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アメリカ文化の広告代理店

「プロパガンダ株式会社」(ナンシー・スノー)を読了。ボスニア紛争で国際世論を操作する私企業をえぐったスゴ本「戦争公告代理店」みたいなモンかなぁと読んでみて、あらビックリ。米国民の税金で運営される、アメリカ万歳を世界に向かって喧伝するトンデモ組織があったそうな。

その名も合衆国情報庁(United States Information Agency)略してUSIAという。クリントン時代にこの組織で働いていた筆者の論点は非常に明確だ。

合衆国情報庁は「米国事情を諸外国に伝える」ことと「諸外国との教育・文化交流を果たす」ことを目的とし、合衆国民の税金により運営されてきた。

しかし、冷戦時代は事実上デモクラシーのプロパガンダとして合衆国以外の国に対し、ステイツの広報活動を行っていた。

さらに、冷戦後は、アメリカ株式会社の支援組織として、NAFTAのような自由貿易協定の環境整備を行うなど、ステイツの経済的利益に貢献することを主たる目的とした活動を行うようになった。

結局、政府が自国民を対象に宣伝活動を禁止する法律により、合衆国情報庁そのものの情報は、合衆国民に明かされることはなかった。

つまり彼女は、合衆国情報庁とは米国政府の公式な宣伝機関であり、「好ましい米国観」を「製造」し、世界に「輸出」することによりステイツの国益を増進させる機関だったといいたいらしい。

合衆国情報庁は1998年の省庁統廃合により、現在は国務省に統合された一組織USINFO.STATEとなっている。あいかわらず合衆国マンセーな情報を垂れ流している。

この本の読みどころは、スノーの辛口な主張ではない。好ましい米国観を外国に対し宣伝することで、民主主主義は輸出できる。ただ米国のマネをすればよいと大真面目に考え、実行してきた機関が存在するということだろう。物質的に豊かでカッコ書きだが「自由」「平等」が喧伝されている超大国。経済・軍事的に他国を圧倒する一方で、その国民として生きること自体にリスクを伴っている国。米国のマネをすれば豊かで自由で平等な国家になれるのだろうか? 半世紀ものあいだ懸命にマネをしてきた日本という国家は、歴史的にも稀有な「全体洗脳に成功した国」なんだろうなぁ…などと思ったりもする。

もうひとつの読みどころは合衆国情報庁の歴史だろう。第一次世界大戦ではその前身の組織、広報委員会(CPI:Committiee of Public Information)の活躍が面白い。この組織、ドイツを攻撃するための世論を形成するために尽力するわけだが、その見事な結果は、当時の米国民のドイツ攻撃に対するアンケート結果だろう→「あれは戦争を終わらせるための戦争だった」とか「民主主義のため世界を救うことが目的だった」とか、日本に2回も原爆を投下した理由と激しく一致していることが面白い。世論構築、合意操作の効果的な手法をちょっと解説すると、ポイントは次の通り

大衆をコントロールするためには、社会を牛耳る少数の支配者、一握りの知識人がアメリカの国民世論を上から巧みに操作する必要がある

さらに、読んでよかったなーと思ったこと。9.11以降、合衆国政府が対イスラム圏にPR活動を委託した相手はJ・ウォルター・トンプソン会長のシャーロット・ビアーズ女史だったこと。広告業界のカリスマ的存在の彼女が何十億ドルもかけて行ったPR活動はかなりお粗末な内容だったらしい。識者はとっくに知ってる話かもしれないが、私はこの本で知った。

いまや「輝かしいアメリカ」はハリウッドとディズニーの独壇場なのだろう。世界はハリウッドを通じてアメリカを知ろうとするあまり、現実の UNITED STATES OF AMERICA なり THE WHITE HOUSE に面食らうことになるのかもしれない。「ハリウッド映画」といえば歪んだアメリカの代名詞となっていることなんて、小学生ですら知っていることなのに。

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コメント

Dainさん、こんばんわ、

以前米国で「リーダーシッピ・ワークショップ」というのを受講しました。この主催がたしかUSIAだったと思います。いんやぁ、これがすごい!確かに民主主義を輸出しようとしているだけあります。すくなくとも、えらくなる直前のバーシェフスキーとか、どっかの省(農業省だったかな?)の長官の次くらいにえらい黒人の女性とか、国会図書館のリサーチャーとか、どこの馬の骨かわからない連中を集めてばんばんディスカッションさせちゃう!日本で留学生を集めてここまでやっているプログラムってあるのでしょうか?お陰で私は自由主義的な経済が最高で政府は口をはさむな!ってのが信条だったんですけど、すっかり「やっぱり政治は必要だ、政治家は大事だ」と転向してしまいました。

いろいろこの辺はおもしろい話しもあるのですが、少々さしひかえます。Dainさんとはもっとプライベートにお話ししたいですねぇ(笑)。

べき乗の法則とネット信頼通貨を語る夕べ!
http://c.gree.jp/?mode=community&act=view&community_id=426

投稿: ひでき | 2004.10.05 00:25

「べき乗の夕べ」ですか…お誘いありがとうございます。感謝というよりも感激に近いです。ひできさんのプレゼンはきっとアドレナリン全開なんだろうなぁ… USIAプログラムの内容も、もっと聞きたいですー

しかし、残念なことですが、仕事以外の時間は全て家族のためのものなので、いましばらくネット越しのおつきあいに止めさせて下さい。ゴメンナサイ。子どもがもう少し大きくなれば…

そういや↓で斬られていましたね。ここからかなりのアクセスがあったことと推察いたします。
http://japan.cnet.com/column/mori/story/0,2000050579,20074758-2,00.htm

投稿: Dain | 2004.10.05 21:17

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