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たたり

たたり
 怖い、じつに怖い。「こわい本」大好きなわたしだが、今までさんざんそのテの小説は読んできたつもりだが、こいつはスゴく怖い思いをした。恐怖が直接的に記述されているのではない。スゴい描写が飛び出てくるわけでもない。

 どうして怖いのかというと、恐怖が間接的に、読み手の想像力に働きかけているかのように描かれているから。それはまず、登場人物が丘の屋敷から感じる、はっきりしない違和感として描かれる。不安定な感覚は不安に、そして恐怖へと静かに変わってゆく。

 じわじわ、じわじわ変わってゆく。

 屋敷のもつゆがみや感覚を狂わせる仕掛けは、登場人物へ影響する。さらに、彼らの調子がズれてゆく感覚が読み手まで伝染する。読書という行為で、読み手は多かれ少なかれ登場人物とシンクロしているもの。最初、親しみを持てていた人物がだんだん離れてゆく。

 読み手は本能的に追いすがろうとする。

 結果、読み手は登場人物といっしょになって、おかしくなる感覚を味わう。単に彼らが恐ろしい目に遭うから怖いのではない。さいしょは行動を共にし、心の中まで読み取れる彼らが、いつのまにか読み手の傍らを離れて先へ、闇の向こうへ行ってしまうのが怖い。

 真っ暗な中に取り残されるのが怖い。

 「S.キング『シャイニング』、R.マシスン『地獄の家』に影響を与えたゴシックホラーの傑作」とあるが看板に偽り無し…むしろ本書が本家本元というべき。

心霊学研究者モンタギュー博士は、幽霊屋敷として知られる「丘の屋敷」を調査するため三人の男女を呼び集めた。まるで意志を持つかのように彼らの前に怪異を繰り広げる「屋敷」。そして図書館に隠された手稿が繙かれ、秘められた過去が明るみに出るとき、何が起きるのか?幻想文学の才媛が描く、美しく静かな恐怖。(amazon紹介文より)

 「シャイニング」は「シャイニング」、「地獄の家」は「ヘルハウス」という題で映画化されている。「たたり」は「ホーンティング」なり。どの映画も良かったけれど、この「作中人物とともにおかしくなる感覚」は味わえない。これは小説ならではの特権として、たっぷり味わって欲しい。

 冬こそ、ホラー。

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