籍だったわけで。

投稿: Q | 2007.07.02 00:56

1974年じゃあ、ベストセラーの内容は今とほとんど変わらないでしょう。100年間のベストセラーを年代順に読んで批評している豊崎由美と岡野宏文の対談本『百年の誤読』によると、1960年あたりからベストセラーがバカになっていったといいます。

そりゃそうです。1970年ごろから就労人口の50%が第三次産業に就くようになり、大学進学率も上がって、読者層が急速に消費者化、大衆化していく準備段階が1960年代なんですから。

出版産業というのは、「知識」を売る以上に「意識」を売る産業だと思うんですよね。そういう「意識」さえ読者の心の中に芽生えさせておけば、「堅くてデカくて難しい本」を高齢になって読まなくなるなんてことはないんじゃないでしょうか。

投稿: ピッポ | 2007.07.02 01:16

これだけの読書家が、こんな見え見えの釣りかますからには、とっくにエビデンスが揃ってるってオチは見えてるハズ。なのにエントリーの本質か「オヤヂ」というキーワードにか知らんが、根拠レスにあっさり釣られるあたりが団塊クオリティ。

ってか、満員電車でオレに寄りかかるな!
会社に着く前ぐらいは自分の足で立てよ!
朝イチで昨日の飲み屋の話してんなよ!

仕事しろ!!!

投稿: とおりすがり | 2007.07.02 01:21

池田大作、テラオソロシス。

投稿: aoi | 2007.07.02 01:49

そういう大人になりたかったら今のうちに死ぬほど勉強しておくんだね。ボーナス返すの嫌だなぁwww

投稿: ダカーポ | 2007.07.02 03:30

年寄り連中が「最近の若い奴らはすばらしい」
と賞賛したら、むしろ、気持ち悪いと思うのは
捻くれすぎでしょうか。
戦前も、若い世代に対して、「漢文の素養も
無い奴らが文学を語っている」と年寄り連中が嘆いていた
そうですし、そもそも、夏目漱石を女子高生が
夢中になって読んでいたというのですから、
2世代、3世代後にはラノベ作品が国語の教科書に
掲載されるようになる可能性もあるんじゃないですか。

投稿: くろ | 2007.07.02 07:12

それにつけても池田先生は偉大ですね
これはもうノーベル平和賞のみならず文学賞も夢ではない
それまで長生きしてください

投稿: 喪家の犬 | 2007.07.02 11:43

上の世代のインテリが下の世代の非インテリを貶しているだけでしょうね。自分はインテリに囲まれて生活しているので、自分の世代が優秀だと勘違いする。
今の若者も、歳を取ったら一定数は同じ罠にハマると思います。
 
「世代差ではなく階層差」
http://simple-u.jp/pd200503.html#2005-03-25
 
あと、なんだか人間革命読んでみたくなりました(笑)

投稿: 裕くん | 2007.07.02 12:00

今の年配の人たちと今の若い人たちが、
若い時に本を同じくらい読んでいたっていうのがわかって良かった。

今の人は本を読んでいるっていう他人へのアピールが昔に比べて無いのかなぁ?

確かに電車の中で本や新聞を読んでる人と携帯をいじってる人が同数いても、
携帯いじってる人間のほうが目立つ、気になる感じがする。

本を読む光景が当たり前に感じるからかもしれない・・・

投稿: ごん | 2007.07.03 16:55

俺が漫画ばかり読むので、親父は「漫画以外の本を読め」って言ってたが、親父は電化製品の説明書すら読もうとしない。

投稿: k | 2007.07.03 19:08

>本を読んでいるっていう他人へのアピール

以前は(30年以上前)は、読書という行為が共通言語というか、共通認識だったからでしょう。大きな物語が崩壊しどのレベルの価値もフラットになった現在、読書という行為があまりにも個的に細分化されちゃってますからね。

「○○(作家名)の新作」がインパクトを持ちえた時代には、とりあえずそれを読んで意見を交わす。それさえ読んでいれば、大抵の人とコミュニケーションがとれたわけです。でも今は、そんなものにすがらなくても、マイナな世界でマイノリティ同士が十分なコミュニケーションが可能となっている。ここ何十年か、出版社だって、そういう層をピンポイントで狙い撃ちしてきてるでしょ。「こういうもの」ならどれだけのマーケットが存在しているのか見えているオタク業界なんて、正にそうだよね。一般人や新規の顧客の開拓なんて眼中にないわけ。

