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「ローマ人の物語」を10倍楽しく読む方法:「プルターク英雄伝」と比べ読むと…

プルターク英雄伝 「ローマ人の物語」だけを読んでいくと、塩野史観というかカエサル萌え心にあてられて辟易するかもしれない。2000年も前に死んだ男にここまでイれコんでいるのを見ると、ちきゅうのおとこに飽きたところなのかなー、と思ったり。

 そして、「ローマ人の物語」だけを読んでいると、塩野氏が飛ばした(軽く触れた)ところが気になってくる。例えばクレオパトラのくだり。軍事的な劣勢を挽回すべくカエサルを色香でローラクしたとかしないとか… このあたりは、パスカルの「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら歴史が変わっていた」が有名だが、塩野氏は「据え膳喰っただけ」とニベもない。しかも、下半身でコントロールされなかった事実として、カエサルの遺言でクレオパトラとの子に言及していないことをあげつらう。

 ううむ、ここはひとつ、底本として著名なプルターク英雄伝をひいてみる。ガードの固いカエサルに遭うために、クレオパトラが一計を案じるところ…

 ── クレオパトラは小船に乗り、夕闇にまぎれて王宮に近きあたりに上陸した。彼女はいかにして人目にふれず宮中に入るべきかとほうに暮れていたが、やがて一計を案じ寝台のふとんにもぐりこみて、召使がこれを運びあげてなにげなきさまに宮門を通り抜け、シーザーの居間に持ち込んだ。シーザーはまず彼女のこの大胆なる機転を見て敬服し、次には彼女の社交ぶりの魅力に征服させられたので ──

 夜這いはコソコソしているけれど、ふとんに入って堂々と突破するなんてステキ!しかも、カモネギならぬ、ふとん美女なら多くを語るまでもなかろう。こんな面白いエピソードをイヤイヤ触れる塩野氏… おばあちゃんながら、かわいいぞ。

 というわけで、ローマ人を語るなら避けて通れない「プルターク英雄伝」は名著と誉れ高い …が、岩波文庫で全12巻は読めねぇ。そんなものぐさなわたしにうってつけの「プルターク英雄伝」のまとめ本があった。コンパクトにまとめられてて訳も平易なんだけど、塩野ローマにハマっているわたしからすると英語読み(シーザー)に違和感を感じる。以下、気になったのを対比してみる。やっぱり「カエサル」で読みたいねっ

  • カエサル → シーザー
  • スッラ → シラ
  • キケロ → シセロー
  • ポンペイウス → ポムペイ
  • カト → ケートー

 これを併読しつつ、塩野氏が書いていなかったところを意地悪く読むのも愉しい。

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「ハッカーズ」はタメになるよ

ハッカーズ 常識の斜め上を行くハッカーたちの告白。おもしろい、おそろしい。

 DNS逆引きやポートスキャン、キーロガーといった、なつかしい技が紹介されている。今となっては本書どおりに『活用』するのは危険きわまりないが、ハッカーたちの考え方はとても参考になる。

 ハッカーたちはスゴ腕のプログラマ、というわけではない。プログラミング技術よりもむしろ、人間の弱点を探す技術(というか思考方法)が優れている。つまり、ネットワーク管理者やシステム開発者の思考プロセスに入り込み、彼らと同じ目でコードやインタフェースの振る舞いをたどりながら、穴を探り出す。例えばネットワークの「設定ミス」や、暗号化や乱数発生モジュールの「手抜き」を嗅ぎつける。

  • ネットワークの境界『だけ』注目しすぎて、イントラネット内はザル状態
  • 機器のログイン名・パスワードがデフォルトのまま("administrator"というアカウント名、"password"というパスワード)
  • OSやソフトのセキュリティパッチあててない
  • anonymous そのまんま(誰かふさげよ!)
  • ゾンビサーバー!

