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ITエンジニアの「心の病」

 自殺1名、過労死1名、入院不明。不明なのは数えられないぐらい多いから。自宅療養も含めると結構な数になる。噂話ではなく、直接関係ある人。PG/SE/PM…10年もこの仕事をしていると、そんな「同僚」「上司」「協力会社の人」が出てくる。超弩級プロジェクトでは、最初は「人月」で数えるが、そのうち「柱」で数えるようになる。

 誰も死んでいないのに「デスマーチ」と嬉しそうに。

 本当に酷くなると誰もデスマなんて言わなくなる。代わりに、行方知れずが出てくる。単なる出社拒否じゃなく本当に行方不明になる。燎原の真っ只中にいるときは気づかない。「○○が来ませーん」『なにー!どーすんだよ、コレなんとかしなくちゃ』…人じゃなく仕事の心配ばかりするようになったらオワリ。
ITエンジニアの心の病
 おかしくなるまで仕事する/させる/させられるハメにならないように…そんな自戒も込めて「ITエンジニアの"心の病"」を読んだ。「ITエンジニアがとりつかれやすい30の疾患」が並んでいて、一つ一つ自分に当てはめながら読んだ。

 類書、類サイトより秀でているのは、疾患を羅列するだけでなく、危険信号を4つの段階に分けて説明しているところ。自分だけでなく同僚・上司・部下の"兆候"に当てはめることができる。マネージャーは必読。

  デフコン1:気分の変化に現れるシグナル
  デフコン2:身体症状として現れるシグナル
  デフコン3:行動異常・感覚異常に現れるシグナル
  デフコン4:自殺を予告するシグナル

 また、予防法やストレス解消法が詳述されている。どこかで見聞きしたものばかりだが、断片的ではなく、まとまっているのがよい。わたしの場合、「いい加減」と「よい加減」の話が響いた。メンタルヘルスを考慮に入れて自分のキャリアを再考してみる。

 さらに、自分ではどうしようもなくなってしまったらどうすればよいかが書いてある。保険が適用できてSSRI(抗うつ剤)込みで、初診3,000円なんてことは頭の片隅に置いておこう。精神科、神経内科、神経科、心療内科、一般内科 とあるが、自覚症状に応じ、どの科を受診すればよいかも分かる。

 「ITエンジニアがとりつかれやすい30の疾患」を自分に当てはめてみる。

1.頭痛
 原因はストレスや疲労。肩こり頭痛は職業病だと諦めていたが、「えぐるような痛み」は思い当たる。ストレスによる痛みには冷えピタではなく、暖めると良いらしい。眠気覚ましも兼ねて冷えピタしてたのは逆効果だったのかも。

2.慢性疲労症候群
 普通とは違う激しいだるさに悩まされる。今のところ、だるさの原因は、酒・睡眠・ゲームのいずれかしかないので大丈夫だろう。

3.エコノミークラス症候群
 血液どろどろ環境でハイリスクに。"IT技術者"はじーっと座り仕事しているからだそうな。わたしの場合はむしろ逆で、仕事が込んでくると、ずっと立ちっぱなしになる。「座ってる時間=便座」になる。

4.自立神経失調症
 ストレスによる自動コントロール装置の乱れとあるが、いまのところ縁なし。

5.失感情言語化症(アレキシサイミア)
 あるはずのストレスを感じない。いるいる、まるでマシンのような人。システマティックな性格なので仕事相手には重宝していたが、普通人よりも大きなストレスを抱えていたとは。

6.ITてんかん
 パソコンがてんかん体質者の脳波を刺激。ボケモンビームでアワ噴いた子どもがいたからなぁ。

7.社会不安障害(対人恐怖症)
 プレゼンテーションができない。多かれ少なかれ、誰しもあると思うぞ。だんだんに慣れてくるもんじゃないかしら。

8.うつ病
 何ごとに対しても意欲がなくなってくる。実は分からない。「何をしても絶望感」しか感じられない時期があったが、それが「うつ」かは未だ分からずじまい。まぁ、立ち直ったから、うつ病じゃなかったんだろうと独り合点。

9.睡眠障害
 寝付けない、眠れない。わたしもそんな時期もあった…と思っていたが、もっと深刻なものらしい。寝てもすぐ目が覚めてしまったり、疲れているのに眠れない。ゆっくりたっぷり眠ることが一番のゼイタクなわたしにとって、睡眠障害は恐怖以外の何ものでもない。

10.適応障害
 ストレスが普通の生活への適応を阻害。火消し屋として放り込まれる度にキリキリと腹痛になるが、適応障害だったのだろうか。

11.インターネット依存症
 ネットに接続していないと不安になる。そうそう、ブログ始めた頃とか(w

12.電磁波症候群
 そういや、さいきん電磁波エプロン見かけないな…

13.VDT症候群
 画面を長時間見つめると現れるさまざまな症状。

14.ドライアイ
 目の感染症を招きやすくなる。これも職業病とあきらめている。

15.化学物質過敏症
 多様な症状が多様な現れ方をする。

16.過敏性大腸症候群
 ストレスが腸の働きをかく乱。腸はsecond brain(第2の脳)ということをはじめて知った。確かに「ストレス→下痢」は「台風→眠気」と同じぐらい黄金律。

17.呑気症候群(ゲップ・おなら)
 ストレスが空気の飲み込みを増加。ストレスが溜まるとまず暴食に走ってたなぁ。

18.ディスペプシア(胃の痛みやもたれ)
 長引く原因不明の不調。わたしには無縁だが、「ストレス→胃痛」の人がいる。ナポレオンのごとく腹に手を当てている。

19.胃・十二指腸潰瘍
 胃壁の血流悪化で粘膜にキズ。

20.摂食障害
 食べられなくなったり、食べすぎになったり。あるある、ストレス太りは経験済み(もちろん元に戻した)。ストレスが溜まると"本能"に忠実な行動をとりたがるようになった。例えば食欲と性欲。睡眠時間は極端に削られているため、食べることとスルことにがっついてくるのは自然なことだと思う。

21.狭心症・心筋梗塞
 発症前の不摂生と大きな関わり。

22.脳梗塞
 身体の片側に現れる異変に要注意。「予告」がある発作らしい。上司の一人は会議の直後、これで逝った。

23.円形脱毛症
 ストレスで免疫システムに狂い。経験済み(今は戻った)。ハゲしくハゲるが、戻るのも早かった。

24.顎関節症
 ストレスが引き金であごがガクガクに。嫁さんと一緒になって分かったこと→「歯軋りがひどい」

25.頸肩腕症候群
 ストレスが主因で首・肩・腕に痛み。

26.手根管症候群
 使いすぎが招く手指のしびれ。あるある。プログラマよりもテスタやってた頃にひどかった。プログラマの頃は打鍵してる時間よりも考えたり調べたりする時間の方が長かった。一方テスタ時代はひたすら打鍵してた。

27.腰痛
 「心の問題」に着目すると解決することも…本当か!? これも職業病だとあきらめている。一つだけ贅沢していいなら、CPUよりもメモリよりも、良い椅子が欲しい。

28.痔核
 座りっぱなしの作業は痔にまっしぐら。時間の問題だと覚悟している。

29.生理不順・無月経
 ストレスが招く更年期様症状。

30.勃起障害(ED)
 ありがたいことに未経験。疲れ魔羅ならしょっちゅうだが(w

 こうして並べると、お題の「IT技術者」に限らないかも。著者は医師らしいが、「IT技術者」のイメージからくる 「まじめ」「ロジカル」「融通きかない」「独りで抱え込む」と想像して書いたんじゃぁないかと。

 なんだか実態と離れた記述もある。例えば「うつ病になりやすい残業時間」。月45時間を超えると、うつ病になりやすくなるそうな。さらに月100時間を超えるか、平均80時間が2~6ヶ月続くとリスクが飛躍的に高くなるらしい

 えーと、45時間はふつうだし、酷くなったら100時間超もふつうだと思うんだけど…おかしいかな?