ちょっと脱線したけども、つまりは他人に積極的にアピールせずともよい時代になったということじゃないでしょうかね。そんだけ。

投稿: ダカーポ | 2007.07.03 21:42

小学生でラブクラフト全集を読んでいた俺はどうなる

投稿: 通りすがり | 2007.07.04 19:37

よいと思った本ベスト10と
個人個人の読書の量って全く別の次元の話じゃない?
その「最近の若者は本読まない!」と主張する人のベスト10なら
まだわかるけどw

あとちなみに自分は厨房の頃中国の有名な思想書はほとんど読んだし世界中の神話はほとんど目を通した。
でもベスト10をあげろってもその中には入らない。
面白い本とはまた別の話だから。

ダカーポさんの話が凄く面白い。音楽もそうですよね。

投稿: コルネリア | 2007.07.05 00:53

「今の若い世代ほど”人に読まれる事を前提とした文章”を
 日常的に書いている、読んでいる世代はないだろう」

というのもよく言われてますよね。

掲示板、メール、ブログ、ミクシィ、メッセンジャー…などなど
身内だけが読む文章から、不特定多数の誰が読むかわからない文章まで
多種多彩に”人に読まれる事を前提とした文章”を書いている
若い世代の割合はかなり多いです。

「若い人は本を読まない~」と語る年配の人たちは
自分たちが若い頃から現在まで、そういう文章を書く機会は
どれほどあったでしょうか?ネットが無かった時代なので
身の回りの友人と感想を話す、程度だったのではないかと思います。

自分の考えや感想を文章にまとめる、
その文章を見知らぬ誰かが読んだときに
内容をどう受け取るだろうか?と考える、
レスの内容について考え、また書く…という
”人に読まれる事を前提とした文章”を書く経験は
今の若い世代が一番多いのではないでしょうか?

投稿: dis | 2007.07.05 18:11

自己回答ではなぁ、という感もあります。
昔なら本を読んでるなんて恥ずかしくて言えないような人でも、そういえば先月1冊読んだなー、と「はい」と答えてしまう、とか...

という事で書籍の販売推移をググって見た所...
http://www.jcj.gr.jp/~shuppan/jcj0/jcj702.pdf

実際には売れる冊数は80年代末をピークにどんどん落ちて来ているようですね。
最近本が売れなくなったー>昔ほど読まれなくなったから
という話では?

「読まれる本の数」が減っているのは事実。ただ、「若いもん」のせいか、というと...

投稿: u.o | 2007.08.16 01:58

ご無沙汰しております。
相変わらず活発なサイトで、お喜び申し上げます。
ここのところ、劇薬本に食傷して、昨年の大河ドラマで関心が出て、今更ながら「竜馬が行く」を初読みしています。
「国取り物語」を読んだときも感じたのですが、虚構というか不自然にいそうも無い脇役をツンツンと突っ込んで歴史小説の重苦しさ、堅苦しさを茶漬けに似たサラサラ感に変えてしまう、司馬遼太郎の小説作りの巧みさに、酔っています。
こいつは、いくつになっても読む者を元気にしてくれる小説なんじゃないでしょうか?
それとも、オレが単純なのか??(笑)

投稿: oyajidon | 2011.02.06 22:34

>>oyajidon さん

司馬遼太郎の竜馬は、確かに読むと元気になりますね。
序盤の剣道に明け暮れていたら黒船がやってきた、というあたりが好きです(道場の娘とのアレコレもあるし)。人間ドラマが好きなのだと思います>わたし。
有名どころは一通り読んできたつもりですが、司馬作品で一番なのは、「峠」です。安定した作風(似たり寄ったりともいう)のなかで、キャラ、描写、(歴史の)重さ、そしてフィクションとしての巧みさはコレがピカイチだと思います(思い入れが強いです)。

投稿: Dain | 2011.02.08 07:17

ひどいなぁ…小説ばっかり。
これだから庶民は低学力なんだよ。

もっと技術書とか哲学書とか、そういうのを読みこんで思考力を鍛えないと。

なんでマックスウェーバーがいないの?
なんでスティグリッツがいないの?
なんでサルトルやデカルトがいないの?
なんでニュートンがいないの?

今も昔も本なんて読んでねーじゃん。知的怠慢だね。

投稿: ばしくし | 2012.06.03 13:37

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