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劇薬マンガレビュー(第2弾)

 オトナが読んでもトラウマになるような劇薬マンガを求めて→「はてな」で質問[参照]→教えていただいたマンガを読む→激しい衝撃を受ける[参照]→次のマンガへ…といった、ネガティブフィードバックのくり返し。気が向いたとき、手軽に嫌悪感や忌避感、あるいは嘔吐感を味わっている。

 はてなで回答していただいた皆さま、胸クソ悪くなるような作品を紹介していただいて、本当に感謝しています。おまけに、このblogで「そいつを読むならコレはどう?」と追撃コメント頂いたおかげで、定価で入手できる劇薬マンガは一通り集まったのではないかと

 この第2弾では、せっかくご紹介いただいて、ワクワクしながら読んだにもかかわらず、これは劇薬じゃないよ、スゴく面白いよ!と感じた作品をご紹介。ポイントは『わたしが』面白いと思ったところで、人によるとトラウマンガになるかもしれないので注意して。

ブラック・ラグーン 最初は、「ブラック・ラグーン」。本屋で呼ばれてジャケ買いしそうになったことがあったが、劇薬はここだと教えていただいた↓

 基本は軽快なアウトローガンアクションという感じなんですが、これの3巻から4巻に続く日本篇の「普通の女子高生として暮らしていた少女がヤクザの闘争に巻き込まれ、チンピラにレイプされ、その後死んでいく」という鬱展開は本当に読まなきゃ良かったという気持ちになりました。2巻から3巻にかけての変態に嬲られ心が壊れて人殺し人形になってしまっている双子なんてのも非常にくるものがあります。

 どう劇薬なんだろうとワクワクしながら読んでいくと、うわーっ面白いじゃないか。借リモノっぽいハリウッドテイストな台詞回しが煩わしいけれど、シリアスリアルを追求しているのが良。社会派っぽいシチュエーションに、「ありえなさ」加減が激しいガンアクションを『緻密に』描いているトコなんて、最高峰である「ガンスミスキャッツ」を思い出してしまう。

 んで、劇薬ポイントなのだが―― ああ、確かに連載で追いかけてきたら日本編の救いの無さ(というか儚さ)にズギャンと犯られるかもしれない。健気に咲いている花を踏みしだき、毟り取るようなシーンは後味悪いかも(メガネ属性の方は特に注意)。ただ、普通の女子高生がメチャメチャにされるマンガの最高峰「真・現代猟奇伝」には遠いですな(←ぜったいに読んではいけません)。

 あるいは双子編の「どうしてこの双子はこんなモンスターになったのか?」が明かされるトコはヤだろうなぁ… 単なるロリペドSMを突き抜けているよ… 現実にこの双子に施したような『趣味』をお持ちの方はいらっしゃるようだ。小説になるが「マルドゥック・ヴェロシティ」に出てくる子どもに薬物投与して殺し合いをさせ、最後に「きもちいいよ、きもちいいよ」と呟く子どもの手をショットガンで吹き飛ばすスナッフビデオを見ながらマスターベーションする変態を思い出したといっておく。

俺と悪魔のブルーズ 次は「俺と悪魔のブルーズ」、こいつはスゲぇ、吸い込まれるように読んた。装丁からしておどろおどろしい。読むためには開かなければならないのだが、本を開いてはいけないような気にさせる装丁となっている。

 深夜、十字路で悪魔に魂を売り渡した引き換えに天才的なギターテクニックを身につけたという「クロスロード伝説」が元ネタ。この天才ブルーズマンである、ロバート・リロイ・ジョンソンは実在しているが、マンガはこれをベースにしたフィクション。

 舞台は1930年代のアメリカ中西部。魂を売り渡したRJの悪夢のような一夜も恐ろしいし、彼と同行する悪魔(?)の存在感が真黒だ。一皮向くと人種差別がはびこっている田舎での狂った果実さながらの展開は、マンガ読んでるのに息苦しくなってくる。

 読んでるこっちが真ッ黒な気分にさせられてくる。ああ、ノワールって黒なんだなぁとアタリマエのことをしみじみ実感させてくれる(スズキトモユさんが『フォークナー+ジム・トンプスンのブレンド』と評したのはさすが!)

