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「夏のロケット」と「なつのロケット」

 まなめはうすでベタ誉めだったので読んでみた。これがスマッシュヒットだった。面白いよーと一気に読める「夏のロケット」(川端 裕人)は、最後までハラハラさせられ通しだった。

 高校の同級生が集まって、ロケットを作って宇宙まで飛ばしてしまおうとする「青春小説」なのだが、そこへ至るまでのウヨキョクセツとトラブルの数々がすごく良く書けている。ネタバレになるが、ラストのロケットの打ち上げに成功するシーンまで読んだなら、きっと感動するはず。いつのまにやら登場人物の誰かに感情移入している自分に気が付いて。読者をここまで連れてくる筆力はスゴいと思う。

 ただ、ロケット工学の考証に濃淡があり、綿密に検証して書いているトコもあれば、科学的根拠をスルーして強引にお話を進めているなぁ、と思ったトコもあった。やるならトコトン勉強して緻密に書いてほしかった。

 この小説に出てくるのが「火星年代記」で、劇中劇ならぬ小説中小説の気分を味わえる。なんたって、この短編集の第1話は「ロケットの夏」という題名なのだから。わずか2ページにも満たない話だが、ローンチされるときのワクワク感、噴射がひきおこすひと時の"夏"、そして彼の地(未来)への不安が描かれている。余談だが、最終話「百万年ピクニック」が一番好き。淡々+衝撃的なラストシーンは味わっておかないと。

 「夏のロケット」に触発されたマンガが「なつのロケット」(あさりよしとお)で、これまた面白い。「夏の…」がリーマンだとしたら、こっちは小学生がロケットを作る話。ロケットを飛ばす理由はずいぶん違うが、情熱は一緒。ラストの日暮れ時、「成功していたら衛星は今どこを飛んでる!?」「この辺を飛んでたら見えるかも…」の次の一コマ「今、真上…」は鮮やかな感動。そう、宇宙はいつだって「今、真上」にあるもの。

 特筆すべきは「なつのロケット」に出てくるセンセイ(女)が、「メガネ」「ジャージ」「三つ編み」と3属性を全て備えていること。作者があさりよしとお先生だもの。お約束なのかもしれませんな。しかし、最重要な「ドジっ娘」要素が欠けているため、萌えキャラとなりえないことを予め断っておく。

 「なつのロケット」で小学生にでも飛ばせるなら、私だって…!と思うなら、なつのロケットは本当に飛ぶか!?をどうぞ。ロケット工学からの観点で「飛ぶため」の考証がなされている。わたしのような横着者は計算式は飛ばしていきなり実物の図面をひきたくなる(なんせ設計図まで公開されてるし…)。ロケットの先端に爆発物を取り付けたら立派なミサイルになるのだから、こうした情報はそのうち規制対象となるかもしれないねっ。

 最後に。シロートがロケット飛ばす話ならプラネテスPHASE.4「ロケットのある風景」とか「オネアミスの翼」を思い出す。打ち上げるとき、プラネテスは冬でオネアミスは春だったはずだが、記憶の彼方の光景ではもくもくとわきあがるロケット雲がどうしても入道雲とだぶってしまう。

夏にはロケットがよく似合う。

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「東大で教えた社会人学」と「東大で学んだ卒業論文の書き方」

 「東大で教えた社会人学―人生の設計篇」は、購入前に立ち読みするべし。さもないと「常識」を買わされたと憤慨するかもしれない。

 なぜなら、社会・会社での暗黙知をまとめてあるから。会社での泳法、所得控除、借金・ローンの方法など、フツーの人なら会社でイヤでも身につけていくものが、講義になっている不思議。確かに、学生時代から知っているのと知らないのとでは、大きな違いが生ずるかもしれない。例えば会社選び。就職ジャーナルや会社案内からでなく、四季報を読め!というアイディアは面白い。

 しかし、端々にただよう典型的な東大臭のこうばしさにはいただけない。選民としての自尊心からなのか、ステレオタイプなラベルを張って「だから○○はダメなんだ」→「だからキミたち(選ばれし者)は○○するべきなんだ」と展開される。例えば「文系・理系」「特急・鈍行」ラベルが未だ現役なのには驚かされる。東大臭とは加齢臭なのかもしれない。

 この講座を企画した畑村洋太郎氏は「失敗学」というとてもユニークな考え方を提唱している。その成果として、失敗事例を分析→データベース化している(失敗知識データベース)。彼が 「失敗した東大卒(理系)」を目の当たりにしてこの講義・本を思い立ったのかと想像したらちょっと笑えた。臭いさえ気にしなければ学生さんにとても役立つかと。

 この本のレビューを漁っていて、すばらしいサイトを見つけたのでご紹介。中田 亨氏の東大で学んだ卒業論文の書き方はとても役立つ。学生のみならず、仕事でレポートを書くときも使える。HowTo本は巷に数多にあれど、買う前にまずここを一読してみてはいかが。類書の大半は駆逐されるぞ。いくつか引用するので惹かれたら全文読むことを強くオススメする。もちろん「あとで読む」でも。


  • 題名:説明的なタイトルを付ける。例えば「人体計測装置の研究」では舌足らずであり、「赤外線平行投影法を用いた人体計測装置」とか、「海中でも使用可能な人体計測装置」などがよい
  • 要約:この研究が新聞記事になったなら・・・と、イメージしてまとめる
  • 結論:「要するに~~~だった」を書き、結論表を掲げる
  • 参考文献:足りないなと思う場合は、大型書店に行き、専門書の本棚を眺めてみることである。東京なら、八重洲ブックセンター(東京駅八重洲口)、神保町の書泉グランデ、池袋のジュンク堂、渋谷のブックファースト、渋谷の大盛堂、神保町の三省堂などである。必ず関連する本が見つかるはず
  • 謝辞:すぐ書く!実は非常によく読まれる部分

 「いい論文とは何か?」「ダメな論文を書く14の方法」や、推敲のやり方など、論文を書く上で必要十分な情報がまとめられている。小話「卒論の代書屋さん」は笑った。真実だから。「研究の心得」「研究と不正行為」は2回読んだ。凝るな。凝ったアイデアより素朴なアイデア。問題に突き当たったら、直接的で露骨な力技に走るよりも、問題の前提を洗い直す。問題を分解する。「AもBも行うもの」は得難いが、バラバラにできるなら簡単になる。いっそAなしでBは出来ないか。思考の惰性を無くすという箇所は何度も読むことになるだろう。

 末尾にブックガイドがあるがこれも良さげ。既読した本から察するに、良本が紹介されていることがわかる。わたしが知らないスゴ本がありそうな予感。

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