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読書は人間がベッドの上でおこなう二つの快楽のうちの一つ

思考のレッスン タイトルは丸谷才一「思考のレッスン」より。読書について、書くことについて、沢山のヒントをもらった。「読書のコツ」、今風に言うなら「読書Hack」。ただし、効率ばかりの安手なものと違って、ひとつひとつ自分で読みといてはヤクロウに入れる手間はある。

■本の読み方の最大のコツ

 最も激しくうなづいたのは、本の読み方の最大のコツ→「その本を面白がって読め」。その本を面白がって、その快楽をエネルギーにして進め、という。言い換えると、「面白くない本は読むな」となる。面白く思えない本をガマンして読んで分からないなんて、つまらない。その時間、別の本を面白がって読んで得られる効用の方が大なり。

 読書は快楽なんだ、ベッドの上でする二つの快楽のうちの一つなんだ。もう一つの快楽が何かは言うまでもないけれど、それぐらい愉しいことなんだ。もちろん、もう一つは睡眠だね。読んで寝て暮らす、これぞ究極の快楽

■本を選ぶポイント

 本の選び方のポイントでは、わたしが心がけていることがズバリ書いてあったので、嬉しくなった→「惹かれる書評があったら、それを書いている人の本を読め」、つまりひいき筋の書評家を持て、という。やってるぞ、「書評家」に限らず。お気に入りのblogで、たまに「良いよ、コレ」と紹介されると間違いなく手が伸びる。良い文を書く人がオススメする本を選べ。

 優れたエントリを書く人は、必ずいい本を読んでいる(逆は真とは限らないが)。わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる。

■本は忙しいときに読め

 ガツンとキた一文。

まとまった時間があったら本を読むなということです。本は原則として忙しいときに読むべきものです。まとまった時間があったらものを考えよう

誰かの名文句に「書を捨てて街へ出よう」というのがあったでしょう。これは読書論としてたいへん有益ですね。書を捨てて野に出てもいいし、街に出てもいい。風呂に入ってもいいし、机に向かってもいいけれど、とにかく手ぶらで、ものを考えよう。


 [本ばかり読んでいるとバカになる]のは、本ばかり読んでいると自分のアタマでモノを考えられなくなるから。借り物の思索で事足れりとし、自分は思考停止に陥るから。だから、「今日はヒマだから本を読もう」は間違っていて、「今日はまとまった時間があるから、じっくり考えてみよう」とするべし。

■ホーム・グラウンドを持て

 じゃぁ、自分のアタマで何を考えるのか? 「自分にとっての主題というか、ホーム・グラウンドを持て」という。興味の赴くまま読みかじってきても、そこに一定のジャンルというか、流れのようなものがあるはず。興味の起点のようなもので、たとえば初めて大型書店に行ったとき、最初に赴く場所がそれにあたる。

 すでに材料はある。今まで読んできた本だ。濫読多読を性とする人でも、その人の追いかけているテーマは読んできた本の山にある。だから、未読のリストを血眼になって消化するのではなく、いったん本を手放してふり返る。

 自分が勝てる、というか得意なテーマは必ずある。もちろんそのテーマの専門家はゴマンといる。ただ、そのテーマを腹に抱えて、他の分野に食指を出す人は、アナタしかいない。テーマの組み合わせの妙を楽しむ。一つのテーマだけでしか世界が見えない人は学者書士に任せておけばいい。手を出したテーマが手におえなかったとき、壁にあたったとき、ホーム・グラウンドへ戻ってきて、そこのフレームで考えなおす。そういう「自分の場所」を意識すべし。

■本はバラバラに破って読め

 型破りなHackもある。本をフェティシズムの対象にしない。大切なのは、本という物体なのではなく、テクストそれ自体だという。本なんて読まないで大事にとっておいたところで、まったく意味をなさない―― こう言い切って、実行している。

 このやり方は、聞いたことがある。「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」(福田和也)によると、小松左京氏は百科事典の必要なところを切り抜いていたという。そうした切り抜きを持ち歩いて、空いた時間に吸収していたそうな。今ならPCその他のガジェットで実現できるやり方だけど、当時としてはモノ凄いHackなり。

■インデックス・リーディング 1

 スゴいやり方その1。本を読み始めるとき、索引から読み始める。索引に目を通すと、著者は何の関心があってこの本を書いたのかというのが分かる。さらに、主題との関係で、当然あるはずの項目が索引にないことがある。

 わたしは「目次」を真っ先に読む。これは「作者が言いたいこと」の優先順位と比重を見るため。受身となって吸収するための「予習」といえる。ひょっとすると、著者よりも幅広い知見を必要とするかもしれないが、「索引」を読む対象とすることで、その本全体のテーマを視野に入れることができる。

