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妹+ツンデレ+密室殺人「きみとぼくの壊れた世界」

きみとぼくの壊れた世界 萌え本としてスゴ本。かつ極悪なラストでやんの。「読後感サイアクの後味の悪さ」で紹介されたはずなのだが、とても楽しませていただいた。その理由として、わたし自身ギャルゲを少々たしなんでいたからだと告白しておく …ってか端々でそれを意識させられる(もちろんその経験がなくても充分楽しめる)。以下amazon紹介「きみとぼくの壊れた世界」(西尾維新)より(太字化はワタシ)。

 禁じられた一線を現在進行形で踏み越えつつある兄妹、櫃内様刻(ひつうちさまとき)と櫃内夜月(よるつき)。その友人、迎槻箱彦(むかえづきはこひこ)と琴原りりす。
彼らの世界は学園内で起こった密室殺人事件によって決定的にひびわれていく……。 様刻は保健室のひきこもり、病院坂黒猫(びょういんざかくろねこ)とともに事件の解決に乗り出すが――?

 これは小説仕立てのギャルゲ。電脳紙芝居あるいはビジュアルノベルとも呼ばれ、「萌え絵+ヒネた主人公のモノローグ」で構成される。プレイヤー(読者)はときどき出てくる選択肢から「選ぶ」ことでお話を先に進め、異なる結末を目指す(マルチエンディング)。んで、がんばって読み進めたごほうびに18禁絵が出る(たいてい女の子の"攻略"に成功したときに、ね)。

   1章  もんだい編
   2章  たんてい編
   3章  かいとう編
   終章 えんでぃんぐ

 「もんだい編」での妹とツンデレがたまらない。妹が狂うサマや、クラスメイトがツン→デレ→○○に変化する阿吽(もちろん読者と筆者との阿吽)は萌え死にそうになった。期待した通りの展開は別名「おやくそく」とも言うが、ここまでキチンと守ってくれる1章だけでお腹いっぱい。西尾維新は初めてだが、「戯言」が多少鼻につくが、ウザくなるまでの寸止めが絶妙。

 この小説はミステリ(?)のつもりらしい。笑止。ミステリとしてはしょうもない。「もんだい編」のラストで殺人事件が起きるのだが、どうでもよい。あたしにゃ2章以降はオマケとしか思えなかった。あるいは1章を元に『まっとうな』ギャルゲを製作するという話なら乗ってみよう。

 しかし、ラストはとんでもなくサイアクなり。いいえ、これはいまあなたの頭に浮かんだ「よくある意外な結末」ではない。仮にギャルゲ「きみとぼくの壊れた世界」があるなら、主人公は壊れた世界での文字通り "BAD END" にたどり着く。ギャルゲならいいよ、だっ
て「ゲームを中断する」→「最初から始める」で違うエンディングへ向かって進むことができる。要はバッドエンドに至った選択肢を選ばなきゃいいワケだ。

 バッドエンドとは何か?

 大切な誰かを失う? 自失? 悲劇という喜劇? その逆? 最初に戻る? 釈迦の手? 夢オチ? チルチルミチル?

 ちがう。

 均衡がゆらいでいる「壊れた世界」のほうがまだマシ。それでもお話が進むから。このラストは「動かない」ところが着地点。よくある話なら死や狂気をもってくるが、ちがう。どこにも進まないし、何かが流れ出ることもない日常。常に1しかない選択肢を選び続びとり、世界はそこで完結する。出口なし。

 こいつを勧めたtakyさんが勿体つけてたのも分かる。このラストは確かに非道なのだが、最もサイアクなのは、これは確かに主人公が選んだ「えんでぃんぐ」なのだから。そしてギャルゲの読者なら最初に選ぶだろう選択肢の分岐先なのだから。

 これは小説仕立てのギャルゲ。主人公は「常に最良」の選択肢を選び続け、何回読もうが結末は同じ。

 見返しにこうある。

 「人生は罰ゲーム」なんだと。

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この手法のご先祖様「妖魔の森の家」

 スッキリ明快な帰結なのに、こんなにも生臭く肌寒い読後感は最高ですな。ディクスン・カーの短編「妖魔の森の家」のラストでまで読んで、一瞬だけ「自分の脳が理解することを拒絶した」そのとき、脳みそが動いたかのような錯覚が味わえる。この手の亜流をたくさん読んできた私にとって、「これがご先祖サマだぁ」と思わず喝采。薦めていただいたsimotuki11さんに感謝!

 密室消失トリックとしては陳腐かもしれないが、それはこれをパクった小説のせい。伏線の秀逸さ、設定の巧妙さ、展開の旨さ、全てこれらは、読み終えてから気づく。ああ、そういうことだったのね、と。大きなナゾの傍らにある小さなトリックは気づかれにくい。犯人は、「意外な」人物でなければならない。ナゾは、全てが終わった後に明かされなければならない。

 そして読者は、最後の一行で戦慄しなければならない。

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