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「涼宮ハルヒ=キャッチ22」説

 嫁さんの冷やかな視線を浴びつつアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」を愛でる。一見バラバラの話構成から、「キャッチ22」を思い出す。作り手はこんな古い小説を読んでるはずないだろうし、そもそも全く違うお話なのだが、気になって仕方がない。

 よって仮説「涼宮ハルヒ = キャッチ22」を立ててみる。ハルヒという陥穽にキョンは堕ちつつあるのかッ!? 別な意味で目を離せなくなってきた。

 妄想を深める前に、「キャッチ22」を解説しよう。キャッチは「落とし穴」、22は「軍規第22項」のこと。米空軍爆撃部隊の軍規で、「精神に異常をきたせば兵役を逃れることができる」のこと。しかし、これには暗黙の了解があり、「精神に異常をきたしたことを軍医に出頭して説明しなければならず、それができたら正常だということで申請は認められない」…つまり絶対矛盾。ジレンマ、パラドキシカルな状況を、「CATCH22的」と呼ぶ。

 この「キャッチ22」の下、兵は有無を言わさず死地に赴かされ、価値は完全に逆転する。文書が事実に優先し、正気の者は狂気に追い立てられ、狂気の者は反対に正気の者をキ印呼ばわりする。誰かの頭の中と、実際に起こっていることが混沌としてくる。何が正しく、何が間違っているのか分からなくなる。

 この分裂症気味の状況を、作者はすごいやりかたで書く。このやりかたは誰もマネできない。斬新というか人を喰ったやりかたというか、とにかく類を見ない。未読の方のお楽しみのため、ネタバレは反転でどうぞ。

 目次を見ると、章ごとに人名がずらっと並んでいる。その章の「主役」だ。主役を中心に話が進むが、次章・前章とまったくつながっていない。脈絡も無く事件が発生し、説明無く因果の応酬がある。後の方で発端や原因が出てくるが、これも関連なく淡々と書かれる。全部読めばストーリーがつながるが、話の継ぎ目はバラバラ滅裂、同じエピソードが幾重にも錯綜するシュールさ。初読では間違いなく困惑する(←これこそ作者の狙い)

 つまりこうだ。著者ジョーゼフ・ヘラーは、一連の話を「ふつうに」書いた後、切り刻んでトランプのようにシャッフルしているのだ。読み手はこれに気づくまでに相当苦労する。いったい何がどうなっているのか、何がどうなろうとしているのか、奇矯な行動は、狂人のフリをしているのか、本物のキ印なのか、わけが分からなくなってくる…で、読者は本当の主人公ヨッサリアンと一緒になってこの混沌とした状況を右往左往する、という仕掛け。

 この、時系列で錯綜するエピソードを受け手に組み立てさせることを強いる(あるいは混乱したまま受け止めてもらう)やりかたが、ソックリ。原作読んで「予習」してきた連中ならいざしらず、未読だと、何がなにやら、だろう。古泉一樹が何の脈絡もなく野球大会に出てたり(後に転校生のエピソードが紹介される)、その野球大会での長門有希のホーミングモード呪文が説明なく出てきたり(異界マンションの話は後で出るはず)、孤島での惨劇の事件編だけで後編は「またこんど」になってたり、第0話「朝比奈みくるの冒険」は時系列的にどこ? 「予習」してても戸惑うことおびただしい。未読の方だと、それこそキョンと一緒になって右往左往するはず(←これこそ製作者の狙い)。

 この仮説に基づくと、オチが見えてくる。それは「キャッチ22」そのもの。何かを証明しようとする行為そのものが反証明につながる。

 つまり、小説「キャッチ22」では、狂気を説明できれば兵役を忌避できるが、狂気を説明しようとするなら狂人ではない。一方、「涼宮ハルヒ」では宇宙人・未来人・超能力者であることを証明しようとするならば、その存在ではないことになってしまう、というオチ。ハルヒに対し、3人が自分の存在を明らかにしようとしたことをもって、その存在を否定するような結果になる(ハルヒ曰く「本当の○○人なら自分からバラしたりはしないでしょ」)。

 なんてね。

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コメント

管理人さんが結婚していたと言う、驚愕の事実。

投稿: kuroko69 | 2006.05.22 22:29

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