 では、「索引」がない本の場合、どうするのか? 丸谷氏は、読み手が索引を作れという。大事だと自分が思ったところは線を引いたり書き込みをしたりして、さらに見返しのところに何ページにこんなことがあったとメモをしておくだけでいいという(←このHack! を裏返すと、「索引を作りたくなるような本を読め」になる、心に刻んでおく)。

■インデックス・リーディング 2

 スゴいやり方その2。前出は、索引を使って本(というより、そのテーマに関する著者自身)を投網のようにつかまえる方法。ここは、キーワードを使って複数の書籍を串刺しにするやり方。つまり、直接的な関連があろうと無かろうと、索引にそのキーワードが出ていたら、しらみ潰しに全部あたる。

 これが最も効果的なのは、図書館。似た本が近い書架に並ぶように構成されているため、一つのキーワードから書籍にたどり着いたら、あとは片っ端から索引をひきまくる。索引がないような本はハナから相手にしないとしても、相当な仕事量になるはず。だいたい一架分をこなすと、主な本どうしのネットワーク関係が見えてくる。意外なところからポインタが張られてたりしてて、思いがけず刺激を受けることを請け合う。

 「脳死」のキーワードで医学から法律、哲学、宗教、歴史と深入りしたことがある(一架読んだ)。次から次へと出てくる本を「処理」するために、このやり方はかなり有効だった。

■「文章読本」に書けなかったこと

 書くほうのHackといえば、「文章読本」になるが、本書では「文章読本」に入らなかったコツが紹介されている。後々のわたしに有用なのは、以下の2つだろう。


  • ものを書くときには、頭の中でセンテンスの最初から最後のマルのところまでつくれ。つくり終わってから、それを一気に書け。それから次のセンテンスにかかれ
  • 頭の中で考えても、どうしても行き詰まるときがある。一番手っ取り早くて役に立つのは、今まで書いた部分を初めから読み返すといい。急がば回れ。そこまで書いてきたエネルギーをもう一ぺん吸収し、それを受け継ぐようにして先へ進む

■文章で一番大事なことは、「最後まで読ませる」こと

 憤慨させても感心させても、文章は最後まで読ませたものが勝ち。書き出しに気を配れ、水増しをするな、スッキリと終われ…と細細と注文が付く。対話なり鼎談のように書け(しかもバレないように)、というのは参考になったなり。

 さて、この長文エントリ、ここまで読まれただろうか…

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コメント

 このサイトで紹介される本の八割に興味がわくのですが、全部買い揃えようとする僕。図書館嫌いというか近隣にまともな図書館がない。戦争請負会社とか読みたいですね。
 ちなみにもう一つの快楽を普通にエロいことだと思った僕は思春期真っ盛り。

投稿: zyanome | 2007.05.29 00:04

弾氏から伺いました。要約を拝見して、「読まなくていいや」と感謝の気持ちです。題名がラジカル過ぎて・・・。もう一つがオ○ニーかセッ○スか頭を悩ませながら・・・。
また遊びに来させていただきます。ベッドの上でパソコンを叩く男。

投稿: blog49 | 2007.05.29 12:46

>> zyanome さん

  >ちなみにもう一つの快楽を普通にエロいことだと思った

極めてフツーです。本書でもそうだったのですが、あえて書かずに会話するのが「妙」なんだと。

このネタ、女性にふると面白いかもしれません。「え、もう一つは、当然スイミンだよ」ってサゲる。でもって、えちぃことを想像して顔真っ赤な彼女に萌えるんだ。

>> blog49 さん

おう、もう一つを「オ○ニー」だと発想するあなたが、なんだかウラヤマシイ。

投稿: Dain | 2007.05.31 01:11

 初めまして
この記事の中でインデクッスリーディング2を昔、実践していました。
でもこれは自分の枠組みを広げるのに良いけども、やはり時間が
あまりにもかかるという欠点もありますね。モラトリアムの時期には
良いかも知れないけど。

ホームグラウンドを持てというのと好きな書評家をもてと
いうのは現在も私は行なっています。

但し、書評家は昔は本の書評、現在はネットのブログに変化しました。
書評を書いている人々の面子も変わりましたし、やはりネットには
良い書評がありますから。

それとこれは書評と関係ありませんが、例えばこのコメントを
書く時も音楽を聴いています。
音楽を聴くスペックも必要ですよ。

投稿: フジキセキ | 2007.05.31 07:16

>>フジキセキ さん

  > 書評家は昔は本の書評、現在はネットのブログに変化しました。
  > 書評を書いている人々の面子も変わりましたし、やはりネットには
  > 良い書評がありますから

確かにそうですね。ネットのおかげで、一つの本を複数の書評で判断することができるようになりました。一人一人の書評子は小さくても、全体知として見ると、かなり有効な選書眼を得られます。


投稿: Dain | 2007.06.02 23:30

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