 その「穴」を探り出す発想が常人の斜め上を行っている。もちろん、自動化や解析のためにコードを書くことはあるけれど、それは必要だからDIYしているにすぎない。warezをコンビニで買ってきて自己満足に浸るねとらん厨房とかなり違う。

 ボーイングやホワイトハウス、あるいはマイクロソフトのイントラネットに侵入するやり方は想像つく。しかし、カジノにあったスロットのROMから吸い上げ→逆アセンブルは見当がつかない(エミュ自作?)。ハードウェア、ソフトウェア、ソーシャルエンジニアリングの三面からアタックを仕掛けられたらひとたまりもないだろな…

 その地道さに呆れるばかりではなく、彼らの発想がスゴい。例えば、

  • そのアカウントの正しいパスワードを探すのではなく、"password"でヒットするアカウントを探す
  • 設計思想にのっとったハッキング── OK、わたしが従業員だとしたら、システムに対してどんなリクエストを出すだろうか ってね。ユーザーの操作が合法か非合法か見分けるのは難しい。なぜなら、流れているデータに合法も非合法もないから
  • 「わざわざそこまでやる奴はいないだろう」って開発者が言うたびに、わざわざそこまでやる奴がフィンランドあたりに現れるんだ

欺術 ハッキングテクニックなんてしらない良い子(?)のわたしにも、気づきがたくさんあった、と報告しておこう。warezのftpよりもメジャーな奴を使うほうが監視の目をくぐり抜けやすいとか(名前勝ち、というやつ)、マイナー機器(ルータ/サーバ)ほどreadme.txtや詳細やマニュアルが/tempあたりに落ちてやすいとか、防ぐほうからするとドキッとすることが書いてある。

 ソーシャルエンジニアリングに限定したネタなら、同著者の「欺術─史上最強のハッカーが明かす禁断の技法」あるいは、以前のエントリ「USBメモリを用いたソーシャル・エンジニアリングあたりがオススメ。

 ご利用は、やめておけ。

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PMP試験対策 1.2プロジェクト・ライフサイクル

 ここでは、プロジェクト・ライフサイクルについてまとめる。

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■ プロジェクト・ライフサイクルの特性

 あたりまえだが、プロジェクトはいくつかのフェーズに分割される。どのように、いくつに分割されるかはプロジェクトによって異なるが、システム開発でいうならば、大きく、設計/製造/テストに分けられる

 もちろん開発手法によって種々の分け方・呼び名があるし、あるフェーズを繰り返しているところもあるだろうが、そうした分割したフェーズの集合体をプロジェクト・ライフサイクルと呼んでいる。

 [p.21:PMBOK] の図のポイントは以下のとおり。絵で見ると一発なので絵を見よ。

プロジェクトの開始時プロジェクトの中間プロジェクトの終了時
要員数やコストは少最大急激に落ち込む
リスク最大徐々に減っていくリスク最小(→完成)
変更(手戻り)コスト極小徐々に増えていく変更コスト極大
ステークホルダーの影響力大影響力はだんだん減っていく影響力はほとんど及ばない

 プロジェクトの初期はリスクが極大のため、そもそもそのプロジェクトを実施するべきか否かを調査することがある。これをフィージビリティ・スタディと呼ぶ

■ プロジェクト・フェーズの特性

 フェーズの特性としておさえるべきところは、要素成果物(仕様書、プロトタイプ、サービス)の完成や承認により特徴付けられる。通常、フェーズ終結時のレビューは、現在のフェーズを終了させ、次のフェーズ立上げの承認を得る意味を持つが、フェーズの完了が次のフェーズの開始を意味するわけではないことに注意。

■ プロダクト・ライフサイクルとプロジェクト・ライフサイクルの違い

 [p.24:PMBOK]の図が全て。

■ プロジェクト・ステークホルダーとは

 プロジェクトに積極的にかかわっている人、プロジェクトからプラス・マイナスの影響を受ける個人や組織、プロジェクトの目標や成果物にプラス・マイナスの影響を及ぼす人[p.25:PMBOK]

