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あなたのマンションが廃墟になる日

あなたのマンションが廃墟になる日 巷を騒がせている耐震偽装設計は決してヒトゴトではないのだが、『犯人』は特定されており、司法での決着を待つ状況に至っている。

 わたしはあまのじゃくなので、むしろ4年後に直面する問題をいま知っておきたい。なぜなら、問題が深刻化するころは、『犯人』はとうに去っており、引き継いだ当事者は被害者ヅラをすること必至だからだ。永住するつもりで購入したマンションが、ローン完済時に住めなくなる可能性に警鐘を鳴らす「あなたのマンションが廃墟になる日」は、非常に参考になった。

 総務省の調査では住宅のサイクル年数は30年(木造は26年)だそうな。国土交通省が2002年に公表した事例では「老朽化」で再建されたマンションの平均築後年数は37年となっている。これに比べて、欧米の住宅サイクル年数は、

 イギリス141年
 アメリカ103年
 フランス86年
 ドイツ79年

 なぜ日本の鉄筋コンクリートマンションは30年少々で壊されてしまうのか? この素朴な疑問から出発し、著者は、老朽マンションの建て替えの厳しい現場、震災復興の過重な負担に粉砕されたコミュニティを取材する。

 取材と深堀りの中で、30年周期でスクラップ&ビルドを繰り返さなければならない「日本的メカニズム」を探し当てる。

 それは、田中角栄の日本列島改造論から始まった土地神話に依存しており、「地価は常に上がり続ける」「景気は常に右肩上がりである」という一時代前の発想を根拠としている。つまり、容量率を上げて建て替え、新しく増えた住戸を販売して再建費を捻出するという手法で、住民の世代交代の時期、政府の景気対策と一致した周期を取っている

 また、著者は、住宅サイクルの短さを文化の違い、すなわち「石の文化」と「木と紙の文化」になぞらえる説明にも、欧州の建築史をあげて反論している。さらに、高温多湿な気候風土の違いからのマンション短命説に対しても、コンクリートの寿命に影響があるのは寒暖差であり、北欧の方が負担が大きい、と反論しており、いちいち説得力がある。

 むしろ、思想の視点に立つなら、「住」をストックとみている欧米と、商品としてしか見れない日本の違いだという。マンションは、そもそも30年で寿命が果てる建物ではない。壊さねば儲からない業界の論理に左右され、まだ居住可能な老朽棟が、経済優先、利権優先のリクツにより、30年でトドメを刺してきたのだという。そのメカニズムが明らかにされず、30年寿命という言葉だけが独り歩きして、老朽化に悩ませるマンションが強引に建て替えられれば、悲劇の連鎖を生む。

 たとえば、近年、3万人を超える自殺者が経済的に追い込まれた最大の要因「住宅ローン」…

  生きているうちに返さなければならない
   │
   └→返せなくなったら、生きられない
       │
       └→返せなくなった
           │
           └→死ねばよい

 確かに、バブル最盛期にローンを組んでしまったセンパイは、「死ねばローンがチャラになる」契約の話をするとき目が光る。ローン完済しても、建物が老朽化しておりとても住めないと考えている。

 では、どうすればよいのか? 本書は問題提起だけにとどまっているのかというと、違う。

  • リファイン建築に代表される老朽建築の蘇生法
  • リースホールドという地価に依存しない土地利用法
  • 土地ではなく、家が資産価値を生んでいる無暖房住宅や外断熱

といった、アカルイミライへのトリガーになりそうな「点」も紹介している。実践者はあまりにも少ない&遠いが、具体名を挙げているので、自分からアクセスできる。本気で考えている人には非常に参考になるだろう。

 戦後、コンクリートで造られたマンションや団地のうち27万戸が、「スクラップ&ビルド」のサイクルとされてきた、「築後30年」圏内に、いままさに入った。2011年にはその数が100万戸に達するという。日本的メカニズムの限界が「団地のスラム化」といった現象としてマスゴミに取り上げられる日は、そう遠くない。

 いまから4年後だ

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コメント

他にもなにか「団塊」のカウントダウンが始まっていそうですね・・・。
アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ

投稿: kokoGD(萌興画展) | 2007.01.01 20:12

あけましておめでとうございます
今年もよろしく<(_ _)>
私は田舎に一軒家を建てて、子々孫々親子代々永く住むのが理想ですので、29歳で札幌市郊外に一戸建てを買いました。
買ったのがバブル真っ盛りだったので、ローン負担は非常に大きいですが、頑張って維持していこうという気持ちになります。猫も飼えるし、大騒ぎも出来るし、車も2台、バイクも自転車も買えますよ。(お金があれば)
困るのは転勤のとき、家をどうするか?という問題が必ず起こること。ライフスタイルを変えようと思ったときは負担になりますね。
でも年金を貰うようになったとき、住むのは何処でも(行政サービスの差はありますが)良い訳で、周りとの距離感がちょうど良い一戸建ての街は意外と住みやすいと思います。
これから住宅を購入されるかたは、先を見据えて一戸建ても選択肢に入れて欲しいなと思いました。

投稿: 鉛のZEP | 2007.01.02 10:20

 おめでとうございます。いつもコメントありがとうございます。今年もよろしくお願いします。

>> kokoGD(萌興画展)さん

 「流れ」は既に変わっているにもかかわらず、過去の方向にしがみついている人・モノ・サービスが沢山ありますね。中でもマンション購入は、最もリスキーなものだと思います。

>> 鉛のZEP さん

 「住」については、世帯構成、収入、ポリシー、ライフスタイルと、考慮すべき要素が沢山あるので、「正解」は一概に決められないですね。それでも、今のわたしにとっては、鉛のZEPさんが採った選択は「正解」に見えます… というよりも、わたしが目指すべき「目標」に近いと言った方がぴったりします。

 本書を読むまで、「マンション」という選択肢なら、プライバシーが保たれてて、わずらわしい近所付き合いも無い(イヤならおさらば)…などと考えていました。しかし、現実は真逆だということが分かっただけでも、読んでよかったと思っています。

 マンションの方が、人生にロックインされます… むしろ、人生の方が、マンションにロックインされるのかも。

投稿: Dain | 2007.01.02 20:22

日本は地震国だと言う設定は一切無視ですか

投稿: j | 2007.01.03 22:19

>> j さん

 ご指摘どうも、本書では阪神淡路大震災で倒壊したマンションの話が出てきますので、そちらをどうぞ。

投稿: Dain | 2007.01.03 22:32

いつも読書の参考にさせて頂いております。

同じ著者に「マンション崩壊 あなたの街が廃墟になる日」というのもありますね。どちらも未読かつ市立図書館に無し。この際なので、購入リクエスト出してみましょうか。

投稿: | 2007.01.10 00:21

>> 名無しさん

 「マンション崩壊 あなたの街が廃墟になる日」は、よりヒートアップしているようですね。決してヒトゴトではないこの話、そうなる前に読んで「準備」しておきたいですね。

投稿: Dain | 2007.01.10 00:36

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わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: あなたのマンションが廃墟になる日 (http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2007/01/post_f6cb.html) トラバ先に対して私が言いたいことは、既に拙エントリ、貧乏人は家をつくるなにて言ってしまっているような気がす... [続きを読む]

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