 ―― で、これのどこが劇薬なんだ? こんなにスゴいのに。

Watashino_1  最後は、これはこわい、と自信を持ってオススメできる山岸涼子作品。No.1は「汐の声」。山岸涼子のホラーアンソロジー「わたしの人形は良い人形」所収なんだけど、こわさは「汐の声」の方が上、なんせラストのあのシーンは夢に見たぐらいだもの。そして、どうしてあの少女だけが「見えた」のだろう? と考えて、さらにゾ~っとさせられたから(わたしのレビューは[ここ])。

 お話そのもののこわさだけでなく、トーンが少ない妙に白っぽい絵柄とか、コマの配列がスゴい。こわいところではページをめくるのをためらうように、次のコマへ目を移すのが厭な気分にさせる。んで、バーン!と大ゴマでクる感覚が絶妙。読んでいるわたしの背後から見ているような展開が、「そんなワケないのに」と思いながらも気分が悪くなる。

 某所で「トラウマ漫画人気投票」があり、2001.10.~2003.1によるとベスト10は以下のとおり。

  1 汐の声(山岸凉子)
  1 妖怪ハンター(諸星大二郎)
  3 洗礼(楳図かずお)
  4 白い影法師(美内すずえ)
  5 負の暗示(山岸凉子)
  6 富江(伊藤潤二)
  6 座敷女(望月峯太郎)
  6 奪われた心臓(楳図かずお)
  6 笑う吸血鬼(丸尾末広)
 10 ゆうれい談(山岸涼子)

 同じく山岸涼子作品だと「夜叉御前」が良い(というか、恐ろしい)。怖いんじゃぁない、恐ろしいんだ。何が? 人間が。オバケやユーレイがこわいんじゃない、最も恐ろしいのは、人間だ、という単純な事実に気づく。

 一回目に読むときはは怖くないけれど、二回目、全部分かった上で読み直すと、心にグっとのしかかるものがある。彼女が見た「鬼」とは、一体なんだったのか…

 正直、15歳の美少女の運命が気になって、そこに着目してばかりいた。だから彼女がどういう目に遭うかは、かなり早い段階で見抜いていた ―― もちろん皆さんもピンとくるはず。ところが、わたしの期待は終盤の大ゴマで粉々に打ち砕かれ、ビックリはさせられる。それでも許容範囲内のはずだった…

 でもね、二回目を読むと、つまり、彼女をジッと見つめる「鬼」の正体を知った上で読み直すと、―― 「鬼=業」なんだとつくづく思い知らされる。人間って、ほんとうに、こわい

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コメント

映画評論家・町山智浩さんが大プッシュされている、新井英樹『真説 The world is mine 』をお勧めします。

投稿: Red-pine | 2007.11.02 00:04

>> Red-pine さん

いま、まさに読んでいます。真説版を全巻購入しているのですが、恐ろしくてなかなか進みません。

投稿: Dain | 2007.11.03 14:22

はじめまして。劇薬マンガといえば山野一の作品なんかはどうでしょう?ねこぢる(この人のマンガもおすすめ。インド旅行記とか)の旦那さんです。危なくていやーな話ばかりのってます。

普通のマンガだと松本次郎がおすすめです。鬱系だと「ヨイコノミライ」とか「ヤサシイワタシ」なんかが面白かったです。

成年マンガだとオイスターの少女地獄なんかがおすすめ(あーでも氏賀Y太先生よりは見劣りしちゃうかも)。堀骨砕三先生(天才!)なんかも。

レビュー楽しく読ませてもらってます。ではでは。

投稿: 犬神博士 | 2007.12.17 20:46

>> 犬神博士 さん

そういや、ねこぢるは好きだったワリにはダンナさんの方はお留守でした。チェック入れますね。あと、「ヤサシイワタシ」はアフタヌーン連載で追いかけてました。堀骨砕三は成年雑誌で読んでたつもりですが、単行本までは…という加減です。


投稿: Dain | 2007.12.18 23:29

古い記事に失礼。

同じ山岸涼子作品で、『天人唐草』というのが少し劇薬…
というか、「クサビ」のような趣のある一品です。ドスッ
つづめて言えば恵まれないガキの話なんですが、
個人的には『ブラッドハーレー』よりキました。
日本が舞台だからかな~

投稿: 五九朗 | 2008.03.08 08:08

>> 五九朗さん

ああ、確かに… 「親の歪んだ抑圧と支配」と、この話をまとめるならば凡百ですが、それが必然的に悲劇へ向かっていくところが救いがないですね。「そういう親」を持った女性だと、より劇物かも。

投稿: Dain | 2008.03.08 08:33

古い記事ですが、失礼します。
ブラック・ラグーンが劇薬でしたら、
西川秀明さんの殺し屋・1という漫画も胸クソ悪くなります。
>>スナッフビデオを見ながらマスターベーションする変態
こういう方々が主人公の漫画です。

投稿: ポンチョ | 2008.07.25 03:29

>> ポンチョさん

ありがとうございます、イチですか…

未読ですが、そのエグさはかねがね噂に聞こえています。
本屋では横目でにらんで通り過ぎていますが、そのうち、
手にしてみようかと。

投稿: Dain | 2008.07.25 22:52

私も殺し屋・1をオススメします!
というか、Dainさんならとっくに読まれてると思ってました~

私はあまりグロいのは好きではないのですが、話が面白すぎて先を読まずにはいられませんでした!

グロシーンも強烈なのですが、この本の真髄はそのストーリーだと思います。
この作品は究極のSとMのラブストーリーなのですが、主役達が変態過ぎて、最終巻のイチ(ドS)と垣原(ドM)の対決では、笑い過ぎて腹筋が崩壊するかと思いましたw

イチとの対決を乙女のようにトキメキながら待っている変態組長垣原(ラスボス)が、かわいかったです(2chに萌えスレが立ってましたw)

とにかく最終巻の垣原がかわいいので、ぜひ見ていただきたいと思います(ノ´∀`*)

投稿: nao | 2008.09.02 01:36

>>naoさん

プッシュありがとうございます。
「そのうちマンガ喫茶ででも…」と思っていたのですが、マンガ喫茶自体行かなくなってしまったので放置状態でした。全10巻…買って読みます、秋の夜長に。

投稿: Dain | 2008.09.03 00:36

古い記事にごめんなさい。

ジョージ秋山作品『銭ゲバ』『アシュラ』等が劇薬マンガだと思います。

あと少女マンガテイストが苦手でないなら安野モヨコの『脂肪と言う名の服を着て』もお薦めです。

投稿: | 2010.11.08 19:28

>>名無しさん@2010.11.08 19:28

「銭ゲバ」ですか!子どもの頃に読んでえらく衝撃を受けたことを覚えています。「脂肪と言う名の…」は嫁さんにオススメされて愉しく(?)読んだ記憶が。「アシュラ」は未読かもしれませんが、「土粥」が出てくるお話なら大昔読んだはず。

投稿: Dain | 2010.11.11 08:27

石ノ森章太郎のヒーローものは意外と後味が悪い。盲点。

投稿: 1830m | 2010.11.21 15:19

古い記事に失礼します。

この記事を読んでいて思い出したマンガなんですが、
関よしみさんという方のマンガが小学生当時の自分には超怖かった覚えがあり、今回ちょっと調べてみたら結構トラウマになってる人が多いみたいです。 参考http://ja.wikipedia.org/wiki/関よしみ

当時色々読んだのでかなり記憶が錯綜してますが、絵柄はフツウの昔っぽい少女マンガなんですが、ひょんなことから中学生ぐらいの女の子がとんでもないいびつな世界に引きずり込まれる的な展開が多かった様に思います。(少女マンガなのでエロはなし。多分)

それぞれのタイトルは覚えてない(スミマセン)んですが、強烈に覚えてるエピソードは
・女の子が監禁されてたこ糸様のひもで両手の親指だけしばられて吊るされている
・高額賞金を獲得するゲームで自分のパートナーの眼球に生理食塩水を注射して眼圧を上げていき、最終的に破裂させると言う競技を強制される

みたいなかんじです。。大人になってからは読んでないので微妙ですが、機会があれば是非是非ご一読下さい!

投稿: Neeewtrino | 2010.12.17 17:50

>>Neeewtrinoさん

おお~それは強烈ですね。
ちょっと調べたら「愛の墓標」(10億円の懸賞金で愛を試すゲーム)のようです。未読なので読みます!
オススメありがとうございます。

投稿: Dain | 2010.12.18 17:30

はじめまして。押切蓮介さんの「ミスミソウ」は読んだでしょうか。

テーマは、田舎の学校で起こるいじめですが、その行き着く先がハンパないです。田舎特有?のドロドロした人間関係と、主人公の美しい少女が非常に対照的です。

Dainさんの好みに合うかどうかわかりませんが、自分は読んで後悔しました。うげぇ。おいそれと人に勧められるものではありませんが、ここなら安心して勧められます。劇薬でした。

投稿: koh | 2011.01.26 23:40

>>kohさん

押切蓮介作品は、「サユリ」の上巻を読んでガクブルしているところです。そういや、そろそろ下巻が出る頃だと思います。「ミスミソウ」は良さそうですね(劇物として)、読みます!プッシュありがとうございます!


投稿: Dain | 2011.01.28 00:34

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