« プリキュアでつぶやく | トップページ | スゴいマンガを紹介しよう »

中国農民はなぜ貧しいのか

 スゴい本です。都市部・農村部の格差に焦点をあて、その原因、影響、予測を徹底的にデータに語らせてます。なのに、中国のさまざまな側面→犯罪、教育、医療、社会保障、年金、AIDS(SARSも)問題があぶりだされています。

 増すゴミにより、きらびやかな都市部の側面がチヤホヤされているけれど、13億のうち8億人は農村人口。農民を見なければ中国を見ていることにならない。

島耕作で中国を理解したつもりになるな、ありゃ団塊のファンタジーだぞ(by 名無しさん)

キーワードと私のコメント

  • 東西問題:沿岸部・東部と、内陸部・西部の経済格差問題。昔は「東西問題」といったら、東西ドイツに代表される「共産主義vs資本主義」の問題だったのに…
  • 貧困者の数:農村部+都市部合わせて6000万人。きちんと統計とれているわけではないことに注意
  • 三大差別:三大差異、「農業と工業」「都市と農村」「頭脳労働と肉体労働」
  • 二等公民:公民=国民。都市民の、地方民(農民)への蔑視
  • 三農問題:農業、農村、農民問題。「農村が安定しなければ国は安定しないし、農民が小康(ゆとりある生活レベル)に達しなければ全国人民が小康に到達することもない。農業の近代化がなければ国民経済の近代化もない」(1998.12中国共産党第15期大会第3回総会)
  • 百万元戸:もはや「万元戸」ではない。都市部の億万長者のことを指す
  • 借読:出稼ぎ家庭の子どもの教育手段。戸籍制度で都市住民と農民を厳格に区別しているため、農村から出稼ぎにきた両親を持つ子どもは都市部の公立学校に入学できない。この場合通常の学費に加えて「借読費」と呼ばれる費用を別に払うことで、入学を許可されるという制度。出稼ぎ家族にとってこの費用はさらなる負担増となっている
  • 「城鎮戸籍(非農業戸籍)」と「農業戸籍」:都市住民と農民を明確に区別する戸籍。就労、教育、社会保障といった制度に影響を及ぼす
  • 空巣家庭:子どもが別の土地へ働きに行ってしまい、親が留守を守るような家庭
  • 三無人員:収入源のない、労働能力のない、扶養義務者のいない高齢者などを指す
  • 五保戸扶養:三無人員に対し、保喫(食料)、保穿(衣料)、保焼(薪炭)、保教(教育)、保葬(葬儀)を地域で保障する制度。制度としてあるが、地域社会でのサポートはかなり困難な状況となっているらしい
  • 赤脚先生:医療・衛生活動に従事する半農・半医の衛生要員で、農村部の個人医の大半を占めているという
  • 四二一家庭:ひとりっ子、父母、(それぞれの)祖父祖父母という構成。今の20才以下は全て、「ひとりっ子政策」の結果ともいえる。この意図された重厚な逆ピラミッド、日本よりすこし遅れて高齢化社会を迎えるとはいえ、インパクトは日本のそれよりもでっかいと思う
  • 流動人口による犯罪の季節性:旧正月の前後(1-2月)と、農繁期(9-10月)は、出稼ぎの若者が地方へ帰るため、犯罪件数が有る程度減少する
  • HIV/AIDS:中国衛生部が発表した2002年の統計によると、9824人(本では"エイズ感染者数"とあるが、多分"HIV感染者数"だと思う)、1045人(本では"発症者数"とあるが、多分"AIDS発症者数"だろう)、死者が363人… これは把握されている数字であることに注意
  • その感染経路:HIV感染経路として、薬物注射が大部分の68%… 着目するべきは、血液採取時(9.7%)および血液・血液製剤(1.5%)による感染経路だろう。この数字から、「売血」がかなりの規模で行われていること、血液採取の針の管理がきちんとされていないこと、採取した血液のチェックが行われていないことが分かる

グラフで気づいたこと  p.31に「農村住民と都市住民の所得格差」グラフがある。1978-1999のそれぞれの年間収入を示したグラフだ。1978年にはほぼゼロだった格差が、年々開いていって、1999年にはおよそ3倍にまで広がっているのがよく分かる。

 p.207の「人口1千人あたりの医者・病床数」グラフはスゴい。県(農村部)と市(都市部)の格差がハッキリと分かる。1980-1997のグラフだが、農村部はほぼ横ばいに対し、都市部の医者数もベッド数も減少しているのがスゴい。これは都市部に流入する人々に医療基盤が追いついていないと読み取れる



 政府は、都市住民と農民の二元構造を前提に社会秩序の保持につとめ、戸籍制度を中心とする規制によって、農民の都市流入を厳しく規制してきた。
 その結果、都市/農村間での所得、生活水準、医療、教育、市場の格差が進み、取り返しのつかないところまで行こうとしている。
 また、ヤミで都市部に入ろうとする若者や、子どもを戸籍登録しない黒孩子(ヘイハイヅー:ヤミっ子)が増えてくることになる。彼らは「政府のあずかり知らぬ」存在であるため、必要な生活保障、教育、医療を受けることができない。つまり、都市部の中でも二元化が進むことになる。つまり、まだ見えていないだけで、都市部ではドーナツ化現象が起きているのではないか。
 その一方で、格差が再生産されている。豊かな家庭は、子どもへの教育にお金をかけることができる。一方そうでない家庭の場合、子どもは「働き手」として欠かせない存在となっている。また、出稼ぎ家庭の「借読」といった二重負担があり、都市部と農村部の格差は世代を超えて再生産されることになるだろう。


著者、王文亮の明快な主張を引用する。

 中国の農民は社会的弱者とはいえ、人間としての自尊心をもっておりプライドも高いはずだ。その反面、数千年の歴史がすでに証明したように、農民は反抗心が最も強い階層でもある。中国政府はただひたすら強制的手段でその反社会、反政府的側面を芽生えの段階で摘み取る方針をとってきているが、それは根本的な改善策とは考えられない。
 中国社会の長期安定を望むなら、農村と農民に対する差別的政策を取り止め、農村の社会保障制度の構築を緊急課題として積極的に取り込むべきだ。これはかりに都市部の発展速度を多少犠牲にしてまでもやらなければならないことを意味する。

「中国農民はなぜ貧しいのか」あとがきより

 きょう一日、延々と読んできてフト閃いた二文字→ 黄巾

 それはないか…な? 天安門でガソリンかぶって焼身自殺をはかる人がいなくなったのではなく、ニュースになっていないだけなのかも?… とつぶやいてみる。

 この記事の前ネタとして、「中国農民調査」があります。こちらもどうぞ。んで、次はコレを読もうかな→「中国農民の反乱 昇竜のアキレス腱」(清水美和)

 最後に。この記事は「中国農民はなぜ貧しいのか」(王文亮)を読んだ私の見解であり、誤解、間違いがあるのであれば、それはこの記事を書いた私の責任であり、著者への責は無いことを申し添えておきます。
--

|

« プリキュアでつぶやく | トップページ | スゴいマンガを紹介しよう »

コメント

万元戸という農民がいるから、貧しい人が出てくるんだと思う。

投稿: 雅 | 2005.07.11 12:02

万元戸(Wanyuanhu)はもはや死語だと聞きます。十万元、百万元戸もあるそうです。一方で、富が都市部に集中するようになったため、「都市 vs 農村」の所得問題と、「万元戸 vs 寒村」の格差は、三農問題をより複雑化させているのかもしれません。

投稿: Dain | 2005.07.12 00:10

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18285/425590

この記事へのトラックバック一覧です: 中国農民はなぜ貧しいのか:

« プリキュアでつぶやく | トップページ | スゴいマンガを紹介しよう »