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「読書の腕前」の上げ方

読書の腕前 同感<->反感の振幅が激しい読書論。言ってることには激しく同意だが、やってることはかつてわたしの通過したところ。

 たとえば、「本は積んで破って読め」や「読書の腕前」の上げ方、あるいは「ベストセラーは十年後に読め」は大賛成。読書は量だというわたしの信条とも一致する[参照]。その一方で、人のオススメを顧みない唯我独尊な選書や、なんでも「円」で計りたがるせどらーちっくな態度は、たまらなく厭だ。

 ―― とはいえ、さすが本職の書評家、良い本をたくさん読んでいる。book of book として「これから読む本」を拾ってモトは取る。さらに、書評をメシの種にすることの大変さが窺い知れて、好きでやってる自分の幸せを噛みしめる。


 著者は岡崎武志氏、朝日の読書欄「ベストセラー快読」の執筆子といえばピンとくるだろうか? 巷のベストセラーを名うての本読みに評させる試みで、「なぜベストセラーなのか」の分析が辛口。

 「ベストセラー」には、売れているだけの本という揶揄が込められいる。そりゃそうだ、ふだん本なんか読まない人が買うから「ベストセラー」になるんだし。著者はそんな人は「本を買う」んじゃなくって、本という形の「話題」を買ってるんだって。ナルホド。これ以外にも、納得したりヒザ叩いて同意しまくること幾度。

  • 「ツン読」も立派な読書。現物が部屋にあることで、少しづつ読まれているもの。読書の腕前を上げるために「ツン読」は不可避
  • 本は万人に開かれた同一のテキストであるにもかかわらず、いざ読む段になると、きわめて個人的な体験となる
  • 読み手を本の世界の波長に合わせるチューニングで、上手い下手は一種の技術だ
  • 本読みには、本の本、いわゆる読書論や書評集が沢山あつまってくる。本それ自体よりも面白く、本が本を呼ぶ状態となる。これは読書の永久運動だ
  • 「詩」は別腹 (←激しく同意!)

 しかし、他人のオススメを「大きなお世話」だと背を向けるのはいただけない。そこまで同感を積み重ねてきた分、とても残念だ。「だって自分が見つけた本で手一杯だもん」と耳をふさぎ、目を閉じる。さらに、図書館の存在をきれいに無視しているのは酷いな。引用元の本を通じて間接的にしか言及しないのは、悪意すら感じる。

 これは、わたしがかつて固執していた読書スタイル。その変遷は[ここ]を見ていただくと分る。この著者の場合、なまじ沢山読んできただけあって、その殻を破るのは不可能かもしれない。

 今のわたしは、ネットを通じて「自分が好きな本」を発信し、「その本を好む誰かがオススメする本」を受信し、反響をフィードバックする。そうすることでストライクゾーンを広げ深めていく。自分の好みを知ったうえで、さらに「これなんてどう?」とオススメする誰かを大切にする。要するに、本を探すのではなく、人を探すんだ。また、広範囲の本を次から次へと食いまくり、一方で味読し、本は常にフローの状態を保つために、図書館と積ン読クを併用する。書店だけで本の全てと思考停止していた昔が懐かしい。

 ネットに限らず、この方法を知らないと、選ぶジャンルは、だんだんと限定的&先鋭的になってくる。もちろん、知の分野は広くて深いので、気分の赴くままつまみ食いしてるだけで一生なんてすぐ終わってしまう。しかし、ホントに面白い本は「名前だけ知ってて」読まないまま通り過ぎてゆく。

 おそらく、著者はSFを読まないだろう。博識な方なので、あるいはスタージョンの法則の前半を持ち出してくるかもしれない――スタージョンが後半に言った箇所を知らないまま。

 前半  「SFの90%はクズである──ただし、あらゆるものの90%はクズである…」
 後半  「…だけど僕はそのクズを愛しているんだ」

 あるいは、この著者は、ダグラス・ホフスタッターのGEBや、ドーキンスといった『理系モノ』は、手を出さないだろう。科学は、現代の宗教だとかいって… せっかくわたしと同じ志を持っているのに、「違う世界を読む愉しみ」を知らないなんて、ああもったいない。同じ理由で、著者にラノベや劇薬モノの毒書案内をしたいね。

 さらに、この人、マンガは一切読まないだろな。「本を読むのが忙しすぎて、マンガなんか読んでられない」なんて断言しそう。「『忙しくて本を読んでられない』というのは、言い訳に過ぎない」と非難した自らの言は置いといて。

 共感するいっぽうで、反感もキツい。良い本を読んでいるなー、と感心した分だけ、「それを読むならコレを読め」などと強引に読ませたくなる―― そんな思いを抱かせるのは、著者の徳なのだろうか。教わるところもある一方で、昔の自分を見ているようでもどかしい… あ、でもプロの人なら仕方がないか。


 自分メモ。「読書の腕前」を上げる本の本と、蔵出しの本
  • 「ポケットの本 机の本」(丸谷才一編,新潮社)
  • 「紙つぶて」(谷沢永一,文芸春秋) ←再再読
  • 「山のパンセ」(串田孫一,集英社)

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コメント

本をたくさん読む人の想像力には感服しました。

投稿: | 2007.04.06 09:04

「おそらく」「かもしれない」「だろう」「だろな」「断言しそう」
非常に悪意を感じる。天然だったらいいけど・・・

投稿: もた | 2007.04.06 17:57

貴方がメール送ってコンタクトを図ってみると面白そう

投稿: もきゅ | 2007.04.07 02:26

世の中にはたいへんな量を読む人がいるんだと
つくづく感心しています。

投稿: honyomi | 2007.04.10 08:53

はじめまして
「読書の腕前」の書評は同感ばかりで、
>図書館の存在をきれいに無視している
この指摘が鋭いと思いました。
私も最近やっと図書館も併用するようになり、殻が破れたと自負しております。
理想とする読書人にやっと巡り会えたと思います。参考にさせていただきます。私の書評も参考にしてみて下さい。

投稿: goldius | 2007.07.19 14:29

おせっかいかもしれませんが、同じ著者の「蔵書の苦しみ」という本ではしっかりと図書館について述べてくれていますよ。こっちの本だったらDainさんにしっかり合うと思います。

投稿: kame | 2015.05.24 18:38

>>kameさん

ご紹介ありがとうございます、まずは手に取ってみますね。

投稿: Dain | 2015.05.27 23:33

著者の本の世界への入り口は漫画だと明記していましたよ、

投稿: 公民館 | 2016.04.29 19:09

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