第12章:プロジェクト調達マネジメント(その2)
ここでは、プロジェクト調達マネジメントをまとめます。
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keywords
・契約形態の選択
・定額契約
・実費償還契約
・T&M契約
・定額契約のメリット・デメリット
・実費償還契約のメリット・デメリット
・T&M契約のメリット・デメリット
契約形態の選択(p.150)
ズバリ試験に出るところ。それぞれのタイプの特徴と、どういうときにそのタイプを採用するのかを押さえておく。「○○という条件でどのような契約が有利か?」といった問題が出る。
契約形態は以下の通り。
- 定額契約、一括請負契約
- 実費償還契約
- T&M(タイム・アンド・マテリアル)契約
何を主眼に置くかで、どのタイプの契約にするべきかが決まる。
- スコープがどれぐらい固まっているか? あるいは流動的か?
- プロジェクトがスタートしてから内容が変更される可能性がどれぐらいあるか(頻度・影響度)?
- 買い手がどれぐらいその仕事について経験を積んでいるか? 自分でもよく分からない仕事を発注しているのか?
- その業界での標準的な契約タイプ
定額契約(p.151)
定額契約とは、締結時点で「価格」が決まっている契約のこと。納入者は見積もりしかしていないし、発注者は欲しいものの条件しか言っていない。だから納入者のコストリスクは最大となる契約。PMBOKでは「発注者は要求した調達品が受け取れないリスクを負う」と書いてあるが、納入者は「追加コストは全部自分で引き受ける」ため、そのリスクはシャレにならない。
(その1)でも書いたとおり、理想とは異なりリアルでは、ロクに内容も固めていないのに「契約」なるものを取ってくる。っつーか取ってくるのが良い営業とされている。当然スコープの行き違いが発生し「それはやってくれると営業が言った」という話になり、追加要求は追加コストとなり、追加コストは納入者が(次につなげるため)全面的に負うことになる。
定額契約ができるのは、調達品や要求事項が極めて明確に定義されているときに限る。また、定額契約は、価格は既に決まっているので、フィックスドプライス(fixed price:FP)とも言う。
【例】 契約価格 = 7千万円
FPIF:Fixed Price Incentive Fee とは、定額契約のインセンティブのこと。インセンティブは「ごほうび」だと思えば良し。後述の実費償還契約のCPIFも要チェック。
【例】 契約価格 = 7千万円
2週以上前倒しで完遂できた場合はプラス1千万円
FPEPA:Fixed Price Economic Price Adjustment とは、プロジェクトが数年越しにわたる場合のコスト変動要素を価格の中に反映させておく仕組み。要は、物価が上がったら原材料も上がるわけで、価格も連動してあがるという話。
【例】 契約価格 = 7千万円
プロジェクト期間中の原材料コストは、物価変動率を
掛け合わせた価格で清算する
実費償還契約(p.151)
実費償還契約とは、実コストに納入者の利益分を加えた金額が「価格」となる契約のこと。要は、「かかった分だけいただきます、プラスアルファももらいます」という契約。発注者が最大のコストリスクを負う。なぜなら、全部でいくらになるかは、やってみないと分からないから。CR:Cost reimbursable とも言う。
こんな、発注者にとって不利な契約がなぜあるのかと思いきや、大部分の契約はコレにするべき。なぜなら、
- 発注者は、ほしい物は分かっているが、何をどうすればよいかが分からない
- 発注者の経験や知識が足りないため、何が欲しいのかもよく分かっていない
- そもそもスコープが適当・曖昧
こうした場合に採択される契約タイプだから。大部分の契約はコレにあてはまる。そもそも顧客は何が欲しいかが分かっていない場合が多く、その結果、納入者がスコープを定義したりRFPを書いてあげたりすることになる。
CPFF:Cost Plus Fixed Fee とは、実コストに固定金額を上乗せしたのが「価格」となる。かかったコストは支払うため、適当なスコープのため後から付け加えた「変更要求」を抑えるのに役立つ。さらに固定金額がついてくるため、納入者に足が出ることもない。
【例】 契約価格 = 実コスト + 1千万円
CPPC:Cost Plus Percentage of Costs とは、実コストに一定の割合額を上乗せしたのが「価格」となる。USでは違法だし、契約形態としては最悪。某企業と官公庁あたりでやってそうな「契約」だが、もし見つけたら私にご一報ください。謹んでそちらへ転籍させていただきます(w
なぜUSで違法なのか、どうして最悪なのかは、少し考えてみるとすぐわかる。
【例】 契約価格 = 実コスト + 実コストの5%
だよ。お金をかければかけた分、もうかるという仕組みの契約は、「コストをさげよう」などという考えはこれっぽっちも浮かばないでしょうな。
CPIFCost Plus Incentive Fee とは、「ごほうび」つきの実費償還契約のこと。
【例】 契約価格 = 実コスト + 100万円 ただし、
前倒しで完遂できた場合は1週間につき1千万円
こんな契約なら、納入者は「どれぐらい前倒しできるか?」を考えながら計画を立てるだろう。ヤル気が違ってくるものよ。よく似たやつでCPAF:Cost Plus Award Fee というのがある。Award(表彰)付きの契約というやつね。
T&M契約(p.151)
タイム・アンドマテリアル契約とは、いわゆる単価契約だと考えればよい。単価は明確に決めてあるが、トータルでどれぐらいの量になるかは不明であることに注意。
【例】 契約価格 = 以下を参照(DCA案件情報)より
【プロジェクトマネージャー】
ユーザー:一部上場大手インターネット総合会社
元請:優良ソフトハウス
案件名:プロジェクトマネジメント要員
(1)住所管理システム導入プロジェクト
(2)FTTHプロジェクト
(3)大手テレコム会社プロジェクト
勤務地:**
期間:即日~長期
環境:Windows,UNIX
スキル:プロジェクトマネジメント経験者
※25人月もしくはそれ以上のPM経験
※PM業務に自信のある方
人数:プロジェクトマネージャー4名
備考
ユーザー様の方で大々的に新規プロジェクトが立ち上がって
おります。事業計画と照らし合わせてシステム投資から、実
際のシステム構築への落とし込みとスケジュール管理など、
いわゆるPM全般になります
※PM投入後、SE、PGの投入を図ります。
※30代限定
条件:160-200(上下割)
面談:1回+顔合わせ(弊社を除く)
単価:60万~65万
↑ここの「60万~65万」のトコロやね。月額です。月給60万円(ただしスポット)はオイシイが、そうそうこんな案件もなし。バイトのPMってないかなぁ(あるわけねぇかorz)
上記の単価は「時間」で割り出しているが、他にも「コメント無し1,000ラインあたり4,000円」といったライン単価もある。これらは「欲しいもの、やるべきことは分かっているが、全体の作業量が把握できていない」場合に使える契約。
たくさん用語がでてきたが、以下のまとめを読めばOK。なら最初からまとめだけ書けって? そうかもしれないけれど、この記事は私の勉強のためだから。書いてるうちに覚えてしまう、ってあるでしょ?
定額契約のメリット・デメリット
メリット・デメリットはコインの裏表だが、まずはメリットから
- 発注者は丸投げできる
- 納入者はコストにものすごく気を使う
- トータルでいくらかかるのか、契約段階で分かっている
デメリットは、
- 受注者はコスト削減のあまり、手抜きをするかもしれない(その原子炉の配管を検査対象にしないとか)
- 発注者はスコープを明確化する必要がある。やらないと全てのトラブルの元となる(ある配管を検査対象から漏らしてしまうとか)
- 受注者は、スコープが達成できなかった場合のコストリスクを丸々抱えることになる。従って「定額」の中にコストリスクも含まれている分、割高となっている
実費償還契約のメリット・デメリット
メリット
- スコープをよりシンプルにできる。発注者は目標だけを明確化すればよい
- 「一般的に」定額契約よりもコストを抑えることができる。受注者はコストリスクを価格に含める必要がないため
デメリット
- 納品明細を徹底的に監査する必要がある。水増ししていないか?上乗せしていないか?
- 受注者のコスト意識は望めない。かかった分だけ払ってくれるから
- トータル金額は、やってみないと分からない
T&M契約のメリット・デメリット
メリット
- すぐに着手できる。契約手続きは最短
デメリット
- 時は金ナリ。長引けばびくほど、コストは積みあがる
- 受注者のコスト意識は最低
- 小さめのプロジェクトにしか適用できない。でかいプロジェクトにはコストリスクが大きすぎるから
- 受注者は日々の進捗管理を必要とする
こんな状況のとき、どの契約形態がよいか? (答えはマウスドラッグで反転)
- すぐにでも仕事を始めて欲しい→T&M契約
- 要求を実現するために何をすればよいかというの専門知識も買いたい→実費償還契約
- 何が欲しいのかも、どうすればよいのかも明確にしてある→定額契約
- メンバーとしてjavaプログラマが2名欲しい→T&M契約
- 明細を監査する時間がない→定額契約
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