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PROBANKプロジェクト

PROBANKとは富士通が開発した次世代基幹系システムのパッケージ・ソフトウェアの名称。PROgressive BANKing solutionの略で「プロバンク」と読む。地方銀行をターゲットとした勘定系システムを再構築、1999-2000にかけて、東邦銀行など多くの導入契約を次々と結んだ。しかし、北日本銀行などが契約解消を発表する。開発が難航し、稼動開始が遅れると富士通から通告があったからだと言われている。

富士通の目算は、最初のユーザーである東邦銀行と「PROBANK」を作り、並行して他の銀行にも売っていく、というものだった。しかし、肝心の東邦銀行との開発が計画どおりに進まなかった。「遅れを挽回するため、東邦に優秀なSEを総動員した。そのため、他の銀行向けのプロジェクトが止まってしまった(富士通幹部)
(選択9月号より)

PROBANKプロジェクトが難航した理由はIT-Proで指摘されている。地銀システム共同化プロジェクトに注目では、ITベンダー主導のパッケージ開発の是非を問うている。PROBANKは富士通主導だったが、「仕様の定義に苦労」「どこまでを共通化するかといった切り分けが難航」したという。別記事ではさらに切り込みを入れ、プロジェクトマネジメントの視点からすると、営業は補給線でありプロジェクトのリソースを考慮せず無理を重ねた場合の「好例」だという。IT-Proの富士通,復活への指針より引用。

営業の拡大路線がPROBANKプロジェクトの崩壊を呼び込んだという意見がある。富士通技術部門のある幹部は、「営業幹部がSEのリソースを考えず、無理に新規顧客を開拓したのが一番大きな原因だ」と話す

あくまで「外の人」である私の見解。PROBANKプロジェクトは「プロジェクト」ではなく、「プログラム」だったのではないか? コンパイルが必要なプログラムのことではない。「PROBANK東邦銀行プロジェクト」や「PROBANK十八銀行プロジェクト」といった関連するプロジェクトグループをマネジメントする"program"だったのではないか?

その根拠は2000年2月の報道発表でのPROBANKの「目的」にある。富士通、地銀に代わり基幹系システムを運用する新会社設立(2000/2/8 internet watch)より。

銀行の基幹系や情報系などのシステム運用や管理を銀行に代わって行なう。勘定系(預金、融資、為替など銀行の主力業務を処理するシステム)を中心とするバックオフィスシステムから、各行のミドル、フロントに至るまでトータルなアウトソーシングサービスを提供する

つまり、各行の商品やサービスはそれぞれ競争競合種種雑多だろうが、基幹系は銀行によってそれほど大きく変わらないだろう。コアの部分は東邦銀行の次期システムを参考に作り上げ、後は各行ごとにコンポーネントの追加やスキンの変更によるレディメイドを目指していたのではないだろうか。

このアプローチはとても上手いと思う。さらに基幹系開発の初期投資は、契約が増えれば増えるほど割安となるため、上手くいけば銀行標準業務のパッケージに化けていたかもしれない(といったら買いかぶりすぎ!?)。

しかし、最初の東邦銀行からつまづきがあったため、他行のプロジェクトからリソースを引っ張ってくる荒業をやったようだ。つまりプロジェクトレベルでのクラッシングを行ったのである。通常のクラッシングでは「同一プロジェクトの」クリティカルパス上にない資源をクリティカルパスへ移動するが、この場合はPROBANK東邦銀行プロジェクトがクリティカルパスだったのだろう。

もちろんプロジェクトを跨ったリソースの移動は、プロジェクトマネージャの仕事ではなく、経営レベルの判断によるプログラムマネジメントだよもん。

PROBANK東邦銀行プロジェクトが難航した理由として、前出の「仕様の定義に苦労」「どこまでを共通化するかといった切り分けが難航」にもう一度着目したい。「仕様の定義に苦労」なんてどんな小さなプロジェクトでもあたりまえ。これを天下の富士通がわざわざ理由に挙げているのは、どこまでがPROBANKコアであり、どこからが東邦銀行向けなのか、スコープ定義がされていなかったんじゃぁないかと。プロジェクトを跨ったスコープの定義なんて想像を絶するが、大まかな切り分けすらないままプロジェクトに突入したんじゃぁないかと。

結局、2003/9/16に東邦銀行でのPROBANK稼動開始に至り、秋草直之会長は「大変なエネルギーを使ったが、約束どおり共同利用型のパッケージ・システムを作り上げた」と胸を張った(東邦銀行がPROBANKによる新勘定系を稼働2003/09/16 IT-Proより)。少し前の2ちゃんスレでは「次どーすンべ」といった会話が飛び交っていたので、現在は安定稼動していると勝手に想像する。

その一方で、PROBANKオープン化も進んでいるようだ。DCA案件情報の銀行系開発案件富士通の汎用機での生保損保システム開発などを見ていると、「そのDASD切替はPROBANKの?」 と勘ぐってみたくなる。もしこの妄想が本当なら、基幹系は汎用機で、ラッピングはオープンシステムでとすみわけをするつもりなのだろう。

ホントのところは「中の人」でないと分からないが、私が知る限り富士通でお仕事されてる人はとても優秀。技術のみならずヒューマンスキルも優れている… 実は「もと富士通」の方々なのだが… 残念ながら「いま富士通」の人と一緒に仕事をしたことがない。もっとスゴいのだろうか? 「内側から見た富士通――成果主義の崩壊」でも読んでみますか。

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コメント

Dainさん、はじめまして。

じつは、「内側から見た富士通」を上司が読んでいて、タイトルに魅かれて借りたのですが・・・

なんというか、すごくひどい本でした。

内容云々ではなく、光文社ペーパーバックスのポリシーで、単語の後にちょこまかと英語が挿入されているんです。

「企業側は少しでも人件費labor costsを抑制make smallしたい。富士通の場合もその例外exceptionではなかったが・・・」(内側から見た富士通p67より抜粋)
ってな具合に。

まるで、しゃっくりが止まらない人の講演会を聞いているような気分です。

ではでは~。

投稿: kata | 2004.09.29 10:57

kataさん、コメントありがとうございます

きっと英単語もいっしょに覚えられるような配慮なのでしょう… か?
2chを見る限り、暴露本としてよく売れているようですが、書いた人もちょっと…というツッコミがちらほら

はてなダイヤリーの感想を見ててお腹いっぱいになりました
http://d.hatena.ne.jp/asin/4334933394

投稿: Dain | 2004.09.29 13:08

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