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「戦争請負会社」読書感想文5(最終回)

「沈黙の艦隊」(かわぐちかいじ)をご存知だろうか。核ミサイルを保有する自衛隊の原子力潜水艦が「核の抑止」を売り物に独立国家宣言する話。ステイツが核の抑止を売り物に同盟国に対し安全保障を「売って」いるのなら、「核抑止の傘」を手にしたものも同様のサービスを売れば良い、という発想だ。強引で妙に確信的な展開なので、とりあえず面白く読ませてもらったが、荒唐無稽なり。

なぜなら、この「核抑止の傘をレンタルする」というビジネスモデルの致命的な弱点は、恒常的にサービスを提供できないから。いわゆる補給と新陳代謝のことだ。水・食料は日本を同盟国とした補給を行ったが、乗員クルーの新規採用や操艦教育まで考えていない。今は最新鋭かもしれないが、老朽化のことも想定外。たった一艦で戦局の帰趨を決めることなど、ぶっちゃけありえない。同作者の「ジパング」、古くは「戦国自衛隊」(半村良)を挙げてもよい。テクノロジー優位は一時的なもので、それを持続させるために莫大な兵站作業を必要とする。絵空事を例に挙げたが、

戦争に関するテクノロジーの非対称化がどれだけ進もうとも、根幹部分は変わらない

どんなウォー・シミュレーションでも都市の占領は歩兵しかできない。良質な兵士を恒常的に供給するためには優れたインストラクターが必要だ。兵士を効率・安全に戦地へ派遣し、現地を制圧するためには戦闘・戦略の作戦計画を必要とする。その事前準備として情報収集を要するし、リスクアセスメントも必須。もろもろの作戦支援には運搬、建設、水道・食糧の供給、居住空間、通信、交通の確保をやっておく必要がある。そうしたもろもろの作業は教練によってのみ、習熟される。

なんのことはない、戦争とはプロジェクトなのであり、それに気付いた企業の順に、軍事請負業へ参入する

AKの向こうで脳漿が散ったり、子どもが背中から撃たれたり、バンカーバスターが引き起こす凄惨な光景は、マスゴミどもにとって「絵になる」が、彼らはそれだけに「戦争」というラベルを貼りたがる。僻地へガソリンを運んだり、簡易住宅を建てるのは? 兵士が戦闘域で銃を撃つのは「戦争」かもしれないが、非番の兵士を安全域へ運ぶのは? 妨害波、ハッキング、盗聴行為がまかりとおる戦地で上官の指示を効率的に暗号化するプログラムを組むことは?

「戦争とは国家がなしえる行為であり、軍がそれを具現化する」という前世紀的な発想でいる限り、本書が指摘する戦争行為のボーダレス化・グローバル化には気付かないままマスゴミに誘導され易い。日本は国として非戦を唱えているが、既にこうした企業と提携している日本企業があることは、注意深くメディアより取り除かれている

戦場の通信手段の整備と防護を行う支援部門企業がある。一例として、I・ディフェンス社は、米国と英国の国防省、国家安全保障局、CIAなどと仕事をしてきた。この企業はすでにマイクロソフト社、シティグループ、伊藤忠商事といった大会社と協定を結んでいて、PMFと別の業界との間に生ずべき異業種間連携の前触れのようである

おまけ。英国系警備会社に勤務する日本人が襲撃・拉致された件について。わたしがあれこれ言う話ではないので、彼の立場について書かれた箇所を引用するに留める。

現行の国際法は主として個人傭兵を対象に書かれていて、この産業にはほとんど対応していない。国家レベルでの規制や監視も最小限しかない。その結果、軍事請負産業とその社員は法律の灰色領域に存在していて、法的地位も不明確で説明責任も最小限のままである

なお、筆者はこの問題こそが戦争請負会社の本質的な問題であり、対応する国際法の制定を早急に進める必要があると提起している。

最後に。本書にあるPMFのサイトのいくつか。一見、まっとうのIT企業に見えるものや、見るからに勇ましい(w)ものもある。こうした企業は合従連衡・買収が激しい。うたかたのごとくかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるサイトなし。

Airscan
AMTI
Armorgroup
BRS(Halliburton)
Custer Battles
DFI International
Dyncorp(Computer Sciences Corporation)
Excective Outcomes(Intwine)
Hart Group
IDEFENSE
L-3Communicaitons
Logicom(Northrop Gruman)
MPRI(L-3MPRI)
Northbridge
PAE
Ronco
Rubicon
SAIC
Sandline
Southern Cross Security
Sukhoi
Task International
Vector-aerospace
Vinnell

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