 それでも本書を通じて、メンタルケアも自己管理の対象になるなーと思い知った。今までは、「呑・食・眠」だけコントロールしてたけれど、「心」も考慮しとかないとダメなのね。

 「心」も考慮した自己管理とは、好・不調の原因を「呑・食・眠」以外で探し、それを意識的に行動すること。例えば、残業キツいなーと思ったら、ギブアップ宣言しちゃうとか。「他に任せられない、オレでなきゃできない」という傲慢に飲まれないように、自戒自戒。

 おまけ。本書で知った中央労働災害防止協会の疲労度蓄積チェックリストは定期的にやっておくといいかも。定期的にチェックすることでメンタルヘルスを意識づけた仕事のやり方ができるようになるはず

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警告無しで読むには酷な小説

 あるいはトラウマ本について。sagara17さんにとっての劇薬小説「電話がなっている」(川島誠)を読了。中学んときに読んだらトラウマ本になってたかも。けれどもスレっからしのオッサンには本歌取のモトをあれこれ想像して楽しんでしまった。sagara17さん、興味深い本をありがとうございます。セカンド・ショット

 罪深いのは、この作品の紹介→「だれかを好きになった日に読む本」(小学中級から)であること。初恋の回想で始まるこの作品、たしかに恋愛譚かもしれないが、そのつもりで読んだら酷い目に遭う。紹介者は"大人"なんだろうがデリカシーなさすぎ…というか悪意すら感じられる。小中学生は"当事者"だろうがッ。

 トラウマ本とは、読んだ事実そのものを消し去りたいほど手ひどいダメージを受け、名前を見るのもイヤになった作品のこと。「劇薬小説」とも重なるが、児童文学や青春小説のフリをしている場合が多く、トシゴロの方は【警告付き】で読むべき。スズキトモユさんの「トラウマ児童文学」が参考になるかと。

 問題なのは警告無しでうっかり読んでしまうこと。もっと非道いのは、「面白いよ」「タメになるよ」といったまちがった紹介につられて手にすること。
夏の葬列
 例えば、国語の教科書にある「夏の葬列」(山川方夫)。「戦争の悲惨さ」を伝えるため教科書に採録されたらしいが、激しく勘違いしてる。これは"ミステリ"として読まないと危険。これをノーガードで読んでしまい、強烈なラストで琴線が焼き切れてしまった中学生は少なくないだろう。

 あるいは、わたしの場合になるが、「芋虫」(江戸川乱歩)が該当する。子供向けにリライトした「二十面相」にハマり、親の本棚を探したのが運の尽き。誰も警告してくれなかった…いや、こっそりだから自業自得か。「芋虫」の濃厚すぎる男女(特にオンナ)のドロドロに一発でヤラれた。以後わたしの性嗜好に微妙かつ深刻な影響を与えてつづけている

 サイアクな例は隣の家の少女」の宣伝文が「もう一つのスタンド・バイ・ミー」であること。少年時代を回想する冒頭が似ているだけで、衝撃度&毒性&読後感は雲泥ッ!さては最初だけ読んでキャッチコピー書いたな!あやまれ!ケッチャムさんにあやまれ!
隣の家の少女
 読書は毒書。多かれ少なかれ、小説には毒が含まれている。この事実は暗黙知として読み手も書き手も了承している。もちろん「毒」は人によりけり。ある人には特効剤になるかもしれない。年齢・経験でまた違ってくるので一概に言えないが、「不快感を受けるかも」程度の警告はしてオススメするべき。

 「隣の家の少女」を誰かに勧めるとき、オススメ文句は「これ面白い本だよ」にならないことは、読んだ方なら分かっていただけるはず。

 でしょ?

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