 ステークホルダーとプロジェクトの関係図は、ちょっと変わっている。「プロジェクト・スポンサー」の位置付けがヘンなのだが、理由があるに違いない。スポンサーは、ステークホルダー、マネジメント・チーム、プロジェクト・マネージャと境界を接しているが、より広く接している「スポンサー」と「マネジメント・チーム」と密接に関係しているとか。

■ 組織構造

 [p.28:PMBOK]の図が全て。補足として、マトリックス型は二人の上司(プロジェクトのマネージャと機能部門のマネージャ)に報告義務があるとか、弱いマトリックス型だとプロジェクトマネージャの役割は調整役となるとか(調整役の方が格上)


  • プロジェクト調整役(Project Coordinator)
  • プロジェクト促進役(Project Expeditor)

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PMP試験対策【まとめ】


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「ハマースミスのうじ虫」は読者を選ぶ逸品

ハマースミスのうじ虫 極上のミステリ… ただし読み手を選ぶのでご注意。

 ひとくちに「ミステリ」といっても窓口も奥行きも幅広なので、自分の経験で手をつけると失敗する(「けいざいがく」と一緒だねッ)。ともあれ、最近のジェットコースター型ミステリが好きな読者は止めておいたほうがいい。ダン・ブラウンよりコーネル・ウールリッチが好き、という人向け。

 展開は派手さもなく淡々としている。渋~い英国ミステリとでもいえばよいのか。amazonレビューはこんなカンジ…(太字化はわたし)

 風変わりな趣味の主キャソン・デューカーは、ある夜の見聞をきっかけに謎の男バゴットを追い始める。変装としか思えない眼鏡と髪型を除けばおよそ特徴に欠けるその男を、ロンドンの人波から捜し出す手掛かりはたった一つ。容疑者の絞り込み、特定、そして接近と駒を進めるキャソンの行く手に不測の事態が立ちはだかって…。全編に漲る緊迫感と深い余韻で名を馴せた、伝説の逸品

 登場人物が読んでる本やワインネタがいちいち鼻につく。読み手の教養レベルが試されているかのような小道具が出てくるたびに、英国ってのはやっぱり階級社会なんだなぁとつぶやく。後でこれが物語の基本柱になっていることに気づくのだが、まさか計算して書いたわけでもあるまい。

 情景描写に独特の緊張感があり、読むことの快楽を味わえる(解説では「一本筋が通っている」と表現してた)。この緊張感、最初は羽音のように小さいものだが、話が進むにつれだんだん増幅し、最後の追い込みのトコなんてワーンと響くようだった。

 面白いのは主人公のキャソン。若くして成功した上流階級の経営者。金だけでなく容姿端麗で女受けも良い。ルックスだけでなく教育も折り紙付き(オックスフォード卒)。しかも独身。

 義憤に駆られて謎の男を追いかける「いい人」なんだけど、その熱中っぷりがスゴい。金あるなら誰かにやらせりゃいいのに、あるいはヤードがいるでしょ、というわたしのツッコミを尻目に、執念に近いほどのモーレツぶりで追い詰める。ラストに近づくほど犯人が気の毒に思えてくる。

 心理描写のうまさに感心しながら読了し、解説で著者の履歴を知ってびっくり&納得する。本書に読者を驚かすような仕掛けがあるとするなら、解説だな。

── とここまで書いてきて、解説文にある読後の「余韻」ってなんぞや? と思う。

 ラスト数行のちょっと意外な"補足"のことを指しているんだろうなぁ… と考えて、今になってようやく気づいた。どんでん返しとまではいかないけれど、唐突な感じのするラスト数行は、本書が生まれる理由だったんだな。どうりである場面で人称に違和感を覚えたわけだ。さらに、食べたものや飲み物の名前を克明に書いていたのは備忘の意味だったんだね。いずれにせよ、虚栄心が犯罪を産み、同じ虚栄心によって滅ぼされる犯罪者は、とてもユニークだから、このゲス野郎のことは何度も思い出すだろう。そう、彼が望